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2017年4月27日

ブランドン・ヨシト (23歳)
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Dragon Ashを聴かない。

本物か偽物か。

彼らには何度も勇気をもらった。
ダウンロードが蔓延るこの時代に、珍しくCDを買って、バイトまでの電車の中で、ずっと彼らの曲を聴いた。友達と遊びに行くときも聞いたし、酔っ払って始発で家に帰る時も聴いた。調子が良い時は自然と彼らを選んだし、くじけそうな時は勇気をもらうために彼らの曲を聴いた。

でも、今は違う。Dragon Ashは聴かない。

(始まりは大都会の中坊”Judgment Night”聴いたのは15/Rock Band)(時は流れ冷めぬ感情 突き動かすあの頃の感動 忘れてねぇ 今も何も 俺の夢はロックバンド/RockBand)好きって気持ちだけで始めたものを、おっさんになっても続けてる人がいる。ちっさいきっかけのでっかい夢。それを知ってしまった19歳の僕は、今まで歩んでた道とは違う方向に一歩踏み出すことにした。

(誰か何かを起こす時 目の前に壁が立ちはだかる たじろぐな開拓者 導火線握り着火大爆破/Trigger)
未来へ引き金を引いた。

ちょうどDragon Ashを好きになってしばらくすると、メンバーの1人、ベーシストの馬場育三さんが急逝した。彼の追悼ライブが僕の初めてのライブ体験だ。好きになったばっかりで、メンバーの顔も全員把握していなかったのに、僕は泣いた。
(走らせてくれ 走らせてくれ/Run to the Sun)(消せないくらい深く残る傷 それさえ歌い繋ぐ事出来る/Here I am)活動休止もありえる状況で歩みを止めずに、彼らは曲を出して、走り続けた。そんな強さを僕は羨ましく思うと同時に、未来の自分の理想像を彼らの姿に重ね合わせて、背中を追いかけた。

(日々は短く早い 黙って死んだように生きたくはない/Walk with Dreams)(生まれたことに意味なんてない だからこそ薔薇咲かしてやれ/FIRE SONG)(何も出来ずすくんでいた足で 踏み締め前へ進んでいけ明日へ/AMBITIOUS)彼らの曲には前向きなものが多い。「夢」や、「明日」、「希望」、しかもそれはキラキラ輝く少年のような熱量を帯びたまま表現されている。歌詞から何を感じるかは人それぞれだけど僕にとっては凄く輝いて見えたし、こんな生き方がしたいと思えた。
過去の曲も全て聴き漁った。インタビュー記事も一通り読んだし、彼らが載るからって、今まで買ったことのない雑誌も買った。気付けば、「好き」ってことに一生懸命になっていた。

でも、ある時から僕は卑屈になっていった。
彼らの曲を聴けば聴くほど、自分とは全然違うなぁ。ってことばかり考えるようになった。僕はいっつも悩んでばっかりで、次の日にはまた違うことで悩んで。振り返ってみても、問題はそのまま放置。全然解決しないまま目を背けてきただけだ。
なんてことを思うようになった。
机の上のコンビニ弁当の空、床に散らかる脱ぎっぱなしの服、積み重なる支払い用紙が重くのしかかった。

(誰か何かを起こす時 何もしねえ奴らが道ふさぐ/Trigger)
未来に向けたはずの銃口は、自分に向いていた。自分自身の弱さがいつも自分の歩みを邪魔していた。

夢ってほんと厄介だ。ある時は、遠いとこからこっちにおいでと、光を差し込んでくるし、ある時は目の前に威勢良く立ちはだかってきて、僕を影の中にうずめようとしてくる。でもその夢ってやつは自分自身の中にあった。歩みを進めるのも自分だし、止めるのも自分だった。

最初は勇気をもらってた彼らの曲だけど、今聴くと、自分の弱さを痛感するだけだ。でも、彼らのディストーションギターの音色を聴くと、鮮烈なドラムの音を聴くと、体に響くベースを聴くと、小刻みの良いスクラッチを聴くと、渇いた声を聴くと。心の奥で何かがうごめくんだ。

今はその何かに向き合う強さが無いから僕はDragon Ashを聴かない。

でも、一つはっきりと言えることがある。
Dragon Ashの音楽は、具体的な行動として、僕をレコードショップまで足を運ばせ、雑誌も買わせて、服装も変えさせた。行ったことのないライブまで行かせて、好きに一生懸命にさせてくれた。そして今では、自己嫌悪に陥らせて、両耳からイヤホンを外させた。

そんな影響力のある音楽って無数にある音楽の中の一握りじゃないだろうか。血の通わない音楽はそこらへんにいくらでも落ちている。でもそれじゃ人は動かない。言葉だってそうだ。言葉は自由だからなんとでも言える。お金を大切にしなさい。喧嘩はダメだよ。人に優しくしなさい。愛してるよ。人を動かさない綺麗な言葉がフワフワ浮いている。はっきり言ってそんなのクソだ。
音楽も一緒だ。音楽も自由だ。今の時代、パソコン一台あれば誰だって作れる。でも、そんなのクソだ。それは綺麗に着飾った偽物なのか、実際に人を動かす本物なのか。そこが肝心だ。

小さいライブハウスで、最初は床しか見えなかったモッシュピットが、次第に見えなくなる過程を経験したバンドだからこそ鳴らせる音楽がある。血の通った言葉がある。僕にとってDragon Ashは紛れもなく血の通った本物だ。
だからリスペクトを込めて。
いつか彼らの音楽を素直に受け入れるようになるまで僕はDragonAshを聞かない。彼らがそうさせた。自分がそうした。

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