1385 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

自由は此処に

完全体のa flood of circleを観て

 「『ロック』がいっぱいあるけど、『ロックンロール』が足りないんじゃないかと思ってきました」とあるフェスに出演した時に佐々木亮介が言った言葉らしい。この一文を見たときは「ロックとロックンロールって言ったって、単にロックンロールの省略形がロックじゃないのか?」と思っていたが、今ではニヤつきながら「なるほど彼らはロックンロールだな」と納得している。

 a flood of circleの新譜が「a flood of circle」だと公表された日から胸の高鳴りはおさまらなかった。アオキテツ正式加入発表となったライブは、家にWi-Fiがないために駅に出向いてWi-Fi開放の喫茶店に飛び込み、甘ったるいココアは膜が張るほどそっちのけで夢中になって見た。ジャケットは4人のモノクロ写真。これまでジャケットにメンバーが写っていたことは度々あったが、この潔さはなんだ?!これでセルフタイトルだなんて。フラゲ日のバイト帰り、バイト先から一番近いタワーレコードに駆け込んでCDを買ってから何度も聞いた。胸躍らせてライブを待った。

 そして来たる6月15日、名古屋CLUB QUATTRO。電気が落ちた暗闇にくぐもったサウンドが響きわたり、メンバーが一人ひとり登場する。渡邊一丘がドラムセットの後ろへ、HISAYOがベースを構え、アオキテツがギターを掲げ、そして佐々木亮介がマイクを手に取る。ツアータイトルにもかけた、今作でさらなる境地に辿り着いた象徴となる曲「Where Is My Freedom」から幕は切って落とされた。4人になってもともとラップ的要素を詰め込んでいた佐々木がボーカルに振り切れるようになり、バンドとしての自由度がグッとあがったことを見せつけるとそのまま「Blood & Bones」へ。会場の熱気をヒートアップさせながら煽るように佐々木とテツがソロを弾き倒す。中盤ではまさかの曲、「Ghost」が鳴らされ、この地名古屋への思いを語ったあとは「Summer Soda」。アウトロのギターソロをテツが弾き間違えるというハプニングがあるものの、「こういう日もある」とテツ。それに「テツがこれから魅せてくれるんでしょ」と返す佐々木。こういう軽いやりとりの中にも“これから”がこのメンバーで続いていくことを感じ取り、あぁ“これから”も見れるんだな、なんてこれまでにはなかった爽やかな夏のナンバーの余韻に浸りながら思っていた。「陽はまた昇るそれを知りながらまた朝を願う」「スカイウォーカー」と懐かしい曲を挟みながら本編は進む。
 この日のライブでは、これまでギタリストがサポートというかたちで入っていたため、ギタリストがチェンジするたびにまた一からつくりなおしあわせて…という工程を踏んでおり、それ故に手が届いていなかったであろう曲まで披露されていた。もちろんギタリストが変化することで得られる化学反応だってあるし、フラッドと歴代のギタリストはそれを何度も見せてくれた。ただ、テツは「フラッドに骨を埋める気持ちで来た」最後のギタリストなのだ。新しい風なんてもんじゃない、新しく血を吹き込み脈を打ち、再び循環させるような立ち位置であり、過去の楽曲がまた息吹を新たに日の目を浴びていた。そうなのだ、これからのフラッドは新しく駒を進めるだけでなく、過去をまごうことなき今、最新にアップデートし続けられるのだ。単に過去の楽曲が鳴らされる、という事実以上に過去も全部ひっくるめて今が最強だという姿と音を感じた。
「One Way Blues」で今のバンドのスタイルと可能性を見せつけたあとはMCを挟み、「New Tribe」へ。前作からの曲だが今のバンドにふさわしい曲である。はじめて聞いた時、何故彼らは幾多の脱退等の危機に直面しながらこんな歌を、「生まれ変わるのさ 今日ここで変わるのさ 不可能の壁を 壊し続けて」(New Tribe)なんて歌えるのだろうかと思っていた。だけど、多分「Blood & Bones」で「俺たちが今 辿り着けるのは 目指してたから」(Blood & Bones)と歌っていたように、その完成形が明確には分からずとも、彼らは「a flood of circle」を目指していたのだ。そしてそこにアオキテツという最強の最後のピースがはまった。「さあ 行こう New Tribe」(New Tribe)とひとつ前をさらに刷新し高らかに鳴らしたあとは、イントロから観客の待っていました!という空気が流れた「プシケ」。コールされる名前が何度も変わりながらなされてきたメンバー紹介も、これまで変化してきたからこそ、これから変化しないその意味と重さがひときわ輝く。そのまま「俺たちとあんたたちの明日に捧げます!」と「シーガル」になだれこみ、「ミッドナイト・クローラー」そして、「Wink Song」でバンドの壮大さを物語って本編は終了した。
 アンコールでは「Human License」で観客を左右に揺らし、「最後に言い忘れていた、I LOVE YOU!」と「I LOVE YOU」。「I LOVE YOU 未来は君のもんなのさ ブルースを歌えるよ」(I LOVE YOU)そうだ、この曲に、ずっと披露し続けている代表曲「シーガル」に歌われているように、フラッドはいつだって明日を、未来を見据えているバンドだ。辿り着いた今の形が最高でもゴールじゃない、ここがスタートだからどこまでも行けるのだと。「ここから俺たちまたはじめていくんで、今日ここに来たことをいつかあそこからはじまったんだって言わせてやるから」と佐々木が言っていた通り、これからに期待せずにはいられないライブだった。頬は紅潮し冷め切らない興奮を胸に、終電間際の電車に乗客として滑り込む。

 人生はクソゲーだと思う。「どんなに戦っても 全部ムダなら 完璧なトドメを刺してくれ」(Rodeo Drive)そう、トドメを刺されないまま傷だらけのまま生かされる。突然終わりは来るくせに、願ってない日々にも明日は来る。諦めること、辞めることだって立派な決断の一つである。だけど、メンバーが失踪しても脱退しても、音楽性が変わっただのなんだの言われ、そして私自身も一時的に聞かなくなった時期があった、そんなバンドが止まらずに転がり続けて今最高の布陣を敷いている、その事実が、その存在が、名古屋の街の片隅の薄暗いライブハウスの中で燃えていた。必死で明日に手を伸ばすことは時に泥臭くダサいものだ。だけど、どうしてか信じてしまう、拳をあげてしまう。それはきっと響かせる彼らが『ロックンロールバンド』だからだ。楽曲もライブもその歩みも、すべてをもって『ロック』じゃ足りないそれだけじゃない、「Roll Roll Roll 間違いだらけでいいぜ」(Rock’N’Roll New School)そう叫んで、自ら予期していなかったであろう未来を受け入れ乗り越え、そして響かせ、『ロックンロール』しているバンドだからだ。
ツアーファイナルで発表されたように、シングル発売、そしてツアーと彼らは止まることを知らない。いや、知っていながらそれでも止まらない。終わらないなら終わらせてしまえ?いやいや、終わらないなら進んでいくしかないのだ。「焼け野原でついに 出会ったね俺たち」(Blood & Bones)果てではこんなこともあるし、例え後戻りでも「爪先は前に進むように向いてる」(El Dorado)らしい、心配いらないんだってさ。

 わずかな一節に、短いメロディーに、たった数時間のライブに、とあるロックンロールバンドに。それらに背を押されたら日々は何とか乗り越えられてしまうし、明日だって信じてみたくなる。誰にも話すあてのない焼け跡を胸に焦がされたり、『ロック』と『ロックンロール』は違うのだと、窓ガラスに映る自分の顔と向き合う満員電車に揺られながら力強く一人噛みしめてしまう。何度踏み外してもゲームオーバーになってくれずセーブしかできないけど、急速に回復して明日に心を揺らす、そんなアンバランスな夜がある。やっぱり、なんだか人生はクソゲーだ。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい