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チャットモンチーと父と私

つづくチャット

チャットモンチーはずっと父の音楽だった。

父は音楽が本当に好きだった。父の好きな音楽は家の中でいつも流れていた。3人の小さな子供と妻を置いて父は週末ライブに行っていた。家族より音楽が好きだったのかもしれない。
でも私が大きくなっていくにつれて、父はなぜかライブに行かなくなり、代わりに私は家にいる時間が減った。家にいる時間が減ったから、父の音楽に触れる機会も減った。でも父の音楽は、案外私の中に残っていた。

中学2年生の初夏に、私はチャットモンチーを好きになった。くみこんが脱退しているのは知ってはいたし、曲も聞いてはいたが、父が見ていた過去のフェスの映像で、夏の炎天下の下で大勢の人の前で楽器を演奏している姿に「かっこいい」と、心から憧れた。

チャットモンチーはあっという間に父と私を繋いだ。携帯電話を持ち歩かない父の為に、最新情報を伝えたり、たまに会社のメールに連絡した。一緒にライブに行った。CDはほとんど父から貰った。昔の雑誌とか、DVDとか、音楽番組とか、チャットモンチーが出ている物を沢山見せてもらった。その一つ一つは、父が大切にとっておいた物だった。

完結が発表された時、父は「死ぬわけじゃないからきっと別の形で音楽は続けるよ」と言った。

誕生は、父が2000円出して、残りを私が出して、私が買いに行った。CD持ってレジに行くのに少しためらった。家に帰るのも少しためらったし、プレイヤーに入れて再生するのにも少しためらった。このひとつひとつのワクワクする感情が、これで最後なのかと思うと、ずっと知らないままワクワクしていたい。開けたら酸化してしまう気がした。キュキュキュと音を立てながら、CDは読み込まれた。あっという間にキュキュキュと音を立てながらCDは止まって、動かなくなった。CDを取り出す時、ちょっと泣いた。

チャットモンチーは僕にとって〇〇です。みたいな言葉をよく聞く様になった。私にとってチャットモンチーはなんだろう。青春にしては、知るのが早すぎたし、人生にしては、完結が早すぎる。なんなんだろう。少しの間考えて、答えはある意味簡単に出た。

チャットモンチーは、父と私のチャットだ。バンドの『チャット』は完結しても、父と私の『チャット』は完結しない。このチャットにあるものは、チャットモンチーだけじゃないから。
ありがとう、チャットモンチー。ありがとう、パパ。パパの分まで武道館、楽しんでくるね。

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