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「ありがとう」と「さよなら」が交差する日

CHATMONCHY LAST ONEMAN LIVE~I Love CHATMONCHY~を観て

7月4日。私は朝から新幹線に乗って東京へ向かっていた。
チャットモンチーの最後のワンマンライブを日本武道館で観るためだ。
昨年11月に「完結」が発表されてから約7ヶ月。あっという間にその日は来てしまった。

私がチャットモンチーに出会ったのは、大学入学のために上京した2005年。
東京に出てきた田舎娘は、慣れない一人暮らしの中、大好きな音楽を支えに日々勉強にアルバイトにと奮闘していた。
そんなある日の深夜、上京してからよく観るようになった音楽番組で、女性3人組のバンドがデビューしたことを知る。

〈薄い紙で指を切って 赤い赤い血が滲む これっぽっちの刃で痛い痛い指の先〉
(ハナノユメ)

かわいらしい風貌とは真逆の歌詞と繰り出される音の衝撃も相まって、わたしはすぐにその3人が気になりだした。
そのバンドの名前は「チャットモンチー」という一風変わった名前だった。のちに四国出身だということを知り、自分と同じく地方から東京に出てきた女の子たちの姿にいつしか自分自身を重ねるようになった。

教育実習中に士気を上げるために聴いていた「女子たちに明日はない」「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」、失恋した時に聴いていた「染まるよ」「愛捨てた」、就職活動中に聴いていた「真夜中遊園地」「夕日哀愁風車」…チャットモンチーに出会って13年。時代が進み、音楽を聴く手段がMDからiPodになっても、変わらずに彼女たちの曲がそこにあった。新幹線の中でこれまでのアルバムを聴きながら、そんなことを思い出していた。

東京に着いてからも、今日が最後のワンマンライブだということに対しての現実感が湧かないままだった。わたがしのように、どこかふわふわとした空気が私をまとっていた。
お昼ごろにグッズを買うためにひと足早く九段下に降り立ち、武道館に並ぶ長蛇の列を見た時にやっと実感が湧いてきた。
「あぁ、今日という日が来てしまったんだな。」

グッズを買い終えた私が次に向かう先は、『チャットモンチー完結展』が開かれている渋谷。ここでも完結を惜しむようにたくさんの人たちが展示を見ていた。
私も貴重な資料に目が釘付けになり、ギャラリー内で終始流れていたミュージックビデオのモニター前からなかなか離れられずにいた。
また、メッセージが書けるノートが置いてあったので、チャットモンチーに対する自分の想いを書き込んできた。スペースの関係もあるし、他の人も書けるようになるべくまとまった文章にしようと思ったけれど、気持ちが溢れて長くなってしまうあたりが自分らしいなと、思わず笑ってしまった。

その後、再び武道館へ向かい到着すると、たくさんの人がライブの看板が掲げられた正面入り口前で写真を撮っていた。今日この日をみんな残したい気持ちは一緒だ。

18時30分、開演時刻を少し過ぎたあたりでライブが始まり、モニターには「私たちのこれまでと 皆さんのこれからが交わる 輝かしい1日になりますように」との文字が映し出された。

この日のライブは2部構成になっており、前半はラストアルバム『誕生』の曲が中心となる、チャットモンチー・メカ体制でのライブだった。
最後のワンマンライブのはずなのに、まだまだここからチャットモンチーの新しい何かが始まるようなワクワクする演奏だったので、観ていてとても不思議な気持ちだった。

ただ、その気持ちが一転したのは、ステージ転換中に流れた映像を観てからだった。デビューした2005年から2018年までの活動の記録映像が流れたのだ。えっちゃん、あっこちゃん、そしてクミコンの姿が映し出された瞬間、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「完結」がいよいよ迫っているということをやっとここで実感したのだった。

映像が終わり、2部最初の曲は「majority blues」。
私が社会人になってから特に励まされたこの曲がストリングス隊とともに奏でられたので、また涙が止まらなくなってしまった。私自身、感情が揺さぶられ、ひとつのライブでこれだけ泣くのは初めての経験だった。

そして、ドラムに恒岡章さんを迎えての3ピースバンド編成の演奏には、学生時代を思い出してやはり心が躍った。ファーストアルバム『耳鳴り』からの演奏曲も多く、私は普段のライブのように腕を振り上げて音に乗り、気付けば笑顔でライブを楽しんでいた。

「どの曲にも思い出があるなぁ。」と、演奏される曲を聴きながら自分自身のこれまでもを振り返っていた。曲を聴くと当時の風景が自然と思い出せる、音楽にはそんな力が宿っている。
2部最後の曲は「ハナノユメ」。私がチャットモンチーに出会った曲だった。リリースされて13年も経っているが、初めて聴いたあの時と同じような瑞々しさが武道館いっぱいに広がっていた。

たくさんの拍手に迎えられてのアンコールは「シャングリラ」「風吹けば恋」そして「サラバ青春」という、全曲クミコン作詞の曲だった。この流れが偶然なのか必然なのかはわからないが、最後の最後にグッと来てしまったことは確かだった。
「サラバ青春」の演奏前には、えっちゃんとあっこちゃんがステージ前方に座り、向かい合っていた。言葉に詰まるふたりのその姿を見て、また涙が溢れてきた。

〈きっといつの日か笑い話になるのかな あの頃は青くさかったなんてね
水平線に消えていく太陽みたいに 僕らの青春もサラバなのだね サラバ青春〉
(サラバ青春)

21時すぎ。ライブが終わってからしばらく座席を立つことができず、私はタオルで顔を覆っていた。自分の青春に手を振り、さよならをした気分だった。
「このあと夜行バスで地元へ帰り、明日は仕事へ行かなくちゃいけないのに。」
そんなことも忘れて、ただただ溢れてくる涙を抑えることはできなかった。それだけ自分にとって大切なバンドだということを、最後のワンマンライブで改めて気付かされた。

チャットモンチーに出会ったころ、右も左もわからない東京でひとり暮らし始めた18歳の田舎娘は31歳になり、地元で仕事に追われる日々を過ごしている。生活環境や人間関係も変化し、嬉しいこと、辛いこと、悲しいこともたくさんあったけど、ただ、あの頃と変わらないのは、チャットモンチーの曲が私の毎日に寄り添ってくれていることだ。
2018年7月。チャットモンチーは完結してしまうけど、彼女たちの楽曲はこれからも聴き続けることができる。オーディオの再生ボタンを押せば、いつだってあの頃に戻ることはできるのだ。泣いてばかりいられない。

最後に。3人から始まり、2人になり、変身を重ねながらもチャットモンチーを続けてくれた、えっちゃん、あっこちゃん、本当にありがとう。
「チャットモンチーになりたい。」この日のライブを通して、私の気持ちはより強くなってしまいました。ずっと私の憧れです。
そして、クミコン。ラストアルバムに作詞という形で再びチャットモンチーに加わってくれて本当に嬉しかったです。本当にありがとう。
いざとなると伝えたいことが多すぎて、言葉にするのが難しいので簡潔に綴ります。
「チャットモンチーが大好きです。」
たくさんの愛を込めて。

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