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今年の夏は、こんな一節から始まる。

あいみょん5thシングル「マリーゴールド」発売に寄せて

フラれそうだ。

初夏ごろから、漠然とした不安が心臓のあたりに渦巻いている。

幼い頃から、花が好きだった。
女の子の将来の夢一位が“お花屋さん”だった当時、私はへたくそな文字で一丁前な夢を描いていた。お花が好きだからお花屋さん、とはいかなかったようだが、通学路に咲くタンポポや、校庭の脇のアザミ、観察日記を描いたサルビアなど、花にまつわる記憶はいくつもある。自宅は庭のない小さな家だが、プランターには季節ごとの花が咲き玄関を彩った。

春は桜、夏は向日葵、秋は金木犀、冬は椿
いつからか、草花の認識はこれくらいになった。お花屋さんの冷蔵室にある見たこともない植物にわくわくして、ガラスに顔をくっつけて見ていた私もいつの間にか大人になった。

ここまで書いておいて実のところ、この夏までマリーゴールドが夏の花だと知らなかった。
もう一つ懺悔すると、赤いマリーゴールドがあることすら知らなかった。鉢からにゅっと男女の手がはえている、あのジャケットを見た時はそのインパクトに正直ぎょっとしたが、発想もさることながらメインの赤色に驚いた。
長たらしい前置きがひたすらに恥ずかしい。
 

「風の強さがちょっと 心を揺さぶりすぎて
真面目に見つめた 君が恋しい」

今年の夏は、こんな一節から始まる。

印象的なイントロ明けに落ち着いた声で紡がれる歌詞は、やわらかく切ない。
けれど、流れるままに聴いていると歌詞の意味を掴み損ねて、一度か二度、頭に戻した。
歌詞をまじまじ見つめる。

そのうち、君が恋しいにカギ括弧がついたように見えた。「君が恋しい」。
それは静かに胸におちてきた。
 

毎週同じ曜日に車で通る道の歩道には、200メートルほどの直線に黄色とオレンジのマリーゴールドが元気に咲いていた。
毎週通るのに、気づいたのはその時が初めてだった。もともと車通りが少なく、周りには誰もいない。そっとスピードを緩めてみる。
青すぎて入道雲もない夏空のもと、しなやかで強かに。口を開けば暑いとしか言わない人間のことなど気にもとめない様子で。
 

「麦わらの帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる
あれは空がまだ青い夏のこと 懐かしいと笑えたあの日の恋」

思い浮かぶのは、もうすっかり大人になったつもりでまだあどけなかったいつかの姿。
通して描かれるのは、不安も寂しさも抱いていたい不器用で愛おしいこころ。
「君が恋しい」「幸せだ」「大好きさ」と、素直に言える気持ちはいつになってもとても大切で素敵だと思う反面、むずかしいなあと思ってしまう。いやだ。頭でっかちないやな大人だ。
屈託なく誰かを愛せれば、こんなに幸せなことはないのだと分かっているのに。

「マリーゴールド」を包み込む切ない雰囲気を、結びの「いつまでも いつまでも 離さない」が、心地よく締める。
できるだけ優しく包み込みたい腕は、今日を重ねるにつれ垢抜けて、ちょっぴりマジになって抱きしめる。そんな感じ。
 

平成最後の夏に、フラれそうだとしけた顔をしている私はほんとうにダサい。情けないことこの上ない。しかもフラれたくない。心の底から。

マリーゴールドは一年草なので、来年同じ花は咲かない。
とか考えるともう本当に気が滅入りそうだが、花盛りを過ぎたら土を整えて種を撒いて水をやり、新年号最初の夏には、今年の俯いた私の影を笑ってやりたい。

強い風に背中を押されて、茹だる暑さの中でもへたらずに咲き誇るマリーゴールドに勇気づけられて。

平成最後の夏に、「離れないで」と泣かないで、「離さない」と誓って大正解だったじゃん!
なんて。

こんなに苦しいのに、切ないのに、やりきれないのに。やさしい夏の歌を、ありがとう、あいみょん。
 
 
 
 

今年の夏は、こんな一節から始まる。
あいみょん5thシングル「マリーゴールド」発売に寄せて
 
 

*「」・・・すべて新譜「マリーゴールド」の歌詞

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