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「初恋」宇多田ヒカルが辿り着く答え

螺旋階段は続く

宇多田ヒカルの初恋を聴いて。

宇多田ヒカルの、ソングライターとしてのキャリアにおいて、初期の3枚のアルバム其々から、全て表題曲を選び、それと合わせて今年6月27日発売のアルバム「初恋」から、先行シングル「初恋」を含めた、4曲の関係性を、自分なりに考えてみた。

先ずは、1stアルバム、2ndアルバムから其々、First Love、DISTANCE。
それぞれの曲の歌い出しは…

最後のキスは タバコのflavorがした ニガくてせつない香り 「First Love」

気になるのに聞けない 泳ぎつかれて君まで無口になる 「DISTANCE」

First Love、DISTANCEは、宇多田ヒカルが少女から大人の女性としての成長を遂げる過程にあった曲だ。

1999年First Loveがリリースされた時、彼女は16歳。その彼女がタバコを吸う男性と付き合って、初めて恋愛関係になったことを歌った歌、だと思われる。
背伸び感が否めず、素直に書くと、彼女より8歳も年長の僕は、可愛いなぁとか、思っていたものである。

DISTANCEは、アルバムDistanceからのシングルカット曲。アルバム発売から4カ月後の7月リリース。素軽い曲で、短いフレーズから分かるのは、付かず離れず、好きな人との恋愛模様を歌ったのだろうという事。少し行き詰まった恋愛なのだろうが、爽やかさが溢れる。

そして、2002年アルバムDEEP RIVER 発売。表題曲Deep River収録。
DEEP RIVER というアルバムは、モノクロのアートワークが印象的な作品だった。

「Deep River」

点と点をつなぐように
線を描く指がなぞるのは
私の来た道それとも行き先

線と線を結ぶ二人
やがてみんな海に辿り着き
ひとつになるから怖くないけれど

〜中略〜

剣と剣がぶつかり合う音を
知る為に託された剣じゃないよ
そんな矛盾で誰を守れるの

何度も姿を変えて
私の前に舞い降りたあなたを
今日は探してる

どこでも受け入れられようと
しないでいいよ
自分らしさというツルギを皆授かった

そして、現在。

うるさいほどに 高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頰を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と 「初恋」

切実なメロディーに、的確にただ、写真を見る様に映像が思い浮かぶ詩でできた、素晴らしい曲。彼女の真剣で、後のない、一度きりの気持ちが(再びの初恋と思われるが)その雰囲気と、体感温度まで伝わる気がする。

ここで、彼女の人生を少し追ってみたい。

彼女がこの曲「初恋」を発表するに至るまでにアーティスト活動をほぼ休止している時期がある。

彼女は2013年8月母を亡くしている。そして、2014年2月再婚。翌年出産。
彼女は疲れていた様に見えた。

「花束を君に」2016年4月リリース。
アルバムFantômeが世に出たのが2016年9月である。

そして、「初恋」のリリース。この曲はとても感動的なのだ、僕にとっては。彼女が、人に恋する気持ちを取り戻し、心が生き返った事を示す歌だと思うから。
人生が、ある塔の外壁についた螺旋階段を登る様に続いて行くとして、First Loveの頃と同じ方向にもう一度彼女は辿り着いたのではないかと思うのだ。それは恋という区間で、一巻きか、幾く巻きか下には、First Loveの時期があるということなのだけど。

同じ人に恋をしたのかは分からないが、初恋の感動、衝動を取り戻したのではなかろうか?と思うわけだ。

宇多田ヒカルは、ずっと人の悲しみを背負わされていたと思う。彼女なら、全く事情の違う他人の悲しみさえ、癒せると。
極端に感情移入を許してくれる、彼女の歌に依存する人は、きっと多かったと思う。僕の中で「Deep River」はそういう位置付けだ。
彼女もまた、1998年デビュー組。ほかに
aiko、椎名林檎等がいる。
その中でも、神々しいほどに、現実を研ぎ澄まし、正に現実を観念に昇華させるシンガーソングライター宇多田ヒカル、それが、僕の印象である。
 

ここで、
Deep Riverという曲は、シンガーソングライター宇多田ヒカルの、終着点だった。と言っていいと思うのである。
この曲は、
彼女は人間が生きる上で背負う哀しみを、解き明かして、癒しの道を示してくれるのではないか?そう思わせてくれた。
そして、
初恋と、Deep Riverの差とは何なのか?
諦めである。はっきり言っていいと思う。

モノクロの世界が映し出す、Deep Riverには寂寥感しか、無かったのだ。

全てを包括する答えを出す必要があった彼女は、正しく、己の力のみで、ソングライティングし、Deep Riverを生み出した。どうにもならない事が、この世にはある。悲しい答えだった。

しかし、そこを潜り抜けて、今「初恋」という表題曲を持つ「初恋」というアルバムを、リリースする。

DEEP RIVER の時とは違う答えが彼女を待っている様な気がしてならない。

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