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付いていない羽を、懸命に羽ばたかせて

BUMP OF CHICKEN 望遠のマーチ

会社に入社して、今年で22年になる。最初は営業部だったが、数年後に総務部に異動になった。もともと顔見知りが激しく、人とうまく話せない自分にとっては、営業より事務職の総務が向いていた。真面目に働いているうちに、いろんな仕事を任されるようになった。がんばってるじゃん、俺。そう思っていたが、なぜか何年たっても昇格できないでいた。責任のある仕事も増えた。自分しかできないこともある。それでなぜ評価されないのか…。役職は営業部のころから全く変わらなかった。自分の悩みをよそに、周りはどんどん昇格していった。年下の後輩が上司になることも増えてきた。なぜだ、なぜなんだ…。
さらに屈辱的なことが起こった。うちの会社は基本的に転勤はない。それにも関わらず、支店から転勤してきた人が上司になった。その上司は俺より後輩だ。そのポジションは俺が行くはずだったはずだ。普段はやらない転勤をさせてまで、俺には出世させないということなのか。お前じゃだめだと、会社に言われた気がした。顔には出さなかったが、俺のプライドはズタズタになった。
こんな状況でも、普通に働いていれば、定年まで会社にいることはできる。安定した収入が約束されているし、退職金もそれなりにもらえるだろう。それでいいと理解しながらも、会社を辞めてしまいたい感情が芽生えた。過去にも何度かあったが、その時はただ嫌なことがあったという、社会人としての責任感のカケラもないしょうもない一時的な感情だったが、今回は自分のプライドが会社を激しく拒否していた。だがこんな年になって転職など大変だ、その傷は心に隠しておとなしくしておけと考える自分もいる。今までの人生で味わったことのない葛藤を感じているとき、もともとファンだったBUMP OF CHICKENの新曲が配信された。アプリゲームのCMソングらしい。へーと思いながら聞いた。涙が止まらなかった。「望遠のマーチ」だ。

“何を言おうとしたの その目の奥に何を隠したの 秒針はそこを示して止まっている”
“嘘と本当に囲まれ 逃げ出す事もままならないまま 秒針にそこを指されて止まっている”
何かを言おうとしても言えず、逃げ出すこともできず止まっている。まさに今の自分のことだ。
“失うものはないとか かっこいい事言えたらいいよな 本気で迷って 必死にヘラヘラしている”
失うものはないと言って、思い切って会社を辞められたらいいが、そんな思いは外に出せず、何もありませんよ、僕は元気ですよ、という顔を必死で作っている毎日。まさに今の自分のことだ。
“死んだような今日だって 死ねないで叫んでいる”
しょうもないことばかり考えて、心の中は死んだような毎日だが、当然死ぬことはできず、逆にそのしょうもないことを心の中で叫びまくっている。まさに今の自分のことだ。
だがそんな俺にも、
“嵐の中も その羽根で飛んできたんだ”
と言ってくれる。そう、今までもいろいろあったけど、なんとかここまで来た、分かってくれるよねと思ったら、
“羽根は折れないぜ もともと付いてもいないぜ”
…そうだな、うぬぼれるな。俺に羽なんか付いてる訳ない。そらそうだよな、と思えばもう一度、
“嵐の中も その羽根で飛んできたんだ”
と言ってくれた。もともと付いてない羽根でなんとかここまで飛んできたな、俺。

やはりまだあきらめるのは早いかもしれない。会社が自分のことをどう思っていようと、22年間働いてきたという事実は絶対にあるわけで、ゼロになることはない。みんなひとりぼっちなのだから、会社の俺以外にも言えない悩みを抱えている人がいるだろう。
付いていない羽を一生懸命羽ばたかせて、もう少し行けるか、がんばってみよう。だってBUMP OF CHICKENにこう言われたのだから。

“いこう いこうよ”

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