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あいみょんはエモい

その音楽は時代を超える

「反則だ」その声を初めて聴いた時、素直にそう感じた。ブラックコーヒーを飲んだ後に残る苦み、渋みのように彼女の声は耳に、頭に残った。あいみょん。その名前を知ったきっかけが何だったかはよく覚えていない。ただ、彼女の歌声はそれ程鮮烈に僕の耳に残ったのだ。新しいのに懐かしいその歌声は弱冠23歳の女性が出しているとは思えなかった。初めて彼女のライブを見たのがライブサーキットだったが、体を揺らす、手を挙げることもなく、ただただ彼女の音楽に聞き入った。

最近音楽を表現、総評しようとする時に「エモい」という言葉をよく耳にするようになった。そもそもエモいと辞書で調べると「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の動きなどを意味する日本語の形容詞」と出てくるが、感情を表現するはずの形容詞なのにも関わらず、その意味は明確とは言えない。そう言いながらライブの帰り道は「エモかった…」なんて思いながら、そのアーティストの曲を聴きながら帰ることもしばしばある。
あいみょんはエモい。僕は彼女の曲を聴くと嬉しい、悲しい、楽しい、寂しいでもなく、エモい気持ちになる。彼女の音楽は聴く人の感情を動かすということになるのだが、その理由の一つに言葉にあると考えている。
例えば“貴方解剖純愛歌 ~死ね~“は過激な歌詞で注目を浴びたが、過激ということはそれだけ素直に表現したということになる。周囲、世間の目が気になって何かとオブラートに包むことが増えた中で自分の感情をここまで素直に表現することは難しい。

《僕の心臓のBPMは 190になったぞ 君は気づくのかい? なぜ今笑うんだい? 嘘みたいに泳ぐ目》(君はロックを聴かない)

そのように素直に表現することもあれば、心臓の鼓動をBPMと表現もする。なんてエモいんだろう。この“君はロックを聴かない“は僕の好きな曲の一つでなんとか声を絞り出してカラオケもよく歌う。あいみょんは男性目線の曲が多く、聴く、歌うと女性アーティストの中でも手を出しやすい。“君はロックを聴かない“は先に挙げた歌詞が浮かび、それから制作に取り掛かったというインタビューを見たことがある。このキャッチーなフレーズと独特の比喩表現、その言葉は彼女からエモさを感じる一つの要因である。これに加えて彼女がエモい理由の一つとして距離感があると考えている。

《少しでも僕に近づいてほしくて》《あと少し僕に近づいてほしくて》《恋人のように寄り添ってほしくて》(君はロックを聴かない)

この曲が終盤に差し掛かるにつれて少しずつ距離が縮まっていくのがたまらなく良い。しかもこれはロックを聴かない君への願望であり、そうしたいけどできない男性の心理を絶妙についている。届きそうで届かないその感情は最高にエモいのだ。これが「反則だ」と感じた彼女の新しいのに懐かしい歌声で届けられる。声、言葉、距離感が三位一体となることであいみょんの音楽は僕らの感情に強く訴えかけ、揺さぶってエモい気持ちにさせるのだろう。
“マリーゴールド“が似合う夏も終盤を迎え、まだ感じることはないが、少しずつだが秋が近づいてきている。涼しいが寒いに変わって、クローゼットから引っ張り出したカーディガンを羽織る。どこか人恋しく、寂しさを感じる秋にはきっとあいみょんの音楽が染みる。今は彼女の音楽を聴いてエモいと感じているけど、いつか「あいみょん」が歌詞の一部で用いられてエモいと感じる。そんな時代が来るかもしれない。

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