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Halo at 四畳半が手渡してくれたもの

四畳半のプラネタリウム

わたしはHalo at 四畳半の曲を聴くと、プラネタリウムに行きたくなる。ミヒャエル・エンデの小説を読み返したくなる。
別に、ハロの音楽と、プラネタリウムや小説の思い出が直結しているわけではない。ただ、楽曲の雰囲気が思い起こさせる。現実と幻想のバランス。痛みや悲しみと言った生々しいまでの現実を描きながらも、ハロの曲は幻想的な響きがある。
プラネタリウムで投影される〈日が沈む〉頃から〈日が昇る〉までの時間や言葉が、歌詞に織り込まれているからかもしれない。「空」や「夜」、「星」を抜きに彼らの曲を語れない。
Halo at 四畳半の名前の通り、限られた身の回りの空間に、無数の星を抱えた宇宙を映し出す。それがどれほど美しく、切なく、心に響くことか。
  

6月22日の金曜日、22時少し前、私は涙をこらえながら一人で渋谷駅に向かっていた。さっきまで聴いていた渡井さんの声よりもちょっと遠くなった声がイヤホンから届く。
コンクリートで囲われた街のネオンが滲む。対照的なまでに黒く塗られた空は静かだった。
 
ライブの冒頭で、渡井さんが「現実を忘れさせたいわけではない」と語っていた。
その日、わたしは確かに「現実を大きく上回るような感動を」受け取ってきた。渋谷という都会で、満天の星を見せてくれた。
 

6月22日 渋谷CLUB QUATTRO  Halo at 四畳半×cinema staff
ライブのために一週間乗り越えてきたと言っても過言ではない。新作のラババンとタオルを着用して準備万端。Tシャツは金欠のため断念。
19時を少し回った頃、Halo at 四畳半が憧れのバンドcinema staffからライブがスタートした。
伸びのあるボーカル飯田さんの声。心臓をノックするドラムの音。眩いまでの花をさかせる照明。感情よりも先に、肌が音楽に反応する。
家だと音楽は聴くものだけど、ライブハウスに来ると音楽は感じるものになる。その瞬間が、どうしようもなく大好きだ。
憧れている人たちと、対バンできることがどれほど嬉しいことなのか、バンドを組んだことのないわたしでも想像に難くない。思うだけでも胸がきゅっとする。
MCから2バンドの関係性がにじみ出ていて、思わず頬が緩んだ。
  

20時が過ぎ、主催者であるHalo at 四畳半のライブがスタート。
 
「現実を忘れさせたいわけではない」
「現実を大きく上回るような感動を手渡しに来ました」
 
と渡井さんは語った。
一曲目『リバース・デイ』。わたしが2年半ほど前、ハロを知るきっかけになった曲だ。ボーカル渡井さんの透明度の高い青色を連想させる、芯の通った声に心を奪われた。
 
 
〈願いは遠く叶いやしないとしても/果ての無い空に明日を描いている〉『リバース・デイ』
 
〈一等星の後を追って 僕ら走り出していた/瞬間 走馬灯のように抱いた思いを見つけた/どうやら 大切なことから忘れていく/ステラ・ノヴァ〉『ステラ・ノヴァ』
 
〈信じるべきものの基準をください/窓から見えている月が笑っていた/信じるべきものを教えてください/理想を選んでも答えだとは限らないという〉『ペイパームーン』
 
〈テレスコープを覗き込んでいる 少女の街に/ミサイルが空を飛んで行く それさえ人の希望〉『箒星について』
  
 
現実と幻想の絶妙なバランス。聴き手の想像をかき立てる余白。それぞれが見る「空」。ハロの歌詞を目で追うと、短編小説でも読んでいるかのような錯覚に陥る。
 
 
ライブが進むにつれて、音と興奮が濃密に絡み合い熱気を増していく。彼らが手渡してくれる音楽と思いを受け取ろうと、無数の手が伸び、空気が揺れる。Tシャツを買わなかったことを心底後悔した。

優しく力強い白井さんのベース、鮮やかに切り込んでくる齋木さんのギター、リズムの根幹を成すしなやかな片山さんのドラム、言葉を伝えてくれる渡井さんの声。彼らが4人で紡ぎ出した音楽に身を預ける。

新曲やカバー曲の披露というサプライズ。笑いを誘う白井さんのMC。弾けるメンバーの笑顔。
わたしはライブハウスで、彼らの音楽に煌々と照らされた。
  
 
そして、とうとうアンコールの際に歓喜の瞬間が訪れた――。
ギターをつま弾きながら、渡井さんが語る。
 
「今年の秋にHalo at 四畳半メジャーデビューします」
 
割れんばかりの歓声と拍手がフロアを満たす。
わたしは驚きと喜びで、上手く表情を作れなかった。心を大きく揺さぶられたあとに広がる甘美なまでの温かさ。この感情をなんというのか。ただただ無心で拍手するしかできなかった。
今まで、好きだったバンドがメジャーデビューをしたことは幾度となくあった。だけど、ライブで発表されたことは一度もなかった。喜びの瞬間を、同じ空間で、誰かと共有したことはなかった。その場にいたことを幸せに思う。
わたしは扱いなれない感情を手渡され、戸惑いながらも彼らのライブを見届けた。
22時少し前、ライブハウスを出て、ようやく実感が湧いた。すると同時に、手渡されたものを確かめると、心から溢れそうになった。コンクリートで囲われた街のネオンが滲む。
 
日常に埋もれてしまった感情や感覚、見ずにいた現実をすくい取って差し出してくるHalo at 四畳半。都会の光に埋もれて見えなくなってしまった6等星や7等星を見た感覚に、やっぱりちょっと似ている。それがどれほど美しく、切なく、心に響くことか。

 彼らの「大きな大きな決断」がわたしたちに眩いばかりの星空を見せてくれると、今から楽しみにしている。

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