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2017年4月24日

あいざわまいこ (20歳)

「音楽」という体現。

人見知りバンド「サイダーガール」メジャーデビューに寄せて。

2017年4月22日土曜日。
東京都渋谷区CLUB QUATTRO。
サイダーガール自主企画ライブ「CIDER LABO VOL.4」。
ゲストは「ONIGAWARA」と「LAMP IN TERREN」。

私にとっても、サイダーガールファンにとっても、もちろんメンバー本人達にとっても、この日が、この時間が、きっと大切な日になったと思う。

当日、私は学校帰りだった。
大学の授業。1~3限。授業が終わり次第急いで渋谷に向かった。
サイダーガールのライブは関東であればほぼ参戦している。
この自主企画も、初めてサイダーガールのライブを見たvol.1から
気持ち的にはもう慣れ。
重大発表がある、と予め告知されていたが、新曲制作を行っていることを知っていたため、
「CDの発売と、それに伴うリリースツアーだろう」
と軽く見ていた。
いつもどおり仲のいい友達に会い、一緒に参戦する約束をした友達と合流し、いつもどおりステージ下手側の方へ。
整番がよかったため初めて柵をつかめた事以外、私にとっては「いつものサイダーガールのライブ」だった。

ゲストの2組はどちらもはじめて見る。
LAMP IN TERRENはメジャーデビューもしているアーティストだけあって、やはりカッコイイ。
ONIGAWARAは独特の雰囲気がとてもクセになるし、一緒にキャッチーで覚えやすいフリをしたためとても楽しかった。

2組が終わり、ついにトリである企画者のサイダーガール。

私はここで、心做しか漠然と何かが違う気がした。
一気にカメラが増えた。私が気付いただけで3人。多い。
顔出しもしていないバンドで、映像もそんなに出していない。
「何が起こるんだろう」そう思った。

SEが流れ、メンバーが出てくる。
一番有名であろう「ドラマチック」ではじまり、モッシュをしたくなるような曲「モラトリアムさん」がきて、どんどん熱気を帯びていくフロア。
楽しくてあっという間に曲が終わっていく。
MCをはさんで、「魔法」「夕凪」とスローテンポな曲が続く。
あっという間に曲が終わっていく。
そんななか、Ba.フジムラのMC。いきなりしつこいくらいに煽り出す。私は思わず笑いながらレスポンスを返す。
「まだまだたんねー!!!」「もっといけるだろー!!!」
と声を張り上げるフジムラ。
するといきなりベースを床に置き、客席へ降り、柵にのぼりフロアを煽る。
今までのライブでこんなことは初めてだった。フジムラがコールし、レスポンスを促し、フロアには再び熱気と、そして一体感が生まれていた。
(わたし的には、フジムラが置いていったベースをギターの上からかけて楽しそうに弾いているGt.&Vo.ゆりんに目が行ってしまったが。)
そしてその盛り上がりのまま感情を撒き散らかしたような曲「アイヴィー」へ。
〈走っていけその瞬間へ〉という動き出したくなるようなサビの「オーバードライブ」、感傷的な「No.2」と有名どころがきて、本編は終了。

メンバーは袖にはけていき、ステージには幕が引かれた。
この日、転換でさえ幕を使っていなかったので、何事かと思った。
「そういえば本編で重大発表はなかったし、一体何が始まるのか」
と思い、ずっとソワソワしていた。
アンコールの拍手をしながら、いまかいまかとメンバーが戻ってくるのを待つ。

幕が開く様子もメンバーが戻ってくる様子もない。
そんななか、会場にピアノの音が1音だけ響いたと同時に、ステージに引かれた幕にMVに出演しているるうこの映像が映し出された。
ざわつき始めるフロア。
映像を見ていると、それは「スワロウ」のMVと似ていた。
るうこが紙飛行機を折っていて、そこに「ドラマチック」のメロディーがフェードインしてきたかと思ったら、ピアノの音が鳴り響くとともに「オーバードライブ」「スワロウ」と変わっていく。それと同時に私の心拍数も跳ね上がっていくようだった。
そして、いままで登場した事のない少女が映し出され、その手にはるうこの折っていた紙飛行機が握られ、次のカットでその紙飛行機を開く。
何か文字が見えた瞬間、フロアから歓声が上がる。
その紙飛行機の中には「サイダーガール メジャーデビュー!」の文字があった。
気づいたときには私の目から涙が溢れ出ていた。
嬉しかったとか、驚いたとか。そんなことでは言い表せない気持ちだった。

幕が上がりステージにメンバーが戻ってくる。
正直ここからのことは、断片的にしか思い出せない。それほど気持ちが昂っていたのだろう。
新曲でもありメジャーデビューの1曲ともなる「エバーグリーン」をかき鳴らす。
私の頭の中を初めて彼らを見たライブから今日までのことが走馬灯のように駆け巡った。
下北沢モザイクでこの自主企画が始まったこと。
2016年のロッキンに彼らが出ていたこと。そして、終わったあと、袖で肩を組みながら泣いていたこと。
半年弱前に初ワンマンを成功させたこと。など。
そのすべてよりも今日が一番輝いていた。一番かっこよかった。

曲が終わり、それぞれの思いの丈を述べていく。
フジムラが「音楽をやめようと思ったこともあった」と泣きそうになりながら話していると、Gt.知の茶々をいれるような「がんばれー!」に続き、フロアのあちらこちらから声援があがり、会場の謎の一体感でフジムラを泣かせにいく。
ゆりんや知が話すときはみんな真剣に聞いていたが。

ゆりんの「一番最初に作った曲をやります」という言葉。
鳴らされるラスト。「群青」。
〈いつか夢に見ていた青春が 僕らの中に有ったんだ〉と歌われている。
この歌詞を聞いたときに、乾きかけていた涙が再び溢れた。

想像もしていなかったメジャーデビュー。
正直な感想、早いんじゃないか、と思う。
しかし、大好きなバンドが沢山の人に聴いてもらえる機会を得たことは嬉しい限りである。
本当に嬉しいことだし、その発表の瞬間をライブの空間で分かち合えたことは最高の思い出だ。
 
 

私がサイダーガールに対して思うこと。

このバンドの特徴とも言える、メンバーそれぞれの作る曲。
知の名付けた「炭酸系サウンド」を軸に、それぞれの個性がでている。
知の曲は曲ごとにとても表情が豊かだ。明るく突き抜けるような曲。憂鬱や寂しさ、傷を歌っている曲。4拍子ではない曲。とにかく引き出しが多い。
フジムラの曲は情景を描いたような曲が多く、聴いていて景色が浮かぶ。雰囲気が感傷的なものが多く、涙もろいフジムラらしい。
ゆりんは元々キッズだったらしく、盛り上がるような曲調が多いことにそれが現れているように感じる。メロコアのようなサビでモッシュしたくなるような曲や、カッコイイ曲が多い。
また、私は初めてサイダーガールを見た時からフジムラの動きのある、体全体で感情を表すかのように弾いているベースがとても大好きだ。
もちろん、ゆりんの力強い歌声も、知の自身が作る曲と同じように表情豊かな演奏も好きだ。
彼らの口下手人見知りからは想像出来ないほどの曲と演奏の表現力だと思う。

言葉はうろ覚えだが、今回、MCの中で、ゆりんが
「人見知りで伝えることは苦手だけど、だからこうして音楽通して伝える。」
というようなことを言っていた。
確かに、彼らのMCはたどたどしくて、見てていつもドキドキする。
今回のMCでも「緊張して足が震えてる」とフジムラが言い出すシーンもあった。
しかし、曲が始まるとそれが一転。動きも演奏も、堂々としている。語りでは出せなくても、「音楽」というフィールドではきちんと自分たちのことを出して行けている。
本当に不思議なバンドだと思う。

だが、ちゃんと曲を聴くと彼らの内向的な部分がよくわかる。
ガツガツした曲が少ないのだ。ガツガツというよりもキラキラとしている。そうじゃないものは後ろ向きだったり、少し暗くて感傷的。
そんな部分があるから聴いていて寄り添ってくれているようで心地よさがある。
もちろんガツガツした曲だって好きなので、これから増えていくのも楽しみだ。
「シュワシュワとはじける炭酸の泡は爽快感、その泡はあっという間に消えてなくなってしまう儚さ。そしてどんな色にも自在に変化していく。」
とプロフィールで書いている。これからまだまだ沢山の表情を見せてくれるのが楽しみである。
 

「このバンドについてきてよかった」なんて言うつもりはない。
ついてきたんじゃない。好きで追いかけていただけだ。
気づいたら沢山の思い出が出来ていた。
 
 
 
 
 
 

―――彼らの曲はこれからも私の〈味気ない生活〉に音楽という「魔法」をかけてくれることだろう。

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