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重力と呼吸と自分

Mr.Children『重力と呼吸』に寄せて

2018年10月2日。
Mr.Children、3年4ヶ月ぶりのニューアルバム『重力と呼吸』の店頭到着日。

3年4ヶ月という年月はMr.Childrenのアルバムリリース間隔としてはもっとも長いもので、前作のリリース時高校生だった僕は大学生となり上京した。3年4ヶ月の間に、自分を取り巻く環境は大きく変わり、様々なことが起き、当然自分自身も少なからず変わっていると思う。Mr.Childrenのアルバムリリースは、彼らのファンである僕にとって一つの節目のようなものであるから、この節目に当たってたくさんの記憶や想い出に思いを巡らした。前作の発売日のことも、鮮明に記憶している。そんな僕にとって、今日という日は、期待に胸を膨らませながら、どんなアルバムになるのか予想しながら、キリンぐらい首を長くして待っていた1日であった。

そうして迎えた今日。
そのアルバムは、タイトルに見合う重厚感をもったパッケージに包まれていた。部屋で一人、静かに興奮しながらついにCDを再生する。

1曲目、「Your Song」。先行公開されたMVで既に何度も聴いていた冒頭のJENの叫びであったが、ニューアルバムの幕開けとして聴くそれはまた格別で、専門的なことはわからないが、今までとは何かが違う瑞々しいが重厚なバンドサウンドに新しいMr.Childrenを感じる。
さぁ、これからは本当に初めて聴く曲たちだ。どんな曲たちが待っているのだろう。タイトルや既出曲(「himawari」「here comes my love」「SINGLES」「Your Song」) から予想していたように重厚な曲たちなのだろうか?
2曲目、「海にて、心は裸になりたがる」。ん……?予想と全然違う。なんだこの若さは。これはビートロックというやつなのか???想定外の予想の裏切られ方に思わず笑ってしまい、それと同時にこの未知なるアルバムへのワクワク度が急上昇する。
3曲目、「SINGLES」。ドラマのエンディング曲として1番は既に聴いていて、キャッチーでいてどこか哀愁漂うメロディからして、「HANABI」や「fantasy」のような、まさにミスチルの王道的な曲だと安心して聴いていた。しかし、この曲もやはり一筋縄ではいかない。詞に胸を締め付けられた2番のサビが終わった瞬間、急にグネグネ()した間奏が始まるではないか。その後またもとに戻って最後のサビがあり、そのまま曲が終わるかと思うと、再びグネグネしてこの曲は終わった。せっかくの売れ線の曲なのに、テレビで演ったらお茶の間が困惑しそうではないか。
4曲目、「here comes my love」。さすがに(当然だが)既出曲なので裏切られることはなく、しかし思い返せばいままでのMr.Childrenには無かったような曲調とサウンドで、壮大かつ荘厳なスケール感に包み込まれる。
5曲目、「箱庭」。この辺りでもうどんな曲が来ても受け止められるような気がしてくる。第一印象は、初期っぽい。『EVERYTHING』に入っていても違和感なさそうな、瑞々しい失恋ソングだ。“誰のための愛じゃなく 誰のための恋じゃなく 不器用なまでに僕はただ 君を大好きでした”と歌詞まで当時に若返ったようであるが、しかしこの曲で「箱庭」というワードが出てくるところにベテランの味を感じる。
6曲目、「addiction」。これまたいままでにないタイプの曲だ。不穏なイントロから始まり、怒りのような衝動をそのまま音にしてぶつけてくるようで、桜井の唯一無二の声が存分に活かされている。また、世武裕子のキーボードも非常によく効いていて、それが曲を単なる“らしくない”曲の域を超えたものに昇華させているようだ。
7曲目、「day by day(愛犬クルの物語)」。タイトルを初めて目にした時からいちばん気になっていた曲であったが、歯切れのよい力強く野太いロックサウンドの上に愛くるしい物語が載せられて、もうなんだかハッピーという感じの曲だ。そしてなによりデビュー27年目の曲とは思えない、というより、もはやその事実を忘れそうになってしまう。
8曲目、「秋がくれた切符」。ようやく一息つける曲がきた。しっとりとした美しいメロディと豊かな音像に自然と身を委ねたくなるような、そしてそのまま心地よい秋へと導かれるような、前曲とは違ってさすが27年目という名曲だ。
9曲目、「himawari」。公式にアナウンスはされていないがどうやらアルバム用に録り直されているようで、パワーアップしてアルバムの中で他を凌駕する存在感を放っている。“圧倒的”という言葉がこれほど相応しい曲はないだろう。
そして10曲目、「皮膚呼吸」。派手さはないが堅実で大人なバンドサウンドとメロディが、曲が進むにつれて聴き手をより高い、エモーショナルなフロアへと運んでいくような、そんな感覚を覚える。そのままどこまでも連れていかれそうになったところで、エレベーターが最上階に止まるようにしてこのアルバムの終わりは終わりを告げた。

このアルバムの感想を一言でいうのは難しい。アルバムと一括りにしても、当たり前ながら1曲1曲がそれぞれ個性を持った曲であるから。聴く前に予想していた“重厚”なんて一言でこのアルバムを形容して済ませることは到底できない。
しかし一つ言えるのは、このアルバムは、楽しく、面白く、圧倒されるということ。バンドの核となる部分を、それだけで戦えるように強烈にアップデートさせながら、そこに多様なアイデアやユーモアが織り交ぜられたことで、もはや無敵とも言えるアルバムになっている。Mr.Childrenはいつだって質の高い音楽を安定して届けてくれていたが、今回はいままでと同列に語ることはできない。確実に、Mr.Childrenの本質を更新している。桜井がコメントしていた通り、まさに「圧倒的な音」なのだ。発表当初は物足りなくも思えた10曲という曲数だが、アルバムを鉄柱のように突き抜けるズドーンというパワーを前にして、大作映画を見たかのような満足感に浸ってしまう、そんな48分間であった。

今日は、僕にとって節目の日だ。
大袈裟でなく、この音を知らなかった今日までの日々と、知ってしまった今日からの日々は、彩りが違ったものになる。
次のアルバムがリリースされる日には、また僕も変わっているのだろう。3年4ヶ月前に今日を想像できなかったように、その日を想像することは不可能だ。
その日、僕はなにを思い出すのだろう。
重力と呼吸をきっと今まで以上にリアルに感じながら生きる、これからの日々が楽しみだ。

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