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センチメンタルになっちまった夜、優しく揺さぶる紛れもなく今

初恋のエレファントカシマシ 思い出させてくれたフジファブリック

16歳の時に私は、エレファントカシマシに恋をした。音楽に恋をしたのは初めてだった。
「ガストロンジャー」からの「孤独な太陽」のギャップに虜になった。
夢中になって過去の曲を聴きあさり、新曲が発表されればCDの発売が待ち遠しくなり。
大人になって初めてライブに行った時には、感動で涙が止まらなかった。
こんなにカッコいいおっさん達がいるのかと。

そして今年の29歳の夏。
なんとなく日常を送ることが多くなった。もちろん心から楽しい日も沢山ある。
だが、一年が終わりまた一年が始まる。
そんな当たり前のことを繰り返すだけの日々に、どこか虚しさがあった。
そんな私の耳にCMソングとして流れてきたのが、フジファブリックの「若者のすべて」だ。
学生時代の切ない気持ちを思い出させてくれたこの曲が、私の心に住み着いた。
あぁ、この人達の曲をもっともっと知りたいと思った。

こんな衝動に駆られたのはおよそ14年ぶりだ。
フジファブリックに惚れた私はこの約2ヶ月の間、彼らの音楽をひたすら聴いていた。
もっと早く彼らに興味を持っていればよかったと後悔した。こんなにも素敵な曲が沢山あるのかと。
「茜色の夕日」「赤黄色の金木犀」「タイムマシン」「会いに」「ECHO」「夢みるルーザー」「手紙」など、好きになった曲を挙げるとキリがない。
 

初恋のエレファントカシマシと、そのトキメキを思い出させてくれたフジファブリック。
同じロックバンドながら、対比すべき点がいくつかある。

エレファントカシマシが漢くさい感情とパワーを爆発させるバンドとするならば、
フジファブリックは緻密さとポップさを兼ね備え魅了させるバンドと言えるだろう。

エレファントカシマシはメンバー全員が50歳を超え、2018年にデビュー30周年を迎えた。
フジファブリックは皆30代と年齢が若く、2019年で15周年を迎える。
キャリアで言えばおよそ倍の違いがある。

エレファントカシマシはデビュー前にベースの高緑成治が加入以降、メンバーに変化はない。
フジファブリックは何度かメンバー編成が変わり、2009年にはボーカル志村正彦がこの世を旅立った。

演奏面でも違いが見られる。

エレファントカシマシのギター石森敏行・ベース高緑成治・ドラム冨永義之は、宮本浩次の歌声が最も輝くような演奏をする。
宮本浩次が気持ちよく歌えることが自分達の役割だと言い切る彼らの姿は、静かに燃える炎のように音に熱をもたらす。

それに対し、フジファブリックのキーボード金澤ダイスケ・ベース加藤慎一は、楽曲の良さを最大限に引き出す演奏をする。
それぞれの技術面はもちろんのこと、作詞作曲もこなす彼らの表現力は多彩である。
後ろから支えるというよりも、横に並んで音楽に華を添える姿が私の心を躍らせてくれる。

これだけの違いがあり、全く毛色が異なるバンドなのに、どこか似たものを感じることがある。
それは両者の音楽に対する情熱や真摯に向き合う姿勢が、聴く者の胸を熱くさせるからなのだろう。
 

宮本浩次の力強く説得力のあるパワフルな歌声が、
志村正彦の憂いを帯びそれでいて芯のある繊細な歌声が、
山内総一郎の全てを受け入れ包み込む情感溢れる歌声が、
私の心の琴線に触れる。

それぞれが紡ぎ出す歌詞にも個性があるから面白い。
 

宮本浩次は時に物悲しく時に猛々しく、なんでもいいから毎日歩いていこうぜ!といつも背中を押してくれる。
自分の不甲斐なさが時々嫌になる、それでも俺はヒーローなんだと素直な気持ちを歌詞にぶつけてくるから、そんな彼に負けまいと自然と心が奮い立つ。
宮本浩次のまっすぐ過ぎる生き様が歌詞に魂を宿し、酸いも甘いも噛み分けた彼の人生がそれに表情を与える。
不器用なのか器用なのか分からない、そんな彼の人間くささが歌詞にも表れていて愛おしくなる。
だからこそ大切に曲を聴きたくなるのだ。
 

志村正彦は自身の感性を抑えることのない、機知に富んだ歌詞が特徴的だ。
「陽炎」では後悔や失ったものに対する胸の痛みを、彼の幼少期を覗かせる描写で。
「虹」では晴れた空のように弾む心を、サンダーバードに乗ってオゾンの穴を通り抜けたいと表現している。

愛しい人と離れる悲しさを叙情的に表したかと思えば、

『どうにかなってしまうかもしれない
そうなってしまうかもしれない
ものかもしれない』
(フジファブリック「笑ってサヨナラ」より)

と、突然言葉遊びを始めたりもする。
不思議なもので、これが逆にリアルな感覚として伝わってくるのだ。
そしてより深い感傷に浸ってしまう。
志村正彦の、人の記憶に焼き付ける言葉は、何百年経とうとも色褪せないままなのだろう。
 

山内総一郎の紡ぐ、青春を謳歌している若者にもそれが過ぎ去った大人にも寄り添う、優しいだけではない生々しい歌詞が私は好きだ。

まるで小説を読んでいるかのように、情景が脳裏に浮かぶスクリーンに映し出される。
それは一目惚れした可愛いウサギだったり、赤く染まった月だったりと様々だ。
何気ない日常も人生の分岐点も、彼はその一つ一つを自分の言葉で大事に歌にする。これが心に響かないわけがない。

その一方で、人生の本質を突く歌詞を書いたりするからドキっとさせられる。

『きっと僕らの9割、ほとんど負けてます
一瞬の喜びのため、日々負けてます』
(フジファブリック「バタアシParty Night」より)

と思ったら、彼もまた言葉遊びを楽しんでいたりする。

『言葉に二つのびっくり(!!)
足したら飛び上がった!!』
(フジファブリック「SUPER!!」より)

山内総一郎が描く歌詞から、音楽を楽しむこと。そして自分の生活、つまり生きることを楽しむその尊さが、十二分に伝わってくる。
これからまたどんな言葉を紡いでくれるのだろうかとワクワクさせる。素直に好きだと言いたくなる。
 

初恋からおよそ14年が経ち、私はまた恋をした。
フジファブリックのファンになったばかりなので、彼らのことはまだよく知らない。
それでも、彼らの音楽を聴くだけで温かい気持ちになれるのは、彼らが過去も未来も全て受け止める覚悟ができているからだと思う。

志村正彦は居ないのにいつもそこに居て。
でも山内総一郎・金澤ダイスケ・加藤慎一、この三人のフジファブリックが放つ色は凄まじく鮮やかで、それがこんなにも惹きつけられる理由なんだろう。

『優しく揺さぶる 紛れもない 今』
(フジファブリック「Water Lily Flower」より)

私の心情を的確に表現してくれている。
優しく優しく揺さぶられる。
その感覚をずっと味わっていたい。
 

8月に誕生日を迎え30歳になった秋。
エレファントカシマシとフジファブリックのこれからの活躍に胸が膨らむ。

いつか異色の対バンなんて夢のステージを観てみたい。
エレファントカシマシが「銀河」を歌い、フジファブリックが「奴隷天国」を歌うなんてことが実現しないだろうか。
想像しただけで顔がにやけてしまう。
 

次は一体どんな恋をするのだろう。
今はもうちょっとだけ、二度目の恋に酔いしれていたい。
 
 
 

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