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ここからがスタートだ

Age Factory×My Hair is Bad「Pre GOLD TOUR」梅田TRAD公演

Age FactoryとMy Hair is Badの2マンが台風上陸前夜2018年9月29日、大阪は梅田TRADにて行われた。チケットはソールドアウトし、開演前から興奮気味のオーディエンスでフロアは超満員。夏が終わって秋になろうとしているとは思えない熱さだった。

長い付き合いのあるバンド同士の2マン。先攻はマイヘアだ。三人が向き合って、最初に鳴らされたのは「アフターアワー」。間髪入れず「熱狂を終え」「グッバイ・マイマリー」と演奏され、会場を暖めるどころじゃないほどの一体感がフロアに生まれていた。

「Age Factoryとは長いんですよね。今日一緒にやることは、一年前から決まってたんですよ。今日は絶対特別な日になると思います。俺らが今日を楽しい日にします」という言葉は、とても強いものだった。オーディエンス任せではない。言い訳はない。自分が主導権を持つのだ、ということを理解していないと言えない言葉だと思った。

「土曜日なので休みの歌を」と「悪い癖」。このあたりから椎木がライブハウスの空気を、ただの熱狂だけでなく、本当の意味で自分の物にしてくる感覚があった。「本気で好きだった事 本気で好きじゃなかった事 本気で好きだったから本気で好きじゃないことがわかった」と呟いて、よく知ったギターのアルペジオが鳴る。「真赤」だ。彼らの名を世間に知らしめたと言っても過言ではないこの曲は、何度聴いても、あまりにリアルだ。今年の夏、好きじゃない人と付き合うと決めた日、一人、部屋で泣いた夜の事を思い出した。たぶん私はあの時、もう誰のことも本気で愛せないのかもしれないと思って泣いたのではなく、あの人以外の誰のことも本気で愛したくなくて泣いてしまった。終わってしまっても、愛は消えない。たぶん、ずっと大事なままだ。過去の恋愛を歌った「真赤」を今でも唄い続ける椎木を見て、そんな事を思った。

「短い曲です!」と次に披露された、「クリサンセマム」。「これがライブだ!」とマイクを通さず叫んでいた。ロボットではなく、生身の人間が音を鳴らすという意味を、体現していた。一朝一夕には成し得ない。本物のライブだった。酒とライブは合法的なドラッグだと思う。こんなの知ってしまったら止められない。会場の「いないいないばあ!」の元気な掛け声が楽しい。フロアもステージも、両方が飛び跳ねながら、そのままの勢いで次に演奏されたのは「元彼氏として」、そして、「燃える偉人たち」。ライブハウスから湯気が出るんじゃないか?と思うくらいの熱気だった。

「売れたい 売れたい 音楽で飯を食っていきたい ずっと思ってきたことが現実になってる どうしたら売れるのか 聞き分けがいいこと?知り合いが多いこと?世渡りが上手いこと?違う 売れるという事は、愛されるという事 100人のうちの一人でいい 1万人のうちの一人でいい」

「俺たちは船に乗ってる ようやっと海に出れた これからがスタートだ 俺たちがいるのは邦ロックの海じゃない どんな船なのかわからない もしかしたら船に乗りたかったんじゃないのかもしれない 陸にいたかった はたまた海で泳ぎたかったのかもしれない 他の船が羨ましいと思って思うこともある でも俺らは自分の船で進んで行かなくちゃならない 壊れかけの船かもしれない 俺たちの船は、My Hair is Badだ 愛想笑いでいい 盗めるものを盗んで、また戻ってくる 何度裏切ってもいい でもたまにでいい こっちを見てくれ

船を漕ぐのは自分だ 台風の日、自分の船に帆を立てることができるのは自分だ 風が強い日、船を修繕するのは自分だ 」。そして「おれは、みんなの一番好きな船になりたい」とぶちかまされた「フロムナウオン」。My Hair is Badのライブの特徴の一つは、椎木のその場で作り上げられる即興の長尺のMCだ。ある人は、彼を天才だという。でも、彼は、自分の手で、天才になったのだと思う。Age Factoryのライブを、最初から最後まで、ずっと、袖から見ている彼の姿があった。彼から発せられる言葉の一つ一つが戦っている言葉だった。借り物の答えではなかった。自分で掴んできた答えだった。自己啓発書やらどんな本にもインターネットにも載っていない、彼自身の言葉だから、人の耳を、目を、心を、奪える。

「俺の裸を一番見てるのは家族でも長く付き合った元カノでもない 自分だ 裸を歌った曲です」と「幻」。いつも赤裸々に話しているようで、椎木は掴めない。素が見えない。裸の心が見えない。そんな気がしている。何を考えているのか分からない。大阪でのエピソードをメンバー全員で談笑後、時間がない!と笑いながら最後に演奏されたのは、「いつか結婚しても」「告白」。
 

熱狂冷めやらぬマイヘアの余韻、そしてそれを差し置いて「椎木を見に来た奴らなんかに興味はねえ。お前らの価値観が生まれ変わる日だ」とステージに現れるAge Factory。彼らのステージは「Puke」で封切られた。「俺たちはHIP HOPでもJ POPでもねぇ。This is Age Factory」、強固な足ですくっと立って、真正面からロックンロールの力強さを証明していた。

「9月29日、今日、時代が変わります」。と「OVERDRIVE」「siren」が演奏される。Ba.西口が髪を振り乱しながらベースを掻き毟るさまも痛快で、オーディエンスはすっかりAge Factoryの作り出す世界の中に引きずり込まれる。

三人のハーモニーやコーラスが印象的な二曲、「CLEAN UP」「WORLD IS MINE」を続け会場の一体感、そしてバンドで音を鳴らしているという唯一無二の魅力をこれでもかというくらい生み出していた。「俺の中心は俺、お前の中心はお前」というGt.Vo.清水の言葉は、私達は他人だ、だからこそ価値観も好き嫌いも違って当たり前だ、同じじゃなくて良い、同じだから正しいというのは間違いだ、という意味だと思う。

MV公開された後に初披露された「GOLD」。金色の照明、無数の拳が上がる様、Ageのひたすら溢れる熱量、圧巻の光景だった。「真空から」に続く「RIVER」ではガツンと脳を殴られるような感覚に陥った。芯が通ったしなやかな強さを感じるステージだった。茨木のり子さんの詩の一節を思い出した。“自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ”、これに尽きると思った。ごまかすな、良いも悪いも自分で判断しろ、自分の判断に、感情に自信を持て、横並びの感性に安心するな。Age Factoryの三人が、全身で、それを訴えていた。強いロックンロールの空気から一変、ライブハウスに爽やかな風を吹かす「Tours」。荒々しくも正確に筋の通った強さと対比するような、優しさをも兼ね揃えているAge Factoryの音楽。目の前に映るドラマのような景色を、くるくるといろんな色に変えていく。
 

「次のステージにいく節目には、いつもマイヘアとやってる気がします。長い付き合いです。久しぶりに会ったけど、あいつら、なんも変わってなかった。俺らも、早く、追い付きたい。辿り着きたい。俺たちを遠いところまで連れて行ってください」。そして鳴らされた「さらば街よ」。“狭い部屋 この1Kの中で 幾度 夢と不安を見たろう”、それでも息が切れるまで駆けきたから、彼等はここに立っているのだと感慨深い気持ちで私はステージを見つめた。「グリーングリーン」が演奏され、緑色の風がライブハウスに流れてたような気がした。あまりの体感の速さに呆気にとられたまま、彼らの舞台は幕を閉じた。

アンコールは、「ロードショー」。「椎木の歌は恋愛の歌が多いですけど、俺にも、不器用だけど、ラブソングがあるんですよね。これが俺なりの恋愛ソングです」とGt.Vo.清水。沢山の拳が上がり、彼らの音楽がまっすぐ届いているのが分かった。

本物しか見たくない。そんな気持ちになった。逆に言うと、こんなライブされたらもう他のライブ全部偽物に見えちゃうじゃん、と思ってしまうくらい、エグいライブだった。この時代を生きる二つのバンドが、確かに今日、目の前で音を鳴らしていた。夢みたい、とは思わなかった。ものすごく、現実だった。二つのバンド、それぞれの現状、意志を堂々と、自信を持って、今日ここに来た全員に見せていた。それが出来るのは、迷いを越えてきたからに他ならない。私は彼等を、胸を張って「良い」と言いたいし、これからも見ていきたい。自分の好きな音楽を聴いて、自分の感情を大事にする。自分を大事にするというのは、他人を大事にすることに繋がる。私は私の舟を進めていきたい。終着点が分からなくても、それが間違いだったとしても、どうなっても、自分で舵を取り続ける。そして甲板に立った時、ふと目を向けた先に、彼等の音楽があったら最高だと思った。

来たる10月10日に2nd Full Album「GOLD」をリリースするAge Factoryと、その翌月11月7日にNew e.p. 「hadaka e.p.」のリリースが決定しているMy Hair is Bad。彼等が今いる場所で一体何を鳴らすのか。何を歌うのか。そして、これからどんなライブを見せてくれるのか、世界や時代や潮流をどう変えていくのか。楽しみでならない。
 
 

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