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ELLEGARDENと3650日

不幸と幸福は地つづき

目が覚めたのはAM10時。全身の筋肉への容赦ない訪問者。止まない耳鳴り。長時間、覚醒し続け痙攣していた脳のシワが少しずつ本来の姿へと形状記憶されてきた そう昨夜の翌朝。

無理もない。

活動を休止していたELLEGARDEN10年ぶりのツアーファイナルの現場を目の当たりにしてきたんだからそれも当然だ。

10年。3650日。87600時間。時間はいつだってシンプルにその大きさを物語る。
 

約13年前、熱狂的な音楽フリークの友人から手渡された一枚のCD。それがELLEGARDENの[Space Sonic]だった。
その友人から「これ今俺がハマってる洋楽なんだ」と言って渡されたのをハッキリと覚えている。きっといたずら心だったのだろう。見事に騙されてこのバンドが日本人だという事に気づいたのはそれから1ヶ月後だった。

音楽はもともと好きで2002年からずっとロック・イン・ジャパンに参戦していたのだが当時の自分はいわゆるインディーズバンドとゆう存在が良く分かっておらず中学時代の少し尖っていたクラスメイト達がコピーしていたHi-STANDARDやブルーハーツの事なんだろうなくらいの認識だった。もしかしたらメジャー(一軍)に上がれない(二軍)ミュージシャン達くらいに思っていた気がする。

そんな思いを100%払拭してくれたのがELLEGARDENであり、彼らの[Space Sonic]だった。間違いなくあの時が自分のターニングポイントであり人生の第二章の始まりであった。
それからは過去のCDをその友人に借りたりお金を貯めてレコード屋に買いにいって、風呂食事排泄以外はずっとイヤホンを耳に差しずっとずっと聞き車内では声が枯れるまで歌っていた覚えがある。

あの当時の自分の事を間近で見ていた家族の気持ちは説明しなくてもいいよね。
 

それからは彼ら見たさに当時のパートナーと一緒に全国行脚し徐々に増えつつあった各地のロックフェスに行っては全身全霊で拳を上げ共に歌い骨伝導してきた彼らの音を目と脳と全細胞に焼き付けていった。

これからずっとこのバンドと生きていける……。

そう思うだけで大学を中退しまっ暗闇だった未来に一筋の強烈な光の道しるべができた気がしていたんだ。

そんな最中、突然の活動休止のアナウンス。

その報を友人から電話で受けた瞬間、下半身が大きく震え膝から崩れ落ちなんとか手を付かなければセブンイレブンの駐車場のアスファルトに頭を強く打ち付けていたかもしれない。

当時、アルバイトで少しずつ両親へ中退してしまった大学の入学金を返済しながら生活していた。そんな両親も決して仲は良くなく典型的な内弁慶の父は職を転々としその上家では母を怒鳴り付けていた。そんな事情もあり現実的に実家は常に貧しく家族内での会話はほぼ無かった。
そんな暗く黒い実家から早く逃げ出したくていくつもアルバイトを掛け持ちして引っ越し費用を貯めつつELLEGARDENのCDとライブの渡航費用に全てをつぎ込んでいた。
 

それくらい自分にとってELLEGARDENはいわば命綱だったのかもしれない。

だからこそこの報は辛かった…。目の前の光が突然失われて涙すら流れない絶望に苛まれた。それから数ヶ月どうやって生きていけたのかはっきり覚えていない。ただその数ヶ月は食事と排泄時にもイヤホンを差してELLEGARDENを貪欲に聞いていた気がする。
 

でもそれからほどなくして細美さんはthe HIATUS/MONOEYESと2つのバンドを結成してくれた。

当時の自分には絶対に考えられなかっただろうから今となってはなんだけど「ELLEGARDENがあの時活動休止をしたからこの2バンドに出会えた」と今だったら言えるんだ。

それほどまでにこの10年間はこの2バンドに助けられた。もちろんELLEGARDENも視聴時間こそ減ったもののほぼ毎日CDを聞いて生き抜いてきた。

この間
最愛の祖父が亡くなり職を変えてはまた辞めてを繰り返す父の影響もありいつまでも財政が安定せずバブル時に組んだ多額の住宅ローンに母親は苦しみ毎月末になるとプライドはとうに捨て去りやつれてしまった小さな体とどんどん真っ白になってきているまた小さな頭を俺に下げ敬語で仕送りを頼んでくる。「すみませんがよろしくお願いします」と。…こんな親子の会話切なすぎるよな。そんな母を見て自分も胸を痛めながら決して容易ではない額の仕送りをずっと送金し続けてきた。

俺はその度に引っ越していた小さなアパートへの帰路の最中、車の中で大音量でELLEGARDENを流し、涙をこぼし大声で歌ってなんとかやり抜いてきた。俺の10年間はそんな繰り返しだったような気がする。

[人は前を向こうと思えばいつだってやり直せる、前を向けよ]
昔、知人に酒の席で愚痴をこぼした時にそう言われた。あぁこの人は苦労したことがないんだなと思った。それからは誰の助言も慰めも何一つ心に留まる事はなかった。だから俺はELLEGARDENの歌詞にすがった。その中でも虹の[なんとなくこれでいいと思った]とゆうフレーズにどれだけ救われてきた事か計り知れない。

周りの友人達が管理職になったり長期休暇で海外旅行に行ったり。その間も俺は仕送りの為に働いて働いて働きぬいてきた。その度にこのフレーズを聞いて腑に落ちない弱い自分を必死で説得してきたんだ。

2008年夏。ロック・イン・ジャパンで大トリを務めたELLEGARDENはアンコールで「金星」を演ってくれた。でも細美さんは[らしくねーよな]と言ってSurfrider Associationを最後に歌ってくれたんだ。…救われた…。あの時[金星]で終わっていたらあの場にいた数万人のその後の人生は少し変わっていたかもしれない俺も含めて。これが俺が10年前、最後に見たELLEGARDEN4人の姿だった。
 

あれから10年後。
2018年8月15日 俺はZOZOマリンスタジアムに居た。

今回のツアーファイナルのプラチナチケットに当選したんだ。今までthe HIATUS/MONOEYESの単独チケットはことごとく全て当たらず苦汁を飲んできた。それと並行して俺のプライベートは金と身内の死で完全に疲弊しきっていた。

でも今回のツアーチケットは当選できた。

当落メールを開いた瞬間
…あぁ不幸と幸福は地つづきだったんだと思えた。今まで何度か本当に死を考えた夜もあった。でもあのつらい日々も今日の日の為へと続く1本道だったんだと気づいたんだ。あの日初めて[Space Sonic]を聞いたあの日からずっと。
 

ゲストactのONE OK ROCKが溢れ出るELLEGARDENへの尊敬と愛を如実に現したとんでもない熱量のライブの恩恵もあり、会場内にいた全てのオーディエンスのテンションは尋常じゃないものがあった。あと少し…ほんの少しであの4人に会えるんだ…。

そして彼らは10年前の約束通り俺達の眼前に現れてくれたんだ。心の底から「生きてきて良かった…」と言葉が自然に溢れ知らぬ間に大粒の涙が両頬を流れ落ちていた。

もちろん1曲目は公約通りの
[Supernova]
心の臓が激しく鼓動し全身の毛穴が全開し血液が熱く熱く沸き潤った。すごい。初めて味わったこの感覚。

それから2度のアンコールも含めて計24曲の大ボリュームの秀逸なセットリスト。

本当はこの10年間を振り返ると一曲一曲に重い思いがあって全曲分話したくなるんだけどそんな事したらとても1万文字じゃ足りないんだ。
 

アンコール前の最後の曲は[虹]だった。
この瞬間がこの日の俺のダイジェスト。今までの記憶が一瞬で甦った、そう全て辛い記憶。

でも一つ一つの記憶が脳内で浄化されクリアになりそして[僕らはまた 今日を記憶に変えていける]この文字通り今この瞬間を生きる事が出来たんだ。

そして
何千回もあと一歩の所から救い上げてくれたあのフレーズを生で聞けた。また聞けたんだ。きっと隣に居た人は引いてたんだろうな。ぐしゃぐしゃになって笑ってるアラサーが居るんだからな。でも君には分からないだろう。俺のこの気持ちは。

でも
きっとこの会場にはそんな人ばかりだったんじゃないかな。
 

むかーしむかし俺の知人は
「前を向け」と言った。
でもあの時俺はずっと前を向いていたつもりだったしかけてほしい言葉はそんな言葉じゃなかったんだ。
 

でも細美さんは
ELLEGARDENは

「疲れたら立ち止まったっていいじゃねーか」

そんな人、そんなバンドなんだ。

俺は彼と話した事はない。でも分かるのは彼はきっと誰よりも弱い(弱かった)でもそれを乗り越えてきた人。

傷みを知る人間が一番強い。と何かのマンガで読んだ事あるけれどそんな人なんだろうなと思う。
 

ツアーファイナルの当選が決まった翌月。
 
 

俺には最愛の娘が生まれた。
 
 

すごいよね10年って。
あの時何にも持ってなかった俺は今、夫になり父になれた。

そう新生ELLEGARDENとうちの娘はタメなんですよ。
 

この繋がりを縁だと信じたい。
 

俺はこれから一生この子の光となり道しるべとなれたらいいなと思っている。

この10年ELLEGARDENが道を明るく照らし続けてくれたように。

そして今俺の一番の夢は娘を肩車してELLEGARDENのライブを一緒に見ること。

もちろん後ろの方でね。

これでまた俺は生きていける。誰かの為に生きる喜びを教えてくれた妻と娘に心からありがとう。

そしてあの日命を繋いでくれたELLEGARDENに最大級の賛辞を、そして海よりも深く透き通った感謝を。
 
 

これから俺の第三章の人生が幕を開けました。

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