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相思相愛の掛け算の答え

sumikaの楽曲が交わるとき

およそ音楽文に投稿するには的外れかもしれない、
ある忘れられないたった1時間半の中でのたった3曲について書きたいと思う。

文字のごとく茹だるような暑さが容赦の無い7月24日、1本の映画が観客の前で産声を上げた。原作・実写映画共に話題性のみならず大ヒットの記録を持つ『君の膵臓をたべたい』のアニメ映像化作品である。

この日の“完成披露試写会”は極めて限定的な人数で開催された。
場所はZepp DiverCity(TOKYO)。映画の完成披露試写会でライブハウスという
少しだけ不思議なロケーションには理由があった。
本編上映後にオープニングテーマ・劇中歌・主題歌を手掛けた
sumikaによるミニライブが行われる予定となっていたのだ。

『君の膵臓をたべたい』の楽曲をsumikaが担当するというニュースが発表された時、
大好きな本と、ものすごく大好きなバンドが関わる夢のような作品なんて観に行かないわけがないと思っていた
…矢先にsumikaのファンクラブであるATTiC ROOMで試写会の応募を受け付けている。
社会人のくせに平日も休日も考えず真っ先に応募したのは言うまでもない。
 

定刻、桜の花びらの舞うステージに登場したキャスト・監督・そしてsumikaの面々。
同時に大音量で流れだした『ファンファーレ』に、何も始まってもいないのに胸が熱くなった。
なんだかニコニコとマイクを握り締める4人の方ばかり見てしまって更にそわそわしてしまい情けない。

そんな中始まった作品のオープニングを飾ったのは『ファンファーレ』。
作品の完成前から、予告編等でも最も多く耳にしていた1曲。
眩しい程に美しい映像と共に届けられたそれは、
これから語られる[僕]と[桜良]の物語の始まりを祝福するかのように
場内に、そして私たちそれぞれの中に力強く響き渡った。

次に劇中歌である『秘密』について少しだけ長めに話したい。
『秘密』は、sumikaのキーボード&コーラスおがりんこと小川貴之が、
音楽で生きていくと決めた中での夢のひとつであった“映画の劇中歌を担当する”
というものを現実にした1曲でもある。

そんな強い想いもあってか(なくても)この楽曲は、あるシーンで作品と息を呑むような交わりを見せる。
アニメーションと楽曲がぴたりと呼吸を合わせてメッセージを伝えようとするそのシーンが出来た所以はもちろん制作チームや監督の緻密な計画の下にあったと思っていたのだが、牛嶋監督が上映後に語った一言に鳥肌が立った。

そこに加わるという楽曲をsumikaに依頼した際に戻ってきたものをいざシーンに当てはめてみるとびっくりするほど全てのタイミングが寸分の狂いなく合致したものが出来あがったのだという。
不思議に思った監督が当の本人である彼らへそのことを伝えると、
シーンの始まりから終わりまでの全ての現象のタイミングを計算して作った、
との答えがふわりと返ってきたというのだ。

それは約1時間半のうちのたった数分のシーンかもしれない。
ただ、その数分はあの場にいたsumikaを愛している人にはもちろん
作品そのものを愛している人、声優を務めたキャストの皆さんを愛している人
すべての人の心の中に、この作品においての彩りを更に何重も与えたはずだということを
私は強く主張したい。
長々と回りくどいが とにかくそれほどに胸が詰まったということなのだけれど。

そして物語を締めくくる『春夏秋冬』。
イベント冒頭の記者会見にてボーカル片岡健太が語るに、
音楽家人生初の15回もの書きなおしを経て出来た渾身の1曲。
静かに流れるエンドロールの脇に映し出される歌詞のひとつひとつから、目が離せなかった。
今まで観てきた[僕]と[桜良]のいろんな姿を繰り返し思い出さずにいられなかった。
最後には、自分がこの作品を観て頭に浮かぶ人のことを想わずにはいられなくなった。
1曲の中でこんなにも感情がいろんな方向へ変化していくなんて思いもよらなくて、
今まで感じたことの無いsumikaの新たな魔法にかかったようだった。
 

心臓を揺さぶられた作品の上映後に待っているのは、もちろんsumikaのライブ。
再び登壇した牛嶋監督とキャストの高杉真宙さん・Lynnさんのトークの後ろで
sumikaのステージが着々を準備されていく気配がしていた。

ライブと言っても時間はごくごく限られていて一音も聴き逃さないようにと勝手に緊張していた私だったが幕が上がって、そんな私なんかよりも何百倍も神経を研ぎ澄ましている5人の姿が見えて息つく間もなく繰り出された音に、しょうもない緊張はあっという間にどこかへ流れていってしまった。
さっきまでスクリーンの中で鳴っていた音が、今目の前で、この作品のことだけを考えて考えて考え抜いた人たちの手でそれを待っていた人たちに向けて鳴らされている。
隼ちゃんの歌うギターソロが、荒井さんの力強いドラムが、井嶋さんの曲を掴んで離さないベースが、おがりんのエモーショナルな鍵盤が、片岡さんの紡ぐ歌が、ついに届けられている。
そんな奇跡みたいな瞬間にハラハラと気持ちを尖らせているなんて馬鹿だった。

『ファンファーレ』と『春夏秋冬』。
全く違う曲調で、温度で作品と交わった2曲を丸々きちんと届けたのはこの日が初めてだったという。
はにかみながら緊張を話した彼らはそれすらも楽器のひとつに変えて私たちに聴かせてくれた。
本当に情けないけれどそれぞれの曲に関しては、ここでは書けないし、書かない。
それは解禁や発売時期が云々などという立派な理由なんかじゃなく、
私の中でまだこれを表現できる言葉が見つけられないから。
だから今は少しでも多くの人と話したい。この作品と共に生きているsumikaの曲たちのことを。
 

sumikaは、どんなものに対してでも自分たち自身が考え・納得し・選び・決断し、
その上で“徹底的に関わり尽くす”という姿勢がかなり強いひとたちであると思っている。
楽曲や彼らの人柄なんてものは言うまでもなく、そんな姿勢に憧れ好きになったのだ。
劇中のセリフを借りるとすれば、
そんなsumikaとこの作品は 互いが互いを選んで出会ったのだろう。
選んで生まれた相思相愛の矢印が、感動を何倍もの掛け算にしたのだろう。

映画の完成披露試写会という場で、武道館以後初めて生で観たsumikaは
多くを語らずとも更に大きな憧れと好きの気持ちをくれた。
これから公開を迎えどんどん多くの人に広がっていくであろう作品とsumikaの曲たちについて、どこかのだれかと語り合えるのを今か今かと待ちわびている。
 

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