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私の闘いは続く

劣等感と私と米津玄師と

幼い頃から、私は自分への違和感を覚えていた。幼稚園児のときから「他の人の声は普通なのになんで自分の声は変なんだろう」と思っていたし、小学生の頃は「他のクラスメートは出来るのに自分は出来ない、と感じることがいくつもある。もしかして自分以外の人はみんなロボットなんだろうか」と思っていた。他の人は出来るのに自分には出来ないと感じていたことのインパクトは強く、自分以外の人みんなロボット説は割と信じていた。

このように自分の様々な事に違和感を覚えつつ時は流れ、いつの間にか高校2年生になったときにロックを好きになり、その界隈の人たちをたくさん知り、その年度の終わり頃に米津玄師という存在に出会った。今までに好きになったアーティストとは違う独特な雰囲気の楽曲ばかりで、曲を聴き始めてからはあっという間に米津さんの世界に引き込まれていった。それまでは少しでも奇妙だったり不気味な雰囲気を醸し出す曲は苦手だったが、そんな曲たちにも聴く毎に慣れてゆき、やがて愛せるようになった。また、次第に米津さんがどのような人なのかも気になってインタビューや米津さんのブログを読み、曲だけでなく米津さんの言葉や考え方にも惹かれていった。

その1年後、高校3年生の3月、私は受験した大学に合格できなかった。浪人生活が始まり、予備校に通うことになった。友人をフォローする用のTwitterアカウントではプロフィール欄に進学先の名前を書いている同級生が溢れ、それを眺めるばかりの毎日。4月以降も、当たり前だがそこではみんなそれぞれ進学した大学でのことを呟いており、私はまだ受験勉強を続けていて取り残されているような劣等感があった。今考えると「これが劣等感だ」と分かって抱いた劣等感というものと私との本格的な出会いであったように思う。

その劣等感を抱いたまま、周りが夏休みで遊んでいる間も予備校に通っていていつもと変わらない日…になるはずだった9月15日、私は予備校から駅までの帰り道を自転車でいつになくぶっ飛ばしていた。なんと米津さんの新曲のMVを解禁する上映イベントをネットで配信すると言うのだ。しかも上映が始まるまで米津さんが喋るらしい。駅に着いて自転車を止め、急いで電車に乗り込み席を確保し、イヤホンを耳に突っ込んで配信を聴き始めた。もう2年前のことだから話の内容はほぼ覚えていないが、米津さん側の電波が悪かったからなのか、何回か音声が途絶えたり所々機械を通したような音質になっていたことだけは記憶にある。

やがて時間になり、ついに新曲のMV上映が始まった。衝撃だった。あの米津さんが踊っている。しかもめちゃくちゃ上手い。ダンスに気を取られていたが、曲も格好いいし歌詞も刺さる。曲と映像が合わさった衝撃はとても大きく、電車に乗っているのにその電車内で自分だけ他の乗客とは違うどこかに居るような感覚になっていた。今でもその感覚は覚えているし、大体どの駅の辺りだったのかも思い出せる。衝撃を受けた曲は今までにいくつかあるが、その曲は映像と相まって、今までとは桁違いの衝撃を食らった。

そう、その衝撃の正体は「LOSER」である。

『アイムアルーザー なんもないならどうなったっていいだろう
 うだうだしてフラフラしていちゃ今に 灰 左様なら』 (LOSER)

浪人していてもはや自分には何もない状態だった私には、この歌詞が特に刺さって抜けなかった。どうなったっていいだろうと思える強さは持ち合わせていなかったが、そう思えるようになりたいと思った。うだうだしてフラフラしていちゃ勿体ないと気付くことができた。

何故こんなにも刺さるのか。それは私が米津さんとの共通点を見いだしていることも関係していると思う。共通点というとおこがましくて気が引けるが、それでも言うならば、自身に向けている負の感情が強いということは同じではないかと感じている。この曲に背中を押される人は、恐らく劣等感であったり、何か自身に負の感情を抱いている人も多いであろう。それは、米津さんが少なくともそういうものを抱いているからではないか、と私は思う。実際にそのように読み取れる米津さんのインタビューやツイートなどを読んだことがある。それに、何より、自身に向けた負の感情を抱いていない人は、そのような感情を抱いている人にここまで刺さる詞は書けない気がする。私は最初に書いた通り、幼い頃から自分への違和感、すなわち劣等感や負の感情を抱いてきた(それが劣等感だと気付いたのは最近だが)。だからLOSERの歌詞がここまで深く刺さって抜けないのだ。また、ネガティブなところで共通点があることで、親しみというか、その共通点が無いよりも格段に存在を近くに感じる。曲を作る人の存在を近くに感じている方が、その人が生み出した曲も自分の近くに感じやすいだろう。曲だって、人に寄り添うときには、その人から遠いよりも近い方が寄り添いやすいはずだ。

勉強する前や休憩中にLOSERを聴いて寄り添ってもらって自分を奮い立たせ、好きではなかった受験勉強をし続ける生活に何とか耐え、無事に大学に受かって浪人生活を終わらせることが出来た。今の大学生活は楽しい。しかし、同じ分野に興味がある人が集まっているから、周りには私の興味がある分野で私よりも凄い人ばかりだ。浪人したから同学年は年齢的に年下ばかりだが、人間力が私よりも高い人ばかりだし、年齢的に同い年である学年一つ上の人たちはもっと凄いことをしている。そこでも私は劣等感に苛まれている。だから私は今日もLOSERを聴いて寄り添ってもらいながら自分を奮い立たせ、劣等感と闘い続ける。

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