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ヒトリエと日常と非日常。

望むことを忘れた自分に届いた音。

「音楽」とは読んで字のごとく「音」を「楽しむ」事である。
しかし生活に追われ生きていくその中で、無意識に、時には意識的に、心の支えにし、救いあげられ、背中を押してくれるものが「音楽」になっていった私に「音楽」の「楽しさ」を教えてくれたバンドがある。
ヒトリエだ。
彼らのライブ動画を見て、本能的に「このバンドのライブに行かなければならない」と思った。
使命感のような、とても強い気持ちだった。
 
 

ワンマンツアー最終日のチケットを取り、約3ヶ月後のその日に思いを馳せる中、私のTwitterのTLには当時開催されていたスリーマンライブの感想が並んでいた。
とても楽しそうだ。
自宅から行ける距離にある会場でのライブが一週間後にあり、チケットもまだ残っているという。
「行きたい・・・。」「でも・・・。」この問答を何度繰り返しただろうか。
すぐに行動に移せないのには理由があった。
二人の子どもがいる主婦の私には、ライブに行くためにクリアしなければならない問題があるのだ。
会社員である夫が帰宅するのは夜になる。
つまりそれまでの時間、実母に家の事を頼まなければならなかった。

出産後、二度程ライブに行ったことはあったが、その時は数ヶ月前には予定を伝えて、お互い無理のないように慎重に行動し、全ての環境を整えてから出かけていた。
「行ってくるね、じゃあよろしく。」
という訳にはいかないのだ。
しかし今回行こうとしているライブまで、もう一週間を切っている。
突然頼んだら迷惑になるかもしれない。
一日悩み、その日の夜遅く自分の気持ちを告げた。
意外にもあっさりとOKが出た。
やった!これでライブに行くことが出来る!

しかし、昂る気持ちの中で気づいてしまった。
自分はいつの間にか、一歩踏み出すことを諦め、自ら音に触れる機会を潰してきのではないかという事に。
諦める理由に、どうにもならないものとして育児や金銭的な問題もあったが、それでも、自ら動いていれば少しは可能性があったかもしれないのだ。
沢山の可能性に目を瞑ってきた私は、ここで目が覚めた。
自分で動かなければ何も始まらない。手に入らない。
内なる思いに目を瞑らざるを得ないくらい一人で背負ってきたものを、少しずつ降ろしていく作業はこの時から始まり、今もまだ続いている。

甘え下手な人間が、迷惑をかける事と頼ることの違いを、生まれて初めて知った瞬間であった。

結婚してからは「妻」として、出産後は「母」として生きてきた。
何となく、一日家を空ける事を悪い事のように思っていたし、夜遅くに出歩くのも駄目だと思っていた。
でも、それらは自分が勝手に決めつけていた事だった。
「妻」「母」と言う肩書きの内側にいる「私」は、どう生きていきたいのか、どういう人間になりたいのか、何をしたいのか、何が出来るのか。
まるで思春期を迎えた子どものように「私」という一人の人間と向き合う時間が増えていった。
 
 

こうして、必ず行かなければならないと思ったヒトリエのライブに、初めて行く日が来た。
ワンマンではなく、スリーマンだ。
ヒトリエと交流のある2バンドの演奏、パフォーマンスを堪能した後、ようやく彼らと対面した。
久しぶりのライブハウス。
前の人の頭越し、確かに4人がそこにいることを確認した。
音を聴いたら嬉しくて感動で泣いてしまうと思っていた。
しかし、涙は一粒も零れず、ただただ楽しい時間が過ぎていった。

ヒトリエはVo・wowakaの情熱的な歌声とギター、G・シノダの酔いしれるような音とメロディ、B・イガラシの自由自在に動きながらも楽曲を支える力強さ、Dr・ゆーまおの正確で繊細なリズムで構成されている。
個々の演奏技術が合わさり、音の圧力を感じられるバンドだ。
そんな四人の音を体感し、僅かに見える動く姿を目に焼き付けた。
まるで夢のようにフワフワした気持ちになって、楽しさを噛み締めた。
ライブが終わると、もっともっと楽しい事がしたくなった。
楽しんでもいいんだよと、自分を肯定出来た。
 
 

ただ楽しむための音に、意味を見付けようとする。
それには良い面も悪い面もあると思う。
意味をきっかけに音を聴き始めるのは、私自身もよく体験してきた事だ。
約二年、ヒトリエの音と共に歩み、自分にとって意味のある楽曲も出来た。
それでも、初めて彼らの音に触れた時のあの衝動を、いつまでも忘れずにいたい。

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