1383 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

歌がきこえる

MONOEYESがくれるもの

 
 

2015年、その報せを目にした時の「いったい何をやらかしてくれるのか」という期待感。

細美武士、新バンド結成、MONOEYES始動。

ものあいず、モノアイズ、MONOEYES、発音を確かめるように音を転がして、まだ見ぬそのバンドに思いを馳せた。

「A Mirage In The Sun」を初めて聴いた瞬間に、ああ、これは好きになるなと思った。
 
 

It’s my instant song
I could end this now
It’s my instant song

When it feels as if all’s lost
When it feels too hard to hold
When it feels I’m in the dark
Just sing a song
My instant song
When it feels so hard to breathe
When it feels too good to be true
When it feels scary to jump
Just sing a song
My instant song
My instant song

即興の歌
いつだってやめられる
即興の歌さ

全て失ったと感じるときは
これ以上もちこたえられないと感じるときは
暗がりにいると感じるときは
ただ歌を歌うんだ
即興の歌さ
息を飲む瞬間には
夢みたいだと思うときには
飛び込むのが怖いと感じるときは
ただ歌を歌うんだ
即興の歌さ

【My Instant Song】
 

初めて聴くのに、不思議とすぐ耳に馴染んだ。口ずさみながら、飛び跳ねたくなるような曲だった。
カラリと明るい歌詞ばかりではないが、1stアルバムのどの曲にも、何もかも吹き飛ばして前に進んでいくような勢いがあった。
「即興の歌」?、いやいや、MONOEYES、もうめちゃくちゃにカッコイイじゃないか。
 

【My Instant Song】という曲名を見た時に、似た名前の曲があったな、と活動を止めて久しいバンドの面影を探さなかったと言えば嘘になる。

それでも今この瞬間に、リアルタイムで届いている新しい音を、確かに好きだと感じた。
 
 

早いもので、今年で始動から3年が経った。
その間に何度も彼らのライブを見た。ことあるごとに東北へ足を運んでくれるので、東北在住の私は頻繁に彼らに会いに行くことができた。

ライブハウスで、フェスで、老若男女もなく、体を揺らし、笑顔で拳を突き上げる。
ステージの上でビールを片手にオーディエンスを煽るメンバーも含め、こんなに誰も彼もが笑っているライブを、私はあまり見たことがない。

【Run Run】が始まったら足を踏ん張らなければいけない。【When I Was A King】が流れ出した瞬間にいろんなことがどうでも良くなって、手を叩いて飛び跳ねる。【Borders & Walls】の走り出したくなるような高揚感も、ライブ終盤に鳴らされる【グラニート】や【明日公園で】が終わりを連れてくる寂しさも、何度体験したって飽きることはなかった。

笑っているしかないような、ただひたすらに楽しい時間をたくさんもらう中で、どうしようもなく泣きたくなる1曲がある。
 
 

とある東北の野外フェスでの、その曲が鳴った時の景色をよく覚えている。大トリを務めたのがMONOEYESだった。夕方になってようやく雨が上がって、霧が出て肌寒かったけれど、細美さんはお酒を飲みながら「霧って地上に接した雲なんだって。だから、俺たちは今、雲の中にいる!」と楽しそうに話していた。
 

個人的には仕事が上手くいっていない時期だった。情けないことに、職場で泣くことも度々あった。夜遅くまで仕事をして、疲弊して帰ってきて倒れ込むように横になった布団の上で、続けられるのかなぁ、なんて毎日のように考えていた頃だ。

次々に鳴らされる曲で飛び跳ねながら、精神安定剤のように聴き込んでいた、その1曲を待っていた。
 

If you are sore from yesterday
The sunrise means that you are still alive
Get up, get up
If you hear me roar today
It certainly means that you are not alone
Get up, get up
Just come around

傷を負ってても
朝日が昇るなら生きてるってことだ
起き上がれ 起き上がれ
俺が吠えるのが聞こえるなら
君は一人じゃないってことだ
起き上がれ 起き上がれ
顔を出しにきてくれよ

【Get Up】

目のふちが熱くなる。
口元をぎゅっと結ぶ。

「If you hear me roar today
It certainly means that you are not alone 」
(俺が吠えるのが聞こえるなら 君は一人じゃないってことだ)

「Get up, get up」
(起き上がれ 起き上がれ)
 

「一人にしない」と歌ってくれているようで、きこえているよ、と叫びたくなる。
 

明日を憂うしかない夜、朝に向かって、繰り返し、繰り返し聴いて、お守りみたいに心に持っていた歌詞。

「朝日が昇るなら生きてるってことだ」と歌われたら、少しだけ気持ちは前を向く。
 

柔らかいライトを背にして、【Get Up】を鳴らすステージ上の彼らを見るオーディエンスの眼差しは、痛みを堪えているようだったり、眩しそうだったり、あるいは涙が溢れる寸前だったりした。
その眼差しの持ち主ひとりひとりが、たぶん同じように、暗い夜をこの曲と共に越えてきているのだろうと思った日だった。
 
 
 

「それまでお互いの持ち場で踏ん張って、またライブハウスで遊ぼう」

いつのライブだっただろうか、細美さんがMCでそう言ったことがある。

上手くいかないことがあったり、好きになれない自分がいたり、絶望とか挫折とか、そんなに大きなものではなくても、きっと誰もがそれぞれの「持ち場」で、毎日を戦って生きている。

そのことを「頑張る」ではなく「踏ん張る」と言った。誰もが戦っていることを、分かっていての言葉だと思った。

同時に、「目を反らすなよ」と言われたような気がした。

大好きな音楽を全身に浴びながら体を揺らしている時間は、「持ち場」のことなんて忘れている。
けれど、その時間と日常はあくまでも地続きだ。
日常を投げ捨てたら、きっと胸を張ってライブに行くことはできない。

日常を戦い抜いた先に、その時間が待っているなら、「もう少し踏ん張ってみよう」と思える。胸を張って拳を上げられる自分でいられるように。
 

離れている間は、少し辛いかもしれないけれど、辛くなったら歌を歌う。
「一人じゃない」と信じられる歌を。
 

「全て失ったと感じるときは これ以上もちこたえられないと感じるときは ただ歌を歌うんだ」
【My Instant Song】
 
 

「また遊ぼう」、その言葉は、確かな約束だ。
 

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい