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夏とビールと思い出ばなし。

ELLEGARDEN "THE BOYS ARE BACK IN TOWNツアー"

「今日めっちゃ夏。」と友人からLINE通知が来ていた。2018年9月9日。つい2日前に、どうやら今回で最後になるらしい9月7日のブログが更新された。
外に出たらやっぱり今年も青空が広がっていた。雲は薄く広がって秋もすぐそこだけれど、清々しい日差しはまだまだ夏らしい。思い返す限り、毎年この日はことごとくきれいな青空だった。
 
 

“THE BOYS ARE BACK IN TOWN”。
完璧じゃなかった10年と、あやふやなこれからの間に、もうめちゃめちゃ幸せで仕方ない夜があった。
 

ツアーが発表されてからというもの、頭の中はうっかりELLEGARDENに占領された。空白の10年に目の前で鳴り続けてくれていた大好きな音楽を差し置いて、どうやら私はとんだ薄情者らしい。
 

薄情ついでに8月15日の話をしたい。ちょっと遅くなっちゃったけど。思い出にするにはまだ鮮明だし、大気にはまだ夏の匂いがするから。まあいいか。
 
 

風の強い日。正確にいうと風が強い日だったのか、幕張という土地は常に海風が吹き荒れているのか、年に数回しかこないのでよく分からないのだけど。何度も飛ばされそうになるキャップを抑えて会場に向かった。

ギリギリに到着してなんとかONE OK ROCKのステージに間に合った。ONE OK ROCKのパフォーマンスについて書き始めると、それはそれでまた長くなってしまいそうなので今回は控えるけれど、誠意と喜びに溢れた圧巻のステージだった。

既に日は暮れていた。POLYSICS、アジカン。どうにも世代直撃の曲たちがスタジアムに響く。
「日が沈んだね」「月出てきた」なんて、目に見える全ての現実をいちいち言葉に出さないと済まないくらい、拡がる景色に浮かれていた。STANCE PUNKSの”すべての若きクソ野郎”が鳴った。苦手なビールをもう一杯飲んだ。
 
 

ステージにELLEGARDENとかかれている。イカついスカルのモチーフ。会場中に充満するドキドキに酔った。頭が沸騰したのかと思った。
 

“nothing I can do as well
But to dream her all the time
I’m a fuckup and I’m nuts so she’s gone”
(Supernova)

何度でも思い描いた。”Supernova”からはじまるステージ。
涙を流す人がいた。
大声で歌う人がいた。
ヤバいどうしようと声を漏らす人がいた。
フロアの前方は瞬く間にダイバーに溢れた。
つづく”No.13″。空白の10年を、それでも鮮やかに彩ってきてくれた曲だ。ここ数年はInstagramなんてものが流行って、9月9日になると画面が青々とした空の写真で埋まった。

完璧な幕開けだった。嬉しいのか、楽しいのか、懐かしいのか、どういう感覚なのか分からなかった。この感情に名前なんか付けてやらない。
 

軽快なギター音が転がった”Pizza Man”。「Pepperoni Quattro!」のフレーズに10年の間に溜め込んだ思いと、微かに残っていたキッズ魂をすべて詰め込んだ。この夏一番の笑顔で皆さま。訳すとつまりこれは「おかえり10年長いよこのやろう大好き!」ということです。多分、そんな感じ。
 

「こんばんは、ELLEGARDENです!」
 

最初のMCでは四方八方から「おかえり」の言葉が飛び交った。細美さんは、子ども以外静かにするように客席を促すと、壁の外のファンへ向けて「怪我すんなよ」と声を放った。壁を隔てて悲鳴のような歓声が聞こえた。
この日色んな理由で涙をのんだ人がいる。そんなこと百も承知なんだと思う。それでも広げた腕で届く人たち、その何百倍も笑顔にさせてしまう。そういうバンドだった。
 

「俺たちは10年前も今も、ロックスターになりたいと思って音楽やってきたことはなかった。でも今日1日くらいロックスターやってみるか。」
 

“Missing”、それから”スターフィッシュ”と、超スター級の名曲が惜しげもなく会場をヒートアップさせる。学生時代、はじめてギターを持った若者たちが憧れるには彼らは充分にヒーローめいていて、やっぱり彼らはロックスターだった。
目の前で渦のように跳ねるフロアをみて、どこかにセーラー服のままライブハウスにいって、Tシャツとスニーカーに着替えて飛び跳ねていた、いつかの自分がいるようだった。一瞬一瞬が誰かにとっては思い出で、誰かにとっては夢にみた未来で、それら全てが交錯した。全部、今、目の前。夏のせいかな。お盆だしな。夏って少し過去と未来が近づくのだ。
“The Autumn Song”が鳴ると、バスドラに合わせて鳴らす手拍子でそんな夏の妙を目の端で見送った。となりの友人が一段と喜んでいるのがわかった。ELLEGARDENには心臓がキュッと締め付けられるような切なさがどうしても似合ってしまう。
 

そして、この曲はどれほどの人の背中を押してきたのだろう。「行こうぜ!」と細美さんの力強い声が空気を揺らす、”風の日”。
細美さんがギターソロ前で「生形!!」と叫んだ。なんてありふれた奇跡だろう。全身に鳥肌がたった。素朴なフレーズ。それでも生形さんの弾くギターは色めいていて、大好きだった景色に大きな歓声が響いた。
 

「はじめましての人も多いと思います。小学生の頃、車の中で父ちゃん母ちゃんが流してたのを聴いて、高校生になったらライブ行こうと思ってたのに活動休止しちゃったってやつら。ELLEGARDENです。どっかで観たのとはちょっと違うかもしれねぇけどさ。こんな感じです。以後お見知り置きを。
それから、10年経ってもろくに綺麗事も言えずに周りから浮きまくってるやつら。そんなオールドファンに捧げます。」
 

“Middle Of Nowhere”。圧倒的な肯定感に包まれる。歌声は深く、演奏は説得力を増している。
そしてライブで聴く”Lonesome”はやっぱり格別。高橋さん高田さん細美さんが向かい合って演奏している。スクリーンに大きく映し出される。高田さんと細美さんがニコニコ演奏してて、高橋さんなんて泣きそうな顔をしていたように見えた。焼き付いて離れない。
 

「正直に生きることが正しいって信じてきた。そしたら10年もかかっちゃったけどさ。だけど、本当はそんなの嘘かもしれないなって。したり顔したやつがいう『正直者は馬鹿を見る』っていうことが本当だったらどうしよう、ってずっと思って。
歯ぁ食いしばる癖ができて、皺も増えたけどさ。こんな日がくるなら全部報われちゃうな。」
 

「1分もらっていいですか。」そう言った細美さんが、結局言葉にならずにMCを「ウブにパスする!」という、ちょっと懐かしい気もするようなやりとりがあった。
 

中盤、”金星”の演奏が終わると、細美さんが「いい歌詞だなぁ…。」と噛み締めるように呟いて笑った。
 

「俺の中の全てがぶっ壊れてしまったような気がしたあの日から、ちゃんと努力できてたかなって考えてた。この景色に見合うだけの努力できてたかなって。でも精一杯やれるだけのことはやってきた。だから、今日は幸せになってもいいかなぁ。
お前らから貰ったものどれだけ返せてるか分かんねぇけど、俺らのできることって、お前ら臆病者の背中をそっと後押しすることくらいだから。今日はお前らからたくさんもらってるけど、今度また返すわ。」

そして静かにイントロがなると会場からため息にも似た歓声が溢れた。この日一番の想定外だった。夏の真ん中の”サンタクロース”。

“きっと帰るからさ”
(サンタクロース)

静まりかえった会場に、今度ははにかんだような笑顔が映った。
 

その後のMCでは、この日の映像はDVDにならないこと、その理由を告げられた。
「今日が頂点とか思っても、俺もお前たちもバカだから忘れていくよ。生きてればまたそれを超える日はくるから。でも俺は今日が一番幸せ。」

そして、メンバーひとりひとりの言葉。

生形さんは「たくさんしゃべったから少しだけ」と前置きをし、10年間待っていたファンへの感謝を短いけれどじっくり、一言一言大事に伝えてくれた。

続いて高橋さん。「心のどこかでELLEGARDENが再開することはないんじゃないかと思うこともあった。」勝手に彼の言葉に一喜一憂することもあった。だけどこの日、誰よりも復活を喜んでいたようにすら見えた。

最後に高田さんは相変わらずマイペースで、こんな話を。「ここ10年、初台WALLでしかライブでしかライブをやってこなかったので、こんな大きいところでやったら勘違いして、初台WALLのブッキングは断っていくかもしれません笑」
 

本編最後のラスト1曲。
“積み重ねた 思い出とか 音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける
間違いとか すれ違いが 僕らを切り離したって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける”
(虹)

夢見心地だった今日という日が、やっと少しだけ輪郭をもって現れたようだった。

「ELLEGARDENでした!ありがとうございました!!」

叫ばれた言葉は、会場を包む空気全てに叩きつけるように轟いた。生命力に満ちていた。
 
 

アンコールで早々に登場すると、8月15日という日について、細美さんからの言葉があった。ミュージシャンが愛と平和を歌わなくなったらダメだ。今、この3分だけ一緒に祈ってほしいと。

「今日隣にいるやつが一人にならないように。隣のやつが帰り道さみしくならないように。」
 

アンコール1曲目は”Make A Wish”。震災以降、どこかでこの曲を聴くことはあった。その度細美さんの隣には誰もいなかった。2番から駆け上がるように加速する。もみくちゃになったフロアが目の前にある。細美さんの歌に、生形さんのギターと、高橋さんのドラムと、高田さんのベースがやんちゃに絡み合う。そんなMake A Wishは本当に10年ぶりだった。馴染んだ英詞が勝手に喉を震わせて、誰もが綺麗事だってスルスルと歌えてしまう。
 

さっきまで三日月が空に浮かんでいたのに、気づけば雲に隠れたのか見えなくなっていた。代わりに”月”でこの夜を締めくくる。

「座れんのかマリンスタジアム。
焦らなくていいよ。ずっと待ってるから。」

客席に座るように促し、細美さんはそう言った。気が遠くなるほど待たせたファンへ。今度はELLEGARDENが待っていてくれるらしい。あまりにも優しい。
 
 

ダブルアンコールも早々に登場すると、最後の最後の締めくくりは”BBQ Riot Song”。

これで最後だな、あと2分そこらでこの奇跡みたいな夜が終わる。寂しいなという気持ちももちろんあったのだけど、とてつもなく安心した。
Supernovaではじまるライブは何度も想像したけど、終わり方なんて一度も考えてこなかった。でもやっぱりこんな風に爽快であってほしかったんだ。フロアが波打っていた。悔いのないように。とっくに涙が止まっていたことに気づいた。
 

「ONE OK ROCKとELLEGARDENでした!!」
 

いいライブだった。
 

この10年で飲めるようになったビールを飲んで、10年で随分と涙もろくなった顔を拭って、10年前の同級生と並んでELLEGARDENに熱狂した。
 

ライブが終わったあと、花火が打ち上がって、人の波にのって会場を後にしながら、しばらく黙りこんでしまった。言葉が喉まで出かかっては引っ込んだ。かつて感じたことないほどの幸福感と、同時にどこかに放り出されたような感覚があった。10年前と違って、今度は約束はなかった。

ただ一つだけ、あの夜が幻なんかじゃなくて、それに奇跡なんかでもなくて、ELLEGARDENとONE OK ROCKが必死こいて作り上げてくれた時間だったことはどうやら確からしくて。それにメンバーが笑顔だったのはこの目に焼き付いていて。BBQ Riot Songで締めくくった夜を、勝手に信じていたいと思う。
 

ライブ後、別で見ていた高校の友人たちも合流して、またビールを飲んだ。つっかえていた言葉がようやくほんの少しだけだけ声になった。思い出話ならいくらでもあったけど、今日のELLEGARDENのライブの話をした。

だけどすぐ、これすらも思い出話になるんだろう。こんな思い出を、2018年の夏に置き去りにして、たまに宝物のように思い出す。それでまた飽きもせず目の前のライブに感動して、「今日が人生で最高のライブ」なんて無責任に言っていたい。
 

“See you some time on the beach”
(BBQ Riot Song)
 

ELLEGARDEN、またね!

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