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僕の物語と【誰か】の物語

ELLEGARDEN【THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018】

「チケットがご用意できました」
この文字を見たとき、正直悩んだ。
僕はELLEGARDENを詳しく知らない。言ってしまえば、にわかファンだった。
10年間待っていた【誰か】も沢山いる。【誰か】が抱えてる10年間という重さを理解しきれていない僕が行ってしまっても良いのだろうか。悩んだけれど行くことにしたのは、生粋のエルレファンの親友を連れてってあげたかったからだ。プレゼントのようなつもりだった。いろんな事情で観ることが出来ない【誰か】の思いを背負った覚悟で、予習に予習を重ねて8月15日、ZOZOマリンスタジアムに向かった。
蝉の鳴く夏らしい天気の日だった。朝7時だというのに物販は大行列、「譲ってください」の文字を掲げる人たち、SNSを開けば現地に行けない人。側から見たらただの夏の日に、どれだけ重みがあるのかをひしひしと感じる。
夕方になってからは涼しかった。スタジアムの真裏にある海の匂いが、より一層強くなった。その頃、スタジアムの中に入った。ステージの大きさ、楽しげな人たち、モニターに映るELLEGARDENの文字に緊張した。

夏の奇跡は予定よりも少し押して幕を開けた。
まず出てきたのはONE OK ROCK。凄まじかった。一曲、一曲、叩きつけるように放っていく。
モニターに映されたTakaの真っ直ぐで鋭い眼光は、スタジアムに居た3万7千人に訴えかけるようだった。俺らがエルレのOAだぞという自信、エルレが復活したという深い喜びがその瞳に見えた。
MCではエルレを聴きながらバンでツアーを回っていた話に、ワンオクもただのエルレファンの1人であることに親近感を感じてやまない。そして彼らがエルレと同じステージに立っているという現実に胸が高ぶった。Takaはステージを降りて客席で歌ったり、圧倒的なロングトーンを響かせたり、煽りに煽り立てて”完全感覚Dreamer”になだれ込んだりと敬愛するバンドへ、そのファンへ、ワンオクの実力を見せつける。その姿がめちゃくちゃかっこよかった。リスペクトと挑戦に溢れた、この上ないOAだった。

親友とワンオクがどれだけ凄かったか言い合っていると、それは突然訪れた。客電が落ちる。今までに聞いたことがないような、割れんばかりの歓声。両サイドのモニターには大きなELLEGARDENの文字。楽器の後ろにはドクロのマーク。
細美さんがステージに現れてまず”Supernova”を歌い始めたとき、自分の人生に何が起こっているのか分からなかった。エルレが目の前で演奏している。泣いてる人も居た。叫ぶ人もいた。じっと見つめる人もいた。みんなが待っていた人がそこに立ってる。
曲が始まる度にどこかしらで歓声が上がる。サビが来る度にぶつかり合う体。体に当たる液体。それが汗なのか涙なのか、自分のものなのか、【誰か】のものなのか、全く分からない。みんな子どもみたいな笑顔ではしゃいでいた。
CDで聴いてるときには思わなかったのにエルレを前にして聴いていると、帰りたい場所や大切な人が何故かちゃんと分かってくる。
いつの間にか見えなくなった景色や人物が瞬きの間に浮かんでくる。好きな人に花束を買って会いたくなるような優しい気持ち。そんな優しい気持ちになれるのはきっと楽曲がかっこいいからだけではない。細美さんやウブさん、高橋さん高田さんの人柄や優しさが演奏に滲み出ているからではないだろうか。
細美さんの思いやり、ウブさんの真面目な人柄、高橋さんの誠実そうなところ、高田さんのユーモアといったメンバーの良さが楽曲の中に溶け込んでるから、こんな不思議な感覚になるんだろうなと思った。
深く突き刺さって立ち尽くしてしまった”Middle Of Nowhere”、イントロが鳴った瞬間から頭が真っ白になった”Fire Cracker”、本当にプレゼントを貰ったような瞬間だった”サンタクロース”、日常に戻っても大丈夫なようにと背中を押された”虹”。どの曲も眩し過ぎて上手く切り取ることが出来ない。あえてDVD化しないのも、なんとなくわかる気がした。
細美さんはこう話していた。
「ワンオクとの短い旅は確かに最高だったけど、これは俺たちの物語じゃなくてお前たちの物語でもあるんだろ?それをDVDって形でお前らの10年を上書きする訳にはいかないでしょ。お前らにはお前らの10年があって、その最後に今日があるんだよ。」
一語一句合ってるかは、ハッキリ覚えていないけど細美さんのこの言葉に優しさが見えてグッときた。
DVDにしなければこの復活劇も、実際にここにいる人、来れなかった人、入れなかった人、今日初めて知った人、そういった【誰か】の物語の1ページになっていく。
この日、僕の物語の新しい1ページには、エルレは金星のようだったと書き足した。
夕方と明け方に明るく見える星。金星を見つけると嬉しくなって、大事な人に教えたくなる。エルレの演奏を聴いて感じたことが、金星を見つけたときと同じだと気が付いた。忘れてたものを思い出したときみたいにハッとして嬉しかった。
一曲、また一曲と、あっという間に時間が過ぎ去っていく。時間は残酷でどれだけ願ったって時は止まらない。始まれば終わる、こんなにも簡単なことに気が付いたのは、最後の曲が歌い終わったときだった。メンバーがステージから去っていくのと同時に、花火が上がった。上がっては消える花火と、この日のライブが重なった。頭の中には”金星”のフレーズがぐるぐると回っている。どんなに終わってほしくない夜だって必ず終わっていくんだ。

盆が過ぎて秋みたいな穏やかな日が続いている。
今ではもう、夏の奇跡のようだったライブは記憶のなかにしかない。
終演後のステージの写真も綺麗だった花火の動画も撮らなかった。
大丈夫だと思った。形にしなくてもちゃんと思い出せる気がした。何も撮らなかったからこそ、この日の何もかもが記憶のなかで美しくなっていく。
迷ったり悩んだりした日は、またこの夜を思い出す。夜空に金星を探すように。
この夜を思い出して、大切なものを見つめなおして、また朝を迎える。そんなことを繰り返してれば、まだまだ生きていける気がした。
ツアーファイナルだった8月15日、沢山の人がエルレのことを考えたと思う。その沢山の【誰か】にとってのエルレと、僕にとってのエルレはきっと違う。
いつの日か、【誰か】と一緒に僕の物語と【誰か】の物語を、酒でも酌み交わしながら語り合えたら良いなと思う。
その先にはきっとエルレの活躍が待っているはずだから。

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