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Analogfish ライブレポート

渋谷WWW X

 9/24、ニューアルバム「Still Life」を引っ提げてのツアー最終日、渋谷WWW Xにはたくさんのお客さんが駆けつけた。
 メンバー登場後、「ベース佐々木健太郎、ギターRyo Hamamoto、ドラム斉藤州一郎、そして下岡晃、アナログフィッシュです。いい日にしよう。」と下岡が軽く挨拶して始まったのは「No Rain(No Rainbow)」。3年前に発売された前作の代表曲である。もう3年も経ってしまったのかとびっくりしてしまったが、いやしかし、前作は前作でまだ瑞々しさを充分に保ちつつ、新譜の素晴らしい内容に繋がっていると思う。
 次に鳴らされたのは「曖昧なハートビート」。これも下岡作の過去曲。CDに収録されているバージョンは音数が少なく、それがアナログフィッシュの魅力のひとつでもあるのだが、この日は分厚いロックンロールアレンジで披露された。音はでかくて分厚いが、割と淡々と歌う下岡がクールでカッコいい。ふと佐々木に目をやると、コーラス部分ではないのに、口づさんでいたりと、ファンにとっては嬉しい場面を目撃してしまった。
 インタビューで下岡が「今作はファン以外の人にも届いているみたいで」と言っていたが、初めてライブに足を運んだ人はこの2曲で、実は凄く太くて分厚いロックバンドであることを思い知らされたに違いない。それに加え、やはり、ハーモニーが美しいという、このバンドの最大の武器もまた見せつけていた。
 ここで新譜から佐々木曲の「Dig Me?」へ。序盤で、誰も知らない星みつけたら 君にだけ打ち明けるよ と素敵なことを歌い、終盤では、正しくなりたいだけなら 少しだけ黙っていてほしい とハッとさせられるようなことをサラッと歌っている。さらに「ロックンロール」「Will」と佐々木節全開の定番ナンバーをその見事な歌唱力で歌い上げる。
 次に、下岡の指示からHamamotoのギターリフが鳴らされ、そこに佐々木のベースラインが乗り、斉藤のドラムも加わる。この段階でもう最高のグルーヴが生まれていた「Watch Out(サーモスタットはいかれてる)」へ。Hamamotoは、サポートメンバーではあるが、この数年のアナログフィッシュのライブを見せつけられると、もういなくてはならない存在である。Hamamotoが加わることによって、もちろんバンドとしての厚みも出たし、また過去曲の再構築なども4人ならではの角度で行えているのでは、と思う。このゴリゴリの演奏に下岡のラップが乗ると、フロアは大盛り上がりに。さらに新譜から「Pinfu」。これはアナログフィッシュの大ファンを公言している、ラッパーの呂布カルマをフィーチャリングした曲(ラップ部のリリックも呂布カルマによるもの)だが、この日のラップは下岡が担当した。曲終わりで「全部言えた…俺凄い…」と言い、大歓声と笑いが混じる空間を作り上げた。
 立て続けにライブの定番曲「平行」へ。下岡はどの曲でも声を荒げたりということはほとんどないが、その分、間奏のギターはすべて爆音でかき鳴らされていた。
 次は新譜から「Time」。佐々木が全編裏声で歌う。シティポップとロックがせめぎ合う最高にカッコいい曲だ。そのうち車が空を飛びだしたりして、その車がTimeなんて名付けられたら、きっとこの曲をタイアップにすればいいだろう。さらに新譜の「Ring」、定番曲の「Tonight」へ。曲のポップさや、メロディーラインの美しさもさることながら、ここでは、歌手佐々木健太郎が全面に出る。そのソウルフルな歌唱は歌手としてのひとつの到達点を迎えているのでは?と思わせるほどだ。
 ここから新譜からの曲が続き、まずは「静物 / Still Life」「Sophisticated Love」。下岡の真骨頂、作家性、物語性が溢れる曲だ。そしてキャッチーでカッコいいギターリフもまた下岡の真骨頂であるといえる。
 「With You(Get It On)」はアナログフィッシュでは珍しい佐々木と下岡の共作であり、ここでも下岡はラップを決め、佐々木は相変わらずいい声出しまくり、続く「Uiyo」と下岡の物語は止まず、この4曲はまるで、短編小説を読んでいるような、短編映画を観ているような気分にさせてくれた。 
 次に披露されたのは、この日の中では、アナログフィッシュで最も古い曲、「世界は幻」。ちなみにこれもクレジット上では二人の共作になっている。この初期曲が元々の曲のパワーと、今のバンドの厚みと佐々木の熱唱とで、凄いところまで成長してしまっていた。
 フロア全体が圧倒された雰囲気の中、「先日引退された安室奈美恵さんにリスペクトを表してここまでMCなしできたけど」と下岡が会場を笑わせると、話題は佐々木のペーパードライバーの話へ。かれこれ20年ペーパードライバーだという佐々木が、今回のツアーで車を運転したいという雰囲気をずっと出していたのだが、結局まだ車線変更が不安ということで運転させてもらえなかったというオチで会場を和ませた。
 そして「こっからは踊れる曲が続くんで」と佐々木が言ってから「There She Goes(La La La)」、「アンセム」へ。
下岡作と佐々木作のバンドを代表する曲と言ってもいいだろう2曲で盛り上がらないわけがない。
 しかし、ここからが凄かった。これまたCDのバージョンでは音がスカスカ(もちろんいい意味で)で、それ故に下岡の歌詞の強烈さが際立つ「戦争がおきた」を、この日は轟音パンクバージョンで。佐々木は顔面をくしゃくしゃしながらベースを弾き、クールな斉藤でさえ時折苦しそうな表情を浮かべドラムを叩く。もの凄いグルーヴで、その音で、歌で、ひとりひとりの心をぎゅっと掴んでいくような演奏だった。
 さらにすかさず「Fine」で佐々木が熱唱。明るくて楽しくてこれぞ佐々木、といった曲だが、「戦争がおきた」からの流れで、ありったけの言葉で希望のうたを歌おうぜ なんて歌われると思わず涙腺が緩んでしまうほどだった。勝手に、この2曲の並びに、この日のアナログフィッシュからのメッセージを受け取ったつもりでいる。佐々木は中盤と終盤に右腕をぐるんぐるん回してプレイ。それを下岡と斉藤が保護者のような温かい眼差しで見ていた。佐々木はピックもすっ飛ばしながら右腕を回し続けて曲が終了。ふと気付くと、佐々木のマイクスタンドに刺さっていたピックがあと一枚になっていた。大丈夫だったのだろうか。
 感情を次から次へ揺さぶられたあと、新譜の1曲目にして最大の問題曲「Copy & Paste」へ。なんとアカペラ曲である。さらにお客さんを巻き込んでの大合唱に挑戦。とても難しい曲なので、それでもメンバーは完璧にハモるが、お客さんは♪Copy & Paste部のみ歌唱。「入るとこは健太郎さんが上手く指示してくれるから、みんな健太郎さんを信じて…車線変更はできないけど」と下岡が笑わすが、フロアは異様な緊張感が漂っていた。それでも健太郎さんを信じたお客さんも完璧な合唱で、終わると万雷の拍手が。とそこへすかさず「荒野」のイントロが流れそのまま凄い熱狂が渦を巻いた。とりわけ斉藤の、物凄く力強く叩いてるわけでもないのに、でかいドラムが印象的だった。それにしてもこのゾクゾク感は、あそこにいた人しか味わえないとても貴重な場面であった。そしてこれ以上の盛り上がりはない、といったところで本編が終了。4人のやり切った顔がライブの濃さを表していたが、もちろんアンコールへ。
 まずは「Ready Steady Go」。原曲よりやや重いアレンジで佐々木の歌唱もメロディーにギリギリ乗っているような語り口のような歌い方で、それがこの曲の良さを際立たせる。みんなに歌っているようで、個人に歌っているような曲中、佐々木と自分ひとりになってしまったような錯覚にとらわれてしまった。
 アンコール2曲目は「はなさない」。この曲の凄いところは下岡が間奏以外ではたった2つの音しか弾かないところだ。そのリフレインがとても気持ちよくカッコいい。そして例によって間奏では、爆音でかき鳴らし、下岡の伸びのある声にメンバーのコーラスも決まり、これぞアナログフィッシュ!といった感で終了。
 しかし、拍手鳴り止まず、ダブルアンコールへ。下岡が「最後はちょっと静かめの曲やります」と言ってから「泥の舟」を演奏。これもアナログフィッシュからの強烈なメッセージだと勝手に受け取る。
 終演後下岡は「荒野の時のみんなの拳が上がった景色は今まで見た景色で五本の指に入ります。」と言って去っていった。本人たちもお客さん同様、凄い何かを感じていたのだろう。
 この今のバンドのテンションを維持したまま来年は20周年を迎えるアナログフィッシュ。すでに色々企画されているらしい。
 最後に「泥の舟」の歌詞の一部を紹介して終わりにする。とても沁みる。

崩れ始めた帆先に
新しい泥を塗る
オールは握っているかい
手を離しちゃいけないよ

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