1383 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

非日常と夕焼け空

Mr.ChildrenのSignが教えてくれたもの

大事なことに気がついたのは、旅行の帰り道のことだった。浅い眠りから覚めて、飛行機の窓からきれいな夕焼け空が見えた。
きれいすぎるものに出会うと写真に撮るのが、惜しくなる。写真にして形にしておくとどこか安心して簡単に忘れてしまうような気がするから。焼き付けるようにじっとその壮観な空を見つめる。頭の中でメロディーが流れた。そういえばと思い出して、バックに仕舞ったウォークマンをつける。写真に残すかわりに頭に浮かんだその曲を聴いた。
Mr.ChildrenのSignだった。
刹那的な夕焼け空を見ながら聴いたSignは、例えようがないほどにきれいだった。

旅行の最終日、旅にでる理由はなんだろうと、水圧の弱いシャワーを浴びながら考えていた。「非日常を味わいたい。」なんとなくそんな答えを見つけたが、結局明確な答えを探さないまま眠ってしまった。
帰り道、燃えるような夕焼け空を見ながらミスチルのSignを聴いていたとき、その答えの形が分かったような気がした。
旅にでる理由は、日常の愛おしさを知るためではないだろうか。
親の存在、会いたい人、いつも気にかけてくれる人。日常を形成してる周囲の人の存在は、当たり前なんかじゃない。
それに気付かせてくれたSign。すごく優しい曲だなと心が温かくなる。近すぎて見失いがちなものを、すぐそこにあるじゃないかと教えてくれる。

『ありふれた時間が愛しく思えたら それは”愛の仕業”と 小さく笑った』
飛行機という地上から遠く離れた非日常のなかで、このフレーズを耳にして日常が愛おしくてたまらなくなった。
ノスタルジックな夕焼け空とSignの歌詞が混ざって、今までの日々のことを思い返した。
イライラしてしまって乱暴な言葉を投げつけて人を傷付けた日のこと。緊張と喜びがごちゃまぜになった、好きな人のはだかに触れた日のこと。思い出の日には、いつも誰かが一緒にいた。1人では味わえない日常の味を思い返して、噛み締める。
『残された時間が僕らにはあるから』
進み続ける時間の残酷さを知り、人生の儚さをぶつけられて苦しくなる。
でもこの苦しさは今、生きている証拠だ。いつか来る終わりからつい目を逸らしてしまうけれど、終わりに向き合うからこそ、日常の愛おしさが分かる。残酷に進み続ける時間をまえに、今もこうして過去になって、終わりに近付いていく。

旅行も、人生の終わりも、非日常という意味ではどこか同じなのしれない。日常の愛おしさを忘れないために非日常にちゃんと触れていたい。
心に語りかけてくるようなSignの優しいメロディーと歌詞に何度も泣きそうになった。この景色をずっと覚えていたくて何度も何度も再生ボタンを押した。
Signが日常の温かさを教えてくれた。こんなも優しい曲があって本当に良かったなと嬉しくなる。大事なものはいつだって近くにあったんだな。
そんなことを考えながら、もう真っ暗になってしまっていた窓の外をずっと眺めていた。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい