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約束

2018.8.8 ELLEGARDEN 新木場Studio Coast

2008年9月7日、ELLEGARDEN活動休止前最後のライブが新木場スタジオコーストで行われた。当時大学生だった自分は大阪に住んでいたが、大阪でのツアーのチケットは取れず、その最後の姿を見ることも、活動が止まる実感もないままその日を迎えた。活動休止をアナウンスし、メンバーそれぞれの個人活動のリンクが貼られたホームページを見た時ようやく、「本当に活動休止なんだな」と胸に穴の空いたような寂しさがやってきた。人づてにチケット希望のボードを持った人で新木場の駅から会場までの道が埋め尽くされてたという話を聞いたのは、それからずっと後の話だ。

2018年8月8日、あの日から約10年。この日が遂にやって来た。

先攻はONE OK ROCK。

入場のSEとともに、Toru、Tomoya、Ryotaが各々のポジションにつく。そしてTakaがステージに現れるや否や叫ぶ。

Taka「おまえらこの日をずーっと待ってたんだろ!!!おれたちも同じだよ!!!今日はみんなにとって最高の一日になってます。まずはONE OK ROCKで体温めてください。」

入場のSEも鳴り止まぬ中、Takaの渾身の言葉が会場に轟く。エルレを待ったファンに対し、同じようにエルレを待ち続けた1人として向き合うTakaの真っ直ぐな言葉にいきなり胸ぐらを掴まれる。

オープニングナンバーは”Taking Off”。今では幾多の大会場を次々とソールドアウトさせ、日本のみならず海外でも圧倒的なスケールのライブを魅せるワンオクが、今夜はエルレのためにこのライブハウスに帰ってきた。

Taka「ELLEGARDEN復活おめでとうございます!おこがましくも、ファンの一部として、細美くんに会った時『エルレいつ復活するんですか?』って聞き続けて、そしてようやく、色んな問題を乗り越えてこの日を迎えられました。でもこの日を導いたのは、みなさん一人一人がいたからだと思います。本当にありがとうございます。ELLEGARDENのことを話し始めたら5時間ぐらい喋っちゃうから笑、曲やります。」

“The Beginning”、”Clock Strikes”と近年の代表曲が惜しげもなく披露される。現在進行形の本気のワンオクのライブだ。アリーナやスタジアムクラスの射程を持つ楽曲達に、新木場スタジオコーストがとても狭く感じられる。

Taka「はじめましてONE OK ROCKと言います。ELLEGARDENが10年前この場所で活動を休止した当時、僕らはバンド結成3年目。エルレの背中を追って、エルレを聴いて育って来た僕たちが今の地位を築き上げて、10年後同じステージに立てる喜びは計り知れません。」

“Take what you want”の前奏に乗せTakaが語る。エルレのことを話すTakaは本当に純粋な1人のキッズだった。この日を同じように待ったファンの1人として、驕らず、謙虚に、丁寧に言葉を選びながら、全霊のパフォーマンスでこの日を祝福していた。”Take what you want”でのロングシャウトはその場に立ち尽くしてしまうほど圧巻で、自然と涙が出てくるような魂の込もった叫びだった。

Taka「地球って惑星がこの宇宙に存在すること自体が奇跡と言ってもいいのに、その中でも今日ここにきてる皆さんは、奇跡を超えた何かを持ってるんだと思います。台風なのに会場に入れなくても外に来てる人たちにも届くように、バンドだけじゃなく、みなさんも想いを出し尽くしていきましょう。」

後半戦へと向かうライブのボルテージを更に上げる”Mighty Long Fall”。モッシュはより激化し、エルレの昔のTシャツを着たファンも少しずつ巻き込み、会場の熱はラストスパートへ向け高まっていく。

続くのは “We are”。会場に来ていたファンのほとんどはおそらくエルレのファンで、自分がライブ映像で見ていたような会場中を震わせるような大合唱は起きていなかった。それでも客席にマイクを向け続け、ファンの声に耳をすますTakaの眼差しが、バンドの揺るがない信念を感じさせた。

Taka「僕たちはこの曲のおかげで細美武士という人に出会えました!最後にその曲をやります。」

最後の曲は”完全感覚Dreamer”。この曲ばかりはエルレファンも次々と前線に突っ込んで行き、モッシュやダイブが次々と発生する。思えば8年前、初めてONE OK ROCKのライブを見たのは今はもうなくなってしまったZepp Osakaだった。”This is my own judgment” TOUR。自分がワンオクのライブに行くきっかけになったのもこの曲だった。そしてその場所は、自分が初めてエルレを見たライブハウスでもあった。そこから8年、この曲とともに階段を駆け上がってきたワンオクをもう一度ライブハウスで、しかもエルレの活動再開ツアーで見る日が来るなんて。Takaはステージを縦横無尽に駆け回り、Tomoyaの「新木場ぁぁぁ!!!」という叫びはライブハウスに響き渡る。

海外ツアーを精力的に周り、国内ではドームツアーを即完させるほど文字通り日本のトップバンドへと登りつめたONE OK ROCKがこの日このライブハウスで見せたのは、ゲストバンドとしての清々しいほどの潔さと、この日を待ち望んだファンへの敬意、そしてELLEGARDENというバンドへの深い、深い愛情だった。

ワンオクの文句無しのパフォーマンスに心打たれたのも束の間、頭はすぐに目前に迫った現実を認識し始めた。

「もうすぐELLEGARDENが観れる。」

何百回と妄想した、あの瞬間が、目と鼻の先に近づく。暗転する。きた!!SEは10年前と同じ。まだ夢のようで実感がわかない。客席の「オイ!オイ!」というコールに合わせるように、バックドロップが迫り上がってくる。何度もライブDVDで見た、10年前に新木場スタジオコーストに掲げられたものと同じ、「ELLEGARDEN」と刻まれたバックドロップだ。夢でも幻でもない。音が鳴り止んだ。少しの間が空く。

1曲目は約束の曲”Supernova”。2014年9月7日に更新された細美のブログに書かれた言葉を信じ、この日を、どれだけの人が待っただろうか

アルペジオから入るのか、それともいきなりサビの歌い出しからか。しかしそんな何百回と重ねた妄想シュミレーションを裏切るように、ベストアルバムと同じいきなりイントロに突入するアレンジでライブはスタートした。完全な不意打ち。「えっ?」。混乱する頭。でもすぐに、身体と心に染み付いたギターとリズムに自然と手足が動き始める。突き上がる拳。細美のボーカルに自分の声を重ねる。夢じゃないんだな。気づけば涙が溢れてくる。頭で考えるよりも先に、モッシュピットへと身体は走り出していた。

2曲目は”No.13″。もうどの曲が来たって、待ってましただけど、この曲は殊更に特別だ。この10年間、毎年9月9日はこの曲を聴いて、彼らの帰りを待った。同じようにこの曲を聴いて待っている人たちがいることに、心が和らいだ。そして今、目の前にはその曲を演奏する4人がいる。さっきから泣きっぱなしだ。でも悲しい涙じゃない。弾けるような喜びそのままに、笑顔で飛び跳ねる。

続く”Pizza Man”では溜めに溜めたこの10年の気持ちを爆発させるように「Pepperoni Quattro!!!!!」のシンガロングに込めた。

たった3曲で早くも信じられない熱量に達するライブに我を忘れて完全にハイになっていた。

細美「楽しすぎてわけわかんなくなる前に言わせて。まずは10年間待たせてしまって本当に申し訳ない。そして足元の悪い中来てくれてありがとう。ワンオクのメンバーとスタッフの皆さんも本当にありがとう。もうなんて言えばいいかわかんないから、今日は全てを受け入れる。」

細美「なんだろーな。この気持ちをどういう風に言えばいいかわかんないんだよ。明日ぐらいになってやっとどういうことかわかってくるのかな。どうよ?(他のメンバーを見ながら)」
雄一「難しい質問ですね。こんな序盤に振られると思ってなかった。ちょっと前半でパニクってて。」
高橋「おれもパニクってる。」
生形「思うことは色々あるけど、本当に今日は来てくれてありがとう。今はそれだけ。」
細美「こういう時感動的なことでも言えたらいいと思って、2年前から今日何を話そうかってずっと考えてたんだけど、なーんにも思いつかなかった。なぜならおれたちはただのバンドだから。パーっと派手にやるだけ。ただ今日が少し特別なのは、普通だったら半年とか3ヶ月とか頑張れば、またあの場所に帰れるっていうものが10年待たせてしまったってこと。今日はその10年間我慢したオナニーのように溜まりに溜まって感度ビンビンになった……はっはっは、結局これかー笑。(高田の方を見て)大丈夫かな?こんなんで?(そして頷く高田)。」

10年という感慨を感じさせながらも、そこに流れるのは自然体の4人の空気だ。あくまでバンド、あくまでライブ。4人が言葉を交わしあう光景をもう一度この目で見れたことが嬉しい。

そしてライブは次のセクションへ。始まりは”Fire Cracker”。獰猛なギターリフ、跳ね上がるような曲展開と爆発力に、頭のネジは更に飛び散っていく。

Now I’ve got this far anyway
結局こんなところまで来ちまった
And I’ve finally turned to my last page
ようやく最後のページに辿りついたよ
These countless memories still holding me back
無数の思い出がまだ支えてくれてる
Am I sick
いかれてるかな
Not anymore
もう大丈夫
How could I be tonight
今夜に限っては大丈夫だよ

We can be as one as well
僕らは一つになれるから
 

「エルレの活動再開ライブを見るまでは死なない」。半分は冗談、でも半分は本気でそんなことを考えていた。エルレの曲に支えられながら、そうやってここまでの日々を乗り越えてきた。12年前にリリースされたこの曲は、こんな夜のためにあったんじゃないか。今日何回泣かされるんだチクショウ。

“Space Sonic”、”高架線”とアルバム『ELEVEN FIRE CRACKERS』の楽曲が続く。シリアスでウェットに富んだ曲の中にも、やさしさや切なさが顔を覗かせる。
“高架線”の「思うよりあなたは ずっと強いからね」、この言葉にも何度も勇気をもらった。

ファン「結婚して子どもができたよ!」
MCに入りフロアから飛ぶ声にも、月日を感じさせる。

細美「10年間色々あったよな。おれたちも色々あったよ。ただ一つ言えることは、この色々あった10年間があったから、強くなれました。色々あったこの10年間、話し出したらTakaが言ってたように何時間も話せるから、おれたちの10年間はこの曲に込めるから、お前らの色々あった10年間も思い出しながら聴いてください。過去を今に、現在進行形に、時を戻そうぜ。」

そうして演奏されたのは”Missing”、「仲間の歌」とリリース当時細美は語っていた。一緒に歌うように客席を煽る細美。最後のサビではスタンドマイクを客席に向け、ファンの歌に声を重ねる。

重なって 少し楽になって
見つかっては ここに逃げ込んで
笑ったこと 思い出して

細美はサビの「重なって 少し楽になって」が1番も2番もどうしても出て来ず歌えなかった。でも細美が歌えなくてもファンが歌える。これまでだってそうやってきた。

“スターフィッシュ”、”The Autumn Song”、”風の日”と、エルレの曲でも特に人気の高い曲たちが次々と披露される。フロアは嵐のよう。止まらない合唱。日本語詞も英語詞も関係ない。10年以上前、学校からの帰り道、カラオケボックス、自分の部屋、いつも口ずさんでいた曲たちの輝きは全く色褪せない。

細美「濃いいオールドスクールなファンに向けて、心を込めてこの曲をやります。」

“Middle Of Nowhere”。間奏の生形のギターソロはなく、音源に忠実なアレンジとなっていたが、より伸びやかに、円熟味を増した細美のボーカルが描くこの曲の孤独と優しさが深く、深く突き刺さる。

細美「ここMCいらなかったな笑。直前に色々変更になって申し訳ない。でもおれたち本当にここに来るファンの人たちだけのことを考えたんだよ。おれたちは相変わらず完璧じゃないし、バカばっかだけど、バカなりに本当に考えたんだよ。グチグチ言う奴らもいるかもしれないけど、これがおれたちの精一杯です。」

今回のエルレの活動再開はライブとは別のところで様々な物議を醸した。チケットもグッズも、全ての立場からの意見に応えられる完璧な正解はない。それでも「ファンのことを考えてくれている」、その気持ちが嬉しかった。

細美「まだいける?あと半分ぐらいあるけど。」

暴風雨のような前半から更なる暴風雨の後半戦へ。カラッとした夏を感じさせる”Surfrider Association”、センチメンタルなメロディと歌詞が胸を締め付ける”Marry Me”と、休む暇が全くない。”Lonesome”のアウトロでは生形のギターソロが唸る。この曲はベストアルバムにも入っていない隠れた名曲だと思う。この曲も聴けるなんて。

そして”金星”へ。

最後に笑うのは正直な奴だけだ
出し抜いて 立ち回って
手に入れたものはみんな
すぐに消えた

上手くいかないことや傷つき、傷つけてしまうことも沢山ある。挫けそうな時、迷いそうな時も何度だって訪れる。そんな時はいつもこの歌詞を思い出した。自分を良い人間だなんて思ったことはない。それでも、自分に恥じないように、自分に正直に生きていたいと思った。そんな風に生きたエルレを思い出しながら、自分もそう在りたいと願ったこの10年。10年前よりはちょっとだけ、マシな人間になれたと思う。

細美「色んな物語があると思う。小学生の時、両親が車の中で聞いてました、活動休止してから知りましたって人。おれたちがここでバッチバチにライブやってた頃、自分みたいなやつらがいるんだって思ってたら、ある日突然そのバンドがいなくなっちまって、四苦八苦しながら毎日を過ごして気づいたら今日を迎えてたやつら。久しぶりにバンドやろうよって声かけて集まった、地元の連れのおっさん4人とかね笑。一人一人色んな物語があると思う。だから一言ではまとめれないと思うんだけど、おれにとってはね、諦めないでよかったなって。苦しくて、辛くて、自分が壊れるぐらいのドン底があったから、人生が良くなったと、そう言える日が来てよかったです。」

生形「7月下旬からリハーサルを始めて、いい意味で感動がなかったんだよ。こんな感じなんだって。でも今日ライブしてて、(少し間を空けて)…やっぱライブなんだよ。」
高橋「おれはもう二度とこの4人でやれないと思ってたの。確証はなかったしわかんなかったけどね。でも一方で心の中でやれるとも思ってて、その日のためにドラム上手くなんないとなって、体力落とさないようにしないとなって、それがあったからここまでやってこれた。」
高田「ワンオクが『おれたちちょっと温めてくるだけなんで』みたいな感じで最初出てったらバッチバチのライブやってて。危うく騙されるとこだった。あと2公演仙台と千葉、油断しないでやりたいと思います。」

4人の最後のMCを終えライブも残すところあとわずか。

ここにきて”Red Hot”、”Salamander”と火に油を注ぐような鉄板曲を容赦なく畳み掛けてくる。理性もおぼろげに、コントロールを忘れ全力で楽しんだせいか、少し息が切れ始める。10年分歳もとったからな。息が苦しい。でも楽しい。本当に楽しい。フロアはずっとカオスだ。でもどこもかしこも、笑顔しかない。ステージの4人も、ずっと楽しそうに笑顔でプレイしている。そうだ。自分が好きなったELLEGARDENってバンドは、世界で一番幸せそうにライブをするバンドだった。

そして細美が人差し指を上に向ける。”ジターバグ”。15年前、この曲で自分はエルレと出会った。この曲のおかげで自分の人生は変わった。この曲がなければ今の自分はない。この15年間、この曲と一緒に生きてきた。何度となく救われた。曲が始まった瞬間、涙が出た。悲しいわけじゃない。ただ涙が止まらなかった。こんな気持ちになったのは初めてだ。

遠回りする度に見えてきたこともあって
早く着くことが全てと僕には思えなかった
間違ったことがいつか君を救うから
数え切れないほど無くしてまた拾い集めりゃいいさ

10年前にELLEGARDENは活動を休止した。でも活動休止があったから、それぞれの新しい旅が始まった。自分にも沢山の出会いがあり、見たことのない景色を見れた。何が正しかったかは誰にもわからない。エルレがあのまま続いていた未来。エルレに出会ってない未来。それぞれの道に幸せと苦難があったと思う。その先の答えを知ることはできないけれど、でも今、この場所に4人が集まり、また音を鳴らしている。自分も15年前に彼らに出会った時と同じ気持ちで、この場所に立てている。これまでの自分の人生の選択、こういう人間になったこと。良い人間になれてるかはわからない。でも遠回りしたことも間違ったことも、全てがこの場所に繋がっていた。そう思うと、報われた気がした。自分のことを愛せる気がした。生きててよかったと、心から思った。

細美「最後はこの曲だと思うんだよな」

本編の最後は”虹”。

積み重ねた 思い出とか
音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける
間違いとか すれ違いが
僕らを切り離したって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける

「自分が壊れるぐらいのドン底があったから、人生が良くなったと、そう言える日が来てよかった。」細美は言っていた。この曲が全てを表していた。

夢のような時間が終わり、メンバー4人はステージを後にする。
まだあの曲をやっていない。客席は当然のようにアンコールを求める。再び登場する4人。

細美「7年前に東日本大震災があって、その1ヶ月後に初めて弾き語りをやることになって、メンバーにこの曲やっていいかなって聞いたんだよ。本当に活動休止してから久しぶりに連絡とって。な?(生形を見ながら)。そしたらやってくれ、聴きたいやつがいるならなんなら他の曲もやってくれって言ってくれて。良い奴らなんだよ。」

アンコールの1曲目は”Make A Wish”。細美と生形のギターから静かに始まる。エルレが活動を休止した後も、多くの人の心を支え続けた1曲。細美の歌と客席の歌が一つになる。

細美「泣いてんじゃねぇよ!笑え!笑」

泣いている客席を見て細美が笑顔で喝を入れる。そして大団円の大サビへ。荒れ狂う人波の中、いてもたってもいられず最前付近へと向かう。この日一番近い距離で4人を見る。自分が大好きで、憧れてやまなかったELLEGARDENがそこにいた。今日何度目だろう。また目頭が熱くなる。

2曲目は”月”。この曲もまさかやってくれるとは思わなかった。2番の途中でお決まりのあのコーナーへ。

細美「無理しないでいいからね。出来る範囲でいいから。」

客席が少しずつ後ろに下がり、ゆっくりと全員がしゃがんでいく。しゃがんでしゃがんで、2番のサビで全員でジャンプだ。

細美「懐かしいなーこの光景」

ライブハウスの中で肩を寄せ合って小さくなった目の前のファンを見て、細美は笑った。

フロアにしゃがんでいた時、急に自分の目の前の男性がくるっと振り返る。汗まみれで、でも満面の笑みで頷きかけてくる。辺りを見渡してみる。みんな髪も化粧もボロボロで、Tシャツは汗でべっとりと肌にへばりついてる。熱気でサウナの中にいるみたいだ。でもその汗の一粒一粒がライトに照らされ、瞳に潤んだ涙が光を反射して、本当にキラキラと輝いていた。初めて行ったエルレのライブを思い出した。人がひしめき合って、頭の上を誰かが転がって、むさ苦しく息苦しい。なのに楽しくて、笑顔になれて、扉の外では味わえないような興奮と感動がそこにはあった。ステージに目をやる。そこには自分たちと同じようにキラキラと輝いた、ヒーローがいた。2サビでみんなで一斉にジャンプをする。バカみたいだ。でもなんでこんなに楽しいんだろう。この時間が終わって欲しくなかった。

アンコールを終えても、ダブルアンコールを待ちその場を離れない客席。こっちはまだまだ終わらせる気はない。そう思ってた。再び出てきた4人。

細美「この曲が終わったらもうどんなアンコールがあっても絶対に出てこないからな。出てこないっていったら出てこないからな。」

細美「おれたちは約束を守るバンドなんだよ」

10年前、「これが最後じゃないから」と言った細美の言葉を信じた。その約束をポケットにいれ、今日まで生きてきた。そう、ELLEGARDENは約束を守るバンドなんだ。次が本当に最後の曲。本当のラスト、”BBQ Riot Song”へ。最後の最後まで休ませてくれない。ヘトヘトな身体をよそに、気持ちは身体の中で暴れ回っている。

時間はあっという間に過ぎ去っていく。でもこの先ずっと、この日のことを思い出すんだろう。また会える日を信じて。

細美「仙台やマリンスタジアムに来る奴らのためにセットリストはネットに流さないで。まあそう言ってもやるやつはいるんだろうけど。もしネットに上がり始めたらそしたら適当に嘘のセットリスト流しておいて。”My Bloody Holiday”やったとか、1曲目は”おやすみ”でしたとか笑。」

去り際、客席にそう残し去っていった。最後まで目の前のファンだけじゃない。ファンみんなのことを、このバンドは想ってくれている。

ONE OK ROCKを含め約2時間40分。夢のような時間は幕を閉じた。

もっとボロボロになるまで泣くかと思った。いや、実際にはボロボロ泣いていたんだけど、でもそれ以上に楽しかった。懐かしいなんて1曲も思わなかった。この10年、いつも自分の側にいてくれた曲たち。10年前の約束。時に重荷になっていたかもしれない。でも自分はその約束があったから、自分を捨てずに生きてこられた。これまで守れなかった約束も守られなかった約束も、いくつも経験してきた。信じる者が必ず救われるわけじゃない。でも果たされる約束があることを知ってしまった。自分の人生にこんな日が来るなんて思わなかった。細美はこの気持ちを「どう言葉にしていいかわからない。」と言っていた。でも自分ならこう言う。「生きててよかった」と。

ELLEGARDEN。
本当にありがとう。おかえりなさい。
そして願わくば、信じてきた人たちみんなが笑顔になれますように。

でもきっと大丈夫。だってELLEGARDENは、約束を守るバンドだから。

「全員笑顔にすっかんな:-)」

その言葉はまだ、そのポケットに残っている。

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