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2017年4月24日

キクチ タイスケ (19歳)

早まるな、大森靖子が居るから僕らは大丈夫だ。

大森靖子「kitixxxgaia」を聴いて

大森靖子が3月15日に発売したアルバム「kitixxxgaia」は今、この時代に
生まれるべきして産み落とされた「名盤」と言い切れる。

全13曲に通してあるのは「多様性の肯定」だ。

近年、表現作品にこのテーマを持ってくるものは多い。この窮屈な時代、それだけ人々から求められているのだろう。最もたる例は固まり切った価値観を「呪い」と
表現した大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。またバラエティーに目を
向ければ金髪でバイセクシャルであり、そういった「名言」も多くコメントしているお笑いコンビ「メイプル超合金」の「カズレーザー」のブレイクもそうだ。

そして、音楽の世界でそこを現代の感覚で丁寧に拾い救える女性アーティストは
大森靖子しか居ないと思っていたし、実際にこのアルバムで見事に達成されている。

アルバム一曲目「ドグマ・マグマfeat.fox capture plan」の歌いだしは
こう始まる。

<むかしむかしあるところに男と女とそれ以外がいました むかしむかしあるところに白黒黄色それ以外がいました むかしむかしあるところにYESとNOとそれ以外があるのに いつもいつもことあるごと それ以外はなかったことにされました>

どこを向いても「YES」か「NO」かの二択で振り分けられる現在(いま)、
「みんなで一つに」という言葉があり溢れる現在にサビでは

<心をーつなんて ふぁっくYOU>と言い放つ。
そして、<ふぁっくALLにするから”戦争”なんでしょ>、と。

M3「IDOL SONG」は歌詞に実際に存在するアイドルの自己紹介フレーズを並べる、
という斬新なアイデアにヒャダインこと前山田健一のもはや自分自身による
「ヒャダインオマージュ」なのでは、というほど必殺技連発の編曲が光る楽しい
楽曲だがここにも大森靖子らしい「肯定」が潜んでいる。

<はーい 好きでいいよ はーい もっと簡単に>

自己紹介が並んだ歌詞に急に飛び込んでくるとドキッとする内容。もちろん、
これはアイドルファンに向けられた言葉だろうが、ほかのものごとにも当てはめる
ことが出来る。好きなものは好きでいい。そんな当たり前のことが難しい。
でも、なにを気にしてそんなに悩んでいるのか。もっと簡単に、もっと素直に
「好きなものは好き」でいいのだ。

このアルバムにはほかにも
<結婚別にしたくないし 満たされてるのに心配しないで>
(ドグマ・マグマfeat.fox capture plan)

<意味なんて望むなよ 無いことのほうが多いんだから 誰の望むような子にもなれないなら 悪い子ですか?>
(地球最後のふたりfeat.DAOKO)

<みんなからは私が汚く 私からはみんなが美しく光ってみえる呪いを こんな石は捨ててしまおうか>(アナログシンコペーション)

と、挙げればキリがないほど多様性を示す歌詞が多い。
そして、このような歌詞、このようなアルバムが世界に一枚あるだけで救われ、
明日も生きてみようか、と思える人々がどれだけ居るか。

先に音楽の世界でここを拾い救える女性アーティストは大森靖子しかいない、と
書いたが男性でそこに居るのが「神聖かまってちゃん」でありボーカルの「の子」
だろう。そんな二人がフィーチャリングした楽曲もこのアルバムに入っている。
「非国民的ヒーロー」と題されたこの曲のサビで二人はこう歌っている。

<愛する気持ちだけでは 報われなかった全てを ああ 抱きしめる そのひとつのミスで全てを否定されても怯むな 僕は ああ 非国民的ヒーロー>
 

大森靖子こそ「非国民的ヒーロー」であり、僕たちにとって誰にも代えられない、
紛れもない「ヒーロー」なのだ。

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