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ジェニーハイに異常に恋してる

片目で異常に恋してるに見るジェニーハイ、そして川谷絵音

ジェニーハイというバンドを知っているだろうか。
BSスカパー!で放送されている「BAZOOKA!!!」という番組の知名度を上げるために結成されたバンドである。
メンバーは、Vocal中嶋イッキュウ(tricot)、Bassくっきー(野性爆弾)、Drum小籔千豊、Keyboard新垣隆、そしてGuitar/Produce川谷絵音の5人だ。
プロとして活躍するミュージシャンから芸人、ゴーストライター騒動で話題となった現代音楽家まで、実に様々なバックグラウンドを持ったメンバー達が集まっている。

と、ここまでで彼らに対してどのような印象を持っただろうか。
番組PRを目的に結成された上、何一つ共通点の見出せないメンバー。
彼らがどんな音楽を奏でているのか気になってこないだろうか。

彼らのデビュー曲は、もちろんプロデューサーである川谷絵音が作詞作曲を担当した、「片目で異常に恋してる」である。3/16に配信が開始され、それと同時に公開されたミュージックビデオは現在700万回を超える再生回数を記録している。

とりあえずこの曲をきいて欲しい。そして歌詞を見て欲しい。

「意味がわからない」

最初はそう思うかもしれない。なにせ、タイトルが「片目で異常に恋してる」、しかも1番最初の歌詞が「苦しゅうない」である。なんだこれは。時代劇か。

しかし、何度も反芻し、解釈を試みていくうちに、この一見意味不明な歌詞に込められたメッセージが伝わってくる。

まずこれはタイトルから想像出来るように、「恋の歌」である。そう、川谷絵音お得意の「恋の歌」だ。彼はindigo la Endにおいてこれでもかというほど切ない恋の歌を作っている。
これは私の解釈だが、片目で異常に恋してるとは、あなたしか見えない、つまりあなたに恋をし過ぎて相当偏った見方になってしまっているということだろう。実際、冒頭の部分で自分は絶対にあなたのことを嫌いにならない、ということを「苦しゅうない」という言葉を使って表現している。
しかし恋をし過ぎているあまり、落ち着かず、不安になりドーピングをしたいとまで考えるようになる、とAメロで歌っている。Aメロ冒頭で「BAZOOKA」という番組名を違和感なくさらっと使っているのも、タイアップ経験の多い川谷絵音だからこそなしえる技だ。
Bメロではあなたの恋人でいることの辛さを「切ない、苦しい」と言葉に出している。しまいには、あなたのヒロインではなく、塩分強めの脇役でいいや、とまで言ってしまう。しかしここで、ただの脇役でなく「塩分強めの」と表現するところが未練がましさを感じさせ、川谷絵音らしい。
2番の冒頭ではラップ調になり「またお騒がせします」と半ば開き直りのようなセリフを言う。しかも今まで中嶋イッキュウがボーカルを務めてきたにも関わらず、急に川谷絵音も参戦し、「毎度お騒がせします」と言い始める。自虐のように聞こえるのを狙ってやっているのか、川谷絵音のユーモアを感じさせられた。
その後、必死にあなたのことが好きすぎる自分をセーブしようとする様子が描かれる。これ以上この恋にのめり込むと危険だ、と何とか自分に言い聞かせる。

と、ここまではいつもの川谷絵音らしさを感じさせる歌詞だ。
しかし、この後から様子が変わってくる。

今まで片目で異常に恋していたあなたのことを「とりあえず両目で見てみたら」、「そんなに魅力的」には見えなかったのだ。さらに、「嫌われるって怖がった過去すら笑っちゃう 時間無駄にしたな」とまで言っている。

indigo la Endには切ない恋、想い続ける恋を歌った作品が多い。さらに、ゲスの極み乙女。にも、内省的な作品が多くある。特に「魅力がすごいよ」なんて、ものすごく暗い。

しかし、この「片目で異常に恋してる」では、主人公はこの異常な恋から解き放たれ、吹っ切れてしまうのだ。最後の最後にこうも言っている。

「みんな凝視し過ぎじゃない? どんなコースを生きてくの? 私はフルコース 品数多めで飽き足ります」

これには震えた。一途な恋を描くことの多い川谷絵音から「品数多めで飽き足ります」という言葉が出てくるなんて思いもしなかった。
さらに、過去の恋を思い出し、過去の自分を省み、過去に想いを馳せることが多い川谷絵音が未来を見ている。本当に驚いた。

私はこの曲から、川谷絵音の新しい挑戦への決意を汲み取った。「ジェニーハイ」という、いつもとは全く違う個性的なメンバーで組まれたバンドのプロデュース。彼はこの挑戦に大きな期待を持っているのだろう。

全く新しい川谷絵音が見られるジェニーハイ。その活動から目が離せない。「片目で異常に恋してる」をきいて10月に発売されるミニアルバムが欲しくならない人が果たしているだろうか。
もうすでに私はジェニーハイに異常に恋してしまっているのだ。

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