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最愛のロックスター

吉井和哉 15th Anniversary Tour 2018 福岡公演

日本にロックンロールを歌う人がたくさんいて、その人達がどんなに格好良いかを知っていても、「ロックスター」が一番似合うのは吉井和哉だ。私はそう思っている。

じゃあロックスターとは何か?と聞かれたら、どう答えよう。背が高くて、顔が素敵で、派手な柄シャツもシンプルなシャツも似合って、モテてモテてしょうがなくて。歌が上手くて、声が良くて、メロディーに心地よく乗る良い詩が書けて…と、挙げ始めたら切りがない。そして、彼がその条件を全て満たしていることは言う間でもない。けれど、私が彼こそがロックスターだというのには、他にも理由がある。私には、彼がとても正直な人に見えるからだ。正直、というのは嘘をつかないという意味でもあるだろうし、嘘をつけないという意味でもあると思う。私は彼のそんなところに惹かれていて、彼のロックンロールが大好きでいるのだ。

私はYOSHII LOVINSON、吉井和哉名義の作品よりも先に、THE YELLOW MONKEY(以下 イエローモンキー)の曲に出会った。イエローモンキーの大ファンになった後、吉井和哉という人の作る音楽に興味を持ち、ソロの楽曲を聴き始めたのだ。
まず初めは、YOSHII LOVINSON名義のファーストアルバム『at the BLACK HOLE』と、2013年発表のベストアルバム『18』に手を伸ばした。その『18』に「HEARTS」という楽曲が収録されている。どちらかといえばイエローモンキーに思い入れが強かったそれまでの私は、この曲によって粉々に打ち砕かれることになった。もし好きな吉井和哉の曲を挙げろと言われれば、悩みに悩んだ挙句にこの曲を挙げるかもしれない。それくらい、この曲を初めて聴いた時のことは今も覚えている。

〝最後の白い鳥は何を餌に生き延びてる
新月の蒼い海を確かめるように高く低く〟

小説のようなこの文章は、「HEARTS」の歌い出し部分である。葵い海に白が重なって、その海はもちろん煌めいていて、ステンドグラスみたいなものを想像させられた。純粋に、とても綺麗だと思った。けれど、イエローモンキーや他のソロの楽曲を通しても、彼が並べる言葉やその音の美しさには何度もハッとさせられていたから、初めは大して気に留めてはいなかった。

〝行く人 来る人 誰かを待つ人
もうすぐ始発のバスが来る〟

旅立ちを感じさせるサビのメロディーは、どこかもの悲しかった。けれど、衝撃だったのはこの後だ。

〝心が心を許せる時にはどうして姿形はないんだろう〟

突然突きつけられた重たい言葉に、私は驚いた。
許す、ということは、その前に何かしらの憎しみがあったということだ。歌い出しでステンドグラスみたいに綺麗だと思ったあの感情が、一気に割られてしまったみたいだった。こんな歌だったの?それでも〝次の場所へ〟の言葉通りに曲は続いてゆき、まるで置いてけぼりのような気持ちを喰らいながら、続きを聴くことになってしまった。

そして曲の終わりにも衝撃はまたやって来た。それは、

〝さよならごめん〟

という七文字だった。〝次の場所へ〟と〝迷わず飛べ〟の間に挟まれた〝さよならごめん〟。それは痛みを伴って突き刺さってきた。嘘であるはずがない、声にならない言葉。実体験をリアルに綴った共感を呼ぶ歌詞の歌は世の中にたくさんある。それも一つの「正直」の形だろう。けれど、ここまで生々しい「心情」が乗せられたメロディーを、私はこれまでに聴いたことがなかった。イエローモンキーだとか、ソロだとか、そんな概念は一旦吹っ飛んだ。こんな歌がこの世にはあって、これは吉井和哉という人が生み出したものなんだ。こうして私は彼の楽曲にますます興味を持つようになっていった。

何でこんなにこの人は悩んでいるんだろう?
彼の曲を聴き始めた頃は、そう思うことが何度もあった。明るい曲にさえ、なぜか重たいものを感じたりした。こんなに格好良くて、他の人が持っていないものをたくさん持っているのに。この人がこんなに悩んでいたら、私みたいな凡人はいくら悩んでも足りないではないか?けれど、私なりに彼の曲を聴きこんだ今、それは違うと思うようになった。
誰もが何かに悩んでいる。当然彼も悩むのだろう。悩みの中には答えが見つかるものあるし、そうではないものもある。歳を取っていくと、時間が解決してくれるということを学んだりして、少し楽になったりすることもする。まぁいいや!というのが一番良い解決方法だということも時にはある。しかし彼はその「まぁいいや!」があまり上手くないのではないだろうか。上手くない、なんていうと悪いように聞こえてしまいそうだけれど、でもそれはつまり「向き合っている」ということだ。逃げていないということなのだ。悩んで悩んで悩んで、それが歌になる。向き合って出した答えが歌になるのではなく、向き合っている過程が嘘偽りなく歌として綴られている。

その葛藤と、答えを出そうともがき続ける姿勢をロックンロールと呼ばずして何と呼ぼうか。誰もいなくて一人ぼっちだとしても、どんなに希望が見つけられなかったとしても、辛うじて両足は地面を踏んでいる。「HEARTS」はまさにそんな歌だ。〝迷わず飛べ〟にたどり着くまで、割り切れない感情が途切れずに浮かんでは消えていく。
そんな歌を歌い続けてきた彼は、まぎれもなくロックスターだ。

私は彼の曲を聴く度に、この人はこの曲に描かれている感情の一つ一つを身を持って知っているのだろうか?と思わされてしまう。もしそれがその通りなのであれば、ソロデビュー15周年を記念して発売されたアルバムが『SOUNDTRACK』と名付けられているのは、あまりにも的確すぎると思う。

私は6月12日に福岡サンパレスで開催された「Kazuya Yoshii 15th Anniversary Tour 2018 -Let‘s Go Oh! Honey-」の初日に参加した。東京ドームで開催された「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017」、福岡ヤフオク!ドームで開催された「メカラ ウロコ・28 -九州SPECIAL-」に続き、私が彼を見るのは三度目であり、またソロの姿を見るのは初めてのことだった。

その日はイエローモンキー再集結以来のソロの公演ということもあり、客席からは「おかえり!」というような大きな拍手が響いていた。私は「初めまして」だったのだけれど、その中にいられることをとても嬉しく思った。イエローモンキーを解散した彼が作り上げたもう一つの居場所がこんなにも温かいものであるということを知って、何だか泣きそうなくらい胸がぎゅっとなってしまった。

今回のライブでは、アルバム『SOUNDTRACK〜Beginning & The End〜』から新曲「Island」が初披露されることが事前にアナウンスされていた。

〝何度も何度もやっては失った
足しても引いても割っても間違った
迷子になった 大人達が 踏めないものは?〟

迷子になった大人達が踏めないもの。それは一体何なのだろう。私にはまだ分からない。
でも、あなたの両足はいつだって地面を踏んでいるよ。
だから、イエローモンキーのフロントマンであろうと、一人の歌手であろうと、彼が歌うものはいつだってロックンロールなのだ。そして、正直なこのロックスターのことが私は大好きだ。彼にそう伝えられることなんてないのかもしれないけれど、初めて耳にする「Island」を聴きながら、確かにそう感じた。

日本にロックンロールを歌う人がたくさんいて、その人達がどんなに格好良いかを知っていても、私にとっての「ロックスター」は吉井和哉ただ一人だ。きっと私はそう思い続ける。
 
 

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