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音楽の素晴らしさを教えてくれたアイドル

PASSPO☆解散発表に寄せて

「ふぅ〜。今日も疲れたぁ〜」社会人として入社しておよそ1ヶ月が経った。帰りの電車に揺られながら、いつも通りスマホを見ると一件の通知があった。

『PASSPO☆に関しての大切なお知らせ』

「なんだろう?」すぐさまスマホを開いて本文を読むと最も目にしたくない一文がそこにはあった。

“PASSPO☆は2018年9月22日のワンマンライブをもって解散することとなりました。”

「…え?」全く意味が分からなかった。たった一文を理解するのにかなり時間がかかった。正確には、この文章の意味を理解してしまうことを全力で拒んでいる私がいた。

PASSPO☆は、「お客さまを忘れられない旅にお連れする7人組ガールズロックユニット」をコンセプトとし、CAをモチーフにして活動している。

音楽ファンやアイドルファンなら知っているかもしれない。決して国民的なグループとまで言えないかもしれないが、彼女たちは私にとって計り知れないくらい大きな存在だったのだと改めて気づかされた。

「なんで?どうして?これからじゃん!まだやれるでしょ?嫌だ!辛い。寂しい。悲しい…」色んな感情が一気に押し寄せて自分でもどうしたらいいのか分からない。その場で座り込んでしまいそうになりながら、おぼつかない足取りでなんとか帰路に着いた。

帰宅してもPASSPO☆のことで頭が一杯で、思考もままならない。PASSPO☆がやめるはずがない「おばあちゃんになってもPASSPO☆でいたい。」それが願いであり、いつもフライト(ライブ)で何度も何度も口にしていた言葉だ。

2009年に活動を開始し、来年で10周年を迎える。10年目にはでっかいイベントを行うんだろうな。そんな期待も消え去った。歳をとっておばあちゃんになってもフライトをするクルー(メンバー)の姿、武道館で超満員のなかフライトを披露する姿、難解な曲を弾きこなす姿、みんな笑顔で次のライブの予定を報告してくる姿…いつかまた、その日がやってくると信じて疑わなかった。

アイドルとして、アーティストとして活動を続ける限り一生活動が続いて行くというのはあり得ない。そんなこと、十分わかっているつもりだった。それでも彼女たちはPASSPO☆であり続けるんじゃないかと思っていた。本当に彼女たちは死ぬまでPASSPO☆であり続けて欲しいと願っている自分がいた。それは、彼女たちが2017年9月9日に行ったワンマンライブでグループのキャプテンである根岸愛のMCを鮮明に覚えているからでもある。

「何があっても笑い飛ばして一生私たちはPASSPO☆であり続けるので、私たちに会いにきてください。」

なのに、どうして?それが理解できない。

《まだ諦めのフレーズは/Get down/継続こそが最短のルール/No Music, No Dream》(”Music Navigation”)

「継続こそが最短のルールじゃなかったのかよ!何で辞めちゃうんだよ!でっかいフライトに連れてってくれるんじゃなかったのかよ!伝説になって、いつまでもアイドルで、歌って、踊って、バンドやって音楽って素晴らしいもんだって教え続けてくるんじゃなかったのかよ! 」
PASSPO☆って本当に素晴らしいグループなんだよ。

PASSPO☆は、センターがいないし、いわゆる人気上位の前列ではない、輩のような後列のメンバーが商業高校のような、PASSPO☆ならではの空気を作っているからセーラームーンではなく漫画の「ROOKIES」っぽい。
「“アイドル=ヒロイン”竹中夏海」

結成当初から現在まで振付師である竹中夏海が自身の著書で語っていることは、まさにPASSPO☆というグループを的確に表現している。

大学生の時にこれまでのアイドルとしてだけでなく彼女たち自身が楽器を持って演奏を行う「BAND PASSPO☆」の存在を知った。

PASSPO☆を知る前の私はアイドルに苦手意識があった。外見で売れる世界だと思っていたし、グループとしての限られた時間を過ごすと女優やタレントへの道を進むものだと思っていた。アイドルが楽器を演奏するなんて舐めんじゃねぇとまで思った。

しかし、いつまでもPASSPO☆であり続けようとする思い、等身大のままで、楽曲を全力で演奏するパフォーマンスを観たことで、アイドルに対する考え方を変えてくれた。

初めてのBAND PASSPO☆お披露目フライトはクルーがとても緊張していて演奏もおぼつかない様子だったのをはっきり覚えている。余裕なんて全くなくて拙いながらも懸命に演奏している姿が脳裏に焼きついた。

今までダンスしかして来なかった彼女たちが楽器を持って自分たちで新たに何かを伝えようとしている、その姿に胸が打たれた。バンドもアイドルも関係ない、アーティストとして何かを表現する事がどんなにかけがえのない素晴らしいことなのかを彼女たちが教えてくれた。

そんな彼女たちの演奏に対して、ベース担当増井みおの師であるUNITEDの横山明裕のツイートに全てが集約されているように思える。

お世辞にも上手な演奏とは言えない出来だったけど、だから何だって言うんだ?君たちは今、自分自身が全ての音を発信して人に伝えるという素晴らしい第一歩を踏み出したんだから自信を持ってこれからも突き進んでください。そして俺はその場に居合わせたことを誇りに思います。ありがとう!!
(2014年3月24日)

私も学生時代にバンドを経験していて楽器を奏でることの難しさを痛いほど理解できた。ライブが近づくにつれ訪れる焦燥感、全く満足のいく演奏が出来ない苛立ち。ステージに立つと手が震えた。披露する予定の曲を覚えていなくて本気で怒られた。自分たちがやりたいことで本気で揉めた。演奏を披露して盛り上がってくれて本気で嬉しかった。何度も練習した曲がうまく弾けなくて本気で悔しくて涙が出た。

バンドをやることがどれだけの本気がいることか、本気で泣いて、笑って、ぶつかって、学生時代の私にとってバンドは青春そのものだった。どんなに苦労することか知っているからこそ彼女たちの演奏が心に刺さった。

BAND PASSPO☆が本格的に始動したのは2014年。それまでダンスのみで活動してきた彼女たちが新たに始めたバンドというスタイル。学生時代の私のように、できないフレーズが弾けるようになった時の喜びや本番で失敗した時の悔しさを経験しているのだと思うと愛おしくて、これからの成長を観ることができるのが待ち遠しくなった。

2017年に行われた全国ツアー「PASSPO☆の歌って踊って奏でるツアー」のファイナルではバンド形式と通常のパフォーマンス形式のライブを披露して、PASSPO☆がこれから歌って踊って奏でる唯一無二のアイドルになっていくのを予感させた。現状に満足せずに、常に新たな挑戦を行う姿が自分のことのように誇らしかった。

私も新社会人として初めてのことばかり。分からないことだらけで不安で押しつぶさそうになる。そんな時PASSPO☆の曲を聴けば何でも明るく考える事ができた。

しかし、これからはPASSPO☆がいない世界で生きていかなければならない。私の生活の一部だったPASSPO☆の活動が終わる。

PASSPO☆が解散しても私の社会人生活は続いていく。PASSPO☆がいなくなる生活なんて考えてもみなかった。それは言うなれば、親友と二度と会えない別れをしたような感覚だ。

 バンド結成当初から念願だったBAND PASSPO☆として初の対バンツアーが始まる矢先に「どうして、解散なんだよ。」「どうしてこのツアーで最後なんだよ。」

何度も何度も考えを巡らせたが結論は出ない。そんなモヤモヤを抱えたまま答えを求めて6月11日、PASSPO☆の対バンツアーに参加した。

彼女たちの演奏は格段にパワーアップしているのがはっきりとわかった。初めて観た時のような緊張やためらいは微塵もない。歌唱には力が漲っていてステージ上を動き回り、曲間での煽りに圧倒された。MCではマイペースで飾らない、ありのままのPASSPO☆を観る事ができて嬉しかった。トラブルにも柔軟に対応していて、演奏を純粋に楽しんでいるその姿に本当に音楽って素晴らしいと感じさせてくれた。

この日のフライト最後の曲はクルー自ら作詞した楽曲”Party like a Rockstar! “。バンドとしての悔しさや願望を表現した一曲だ。

《絵に描いたような未来じゃ/あたしらはピンとこないの/常識をくつがえす/コード展開探しにゆくわ》

 フライトを通して堂々巡りをしていた考えに結論が出た。
彼女たちが解散することは逃げではない。それぞれの道を尊重し合ったからこそ選んだ道なのだ。

解散を知った時は「ちょっと待ってくれ。」そう思わずにはいられなかったが、彼女たちを止めることはない。心配することは何もない。今回の対バンを観て、彼女たちの今後が楽しみになった。夢をたくさん与えてくれたPASSPO☆は私に新たな夢を与えてくれた。いつまでも前を向けないで、うじうじしていることはPASSPO☆が望んだ選択ではない。

《さよならが悲しくて/泣いた夜に/鏡の前/負けないと誓った/凹んでても/腐ってても/陽は登る/君にも、私にも/等しく/陽は登る/間違えても構わない/間違いでも気にしない/溢れ出す気持ちに/名前はいらない/ただ走りたいんだ/ただ走っていたいんだ/溢れ出す未来に名前なんていらない》
(”無題”)

PASSPO☆でいる事が好きで仕方ない彼女たちのこれまでの活動は乱気流のように目まぐるしく不規則で、楽しいことばかりではなく苦難の連続だったはずだ。3人のメンバーの卒業を経験し、7人で活動を続けていくことにしたクルー。

集客が思ったように伸びないこともあった。オーディエンスの反応が良くなかったこともあった。音響設備の不調・機材トラブルもあった。それでも笑顔を絶やさずに心から楽しんでいる彼女たちを観るのが何よりの支えだった。

《オーマイガッ!な毎日/ネガティブなThinkin’/ぶっ飛ばして/かっ飛ばしたい/人生一度きり/楽しんでいこうよ/みんなが集まれば/ほらパーリーナイト/ハッピーなオーラ作り出せば/明日は笑っていけるから》
(”気分はサイコー!サイコー!サイコー! “)

辛いことが続いたとしてもマイナスなことばかり考えていても何も始まらない。彼女たちが新たな希望を与えてくれた。これからもっと大きな夢を私に与えてくれるに違いない。そう信じる事ができるからこそ、今回のフライトは感謝の気持ちでいっぱいだった。

《STAY GOLD/ヒロインじゃなくても/きっと輝ける/「私」を見つけて/My own road/最終電車にゆられて/流れる窓みてた/走り続ける意味/何度も問いかえすの》
(”「I」”)

一番になれなくてもきっと輝く事ができる。それでもいいんだ。私も輝くものを見つけたい。何度も何度も自分の道を見つける事を歌い続けてきたPASSPO☆がなくなっても社会の荒波と戦っていく勇気をくれた。

私自身まだまだ未熟で一人前とは程遠い。周りはできているのに自分だけができない、そんな自分の不甲斐なさに涙が出たこともある。

解散してしまってもPASSPO☆と私が過ごした思い出は死なない。PASSPO☆が歌い続けてきた曲は死なない、一生残り続ける。

これからもPASSPO☆を思い出すだろう。
BAND PASSPO☆が新しいことを始めるのに遅いなんてことはないと教えてくれた。
歌って、踊って、奏でるアイドル。音楽には楽しみ方がいくらでも存在することを教えてくれた。どんな状況でも笑い飛ばして全力で楽しむ事を教えてくれた。

PASSPO☆は、アイドルであり、バンドであり、アーティストであった。アイドルはいつまでもアイドルであり続けられると証明しようと挑み続けた。そんな唯一無二の存在であるPASSPO☆の伝説がもっともっともっと多くの人に知られないことが悔しくて悔しくて仕方がない。アイドル戦国時代の中で消えていった1組のアイドルとして忘れ去られていって欲しくない。

私を含め大勢のパッセンジャー(ファン)の支えになってくれた。私の人生を変えてくれた、生き方だって教えてくれた。これからも楽しいことを教えてくれるに違いないという確信が持てたフライトだった。

《いつだってほら/スタートライン立てるよ/「私」という未来への挑戦》
(”「I」”)

この先の未来は分からないが、何も心配することはない。クルーがそれぞれ別の道を歩むことになったとしても今よりもっと輝いているはずだ。9月22日のワンマンライブを終えた先には、これからもっと楽しいことが待っているに違いない。PASSPO☆が残してくれたかけがえのないものを心に刻み、胸を張って生きていこう。

本当にありがとう。

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