1455 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ロックンロールは鳴り止まないっ!

8月32日に神聖かまってちゃんを目撃した

RUSH BALL20周年の最終日。
豪華ラインナップが並ぶなか、
ひそかにわたしは出演決定が決まってから
いちばん楽しみにしていた。

もう年ぶりになるかもわからなくなってしまった、
神聖かまってちゃんのライブを。
 
 

高校生の時、なので、もう8年前。
わたしは神聖かまってちゃんが大好きだった。
当時の私にとって「死にたい」や「殺したい」なんてことを
声を大にして、目をひんむいて叫ぶの子さんは
新鮮で、刺激的で、魅力的だった。

わたしの中に渦巻く黒いモヤモヤを、
の子さんが叫んでくれていた。
神聖かまってちゃんの曲が
わたしを救ってくれることはなかったけど、
その音楽と言葉と行動で躊躇なく
世の中をぶっ壊していくの子さんは、
わたしにとってヒーローだった。
いや、ヒーローはヒーローでもダークヒーロー。
わたしはそんなかまってちゃんの信者だったといっても
遠くないだろう。
「友達なんていらない死ね」
「死にたい季節」なんて普通の人がきくと
眉をひそめそうなタイトルも歌詞も、
大好きだった。
 

大人になって、少しずつ距離ができた。
かまってちゃんが変わってしまったとか
そういうことじゃなくて、
幼い少年が成長するにつれて
自然と戦隊ものの番組を見なくなるような、
そんな自然さ。

いつの間にか、わたしはかまってちゃんがいなくても
大丈夫になった。

わたしは嫌なことを我慢できる、大人になった。
 
 

今年の夏の始まる前、
かまってちゃんが新曲を出したことを知った。
そのタイトルをきいて、わたしはYouTubeで検索した。

「33才の夏休み」

23歳の夏休みから10年たったのか。
そんな軽い気持ちで検索した。

スマートフォンから流れてきたピアノのメロディーは、
いままでの夏休みシリーズの明るさを残しながらも、
やさしさと、憂鬱さと、倦怠感が混じったようなメロディー。
33歳になって失っていくことに慣れてしまった諦め。
大人になったことを嘆き、
それでも完全に大人になりきれなくて、もがいている。

「ガキの頃見下していたような大人になったかい」

PVも相まってわたしは、電車のなかで泣いてしまった。
わたしはなにか、大切なものを置いてきてしまったんじゃないか。
 
 

RUSH BALL当日は、9月1日。
しかし、神聖かまってちゃんファンにとっては
少し特別な日、「8月32日」でもあった。

これは、2011年に出した
神聖かまってちゃんのアルバムタイトルだ。

8月31日が終わってしまう!
夏休みが終わってほしくない!
ずっと夏休みだったらいいのに、
という子どもたちの気持ちを
なんとも絶妙に言い表したアルバムタイトルだなあと
当時は思っていた。

大人になって、
夏休みなんてなくなったいまでも
わたしは「8月32日」に恋い焦がれている。

なぜだかわたしたちは、
無性に夏が終わることに寂しさを感じるのだ。
あーこのなんともいえない寂しい気持ちが、
「8月32日へ」なんだな、
とわたしは毎年夏の終わりに思うのだ。
 

前置きが長くなったが、
そんな「8月32日」にわたしは、
神聖かまってちゃんを実に5年ぶりに目撃したのだ。

そして、1ヶ月たった今この文章を書いている。
なぜかというと、
やっぱりわたしは名だたるバンドが出演するなかで、
この日神聖かまってちゃんのライブが一番楽しかったと
認めざるを得なかったからだ。
 
 

予兆はあった。

リハの時点で、
神聖かまってちゃんは過去のライブと違い、
コール&レスポンスを求めまくり、
「俺と!お前らのライブだ!」と叫び、
リハのときからすでに会場は一体感が出来上がっていた。

「かまってちゃんがなんかまた、おもしろそうなことやってるぞ」

気づけばATMCの小さなステージは、
後ろが見えないほど人が集まっていた。
 

自分らしく/肉魔法/フロントメモリーと、
いろんな「かまってちゃんらしさ」をふんだんに盛り込んだ3曲を
投下し、すでに会場は爆発寸前のように思えた。

そして、「ロックンロールは鳴り止まないっ」
でそれはとうとう爆発したのだ
イントロが鳴り始めた瞬間に、
後ろからの圧で前方は団子状態になる。

それでも収まらないのは、
「ロックンロールは鳴り止まないっ」が
名曲の中の名曲たる所以であろう。
この日のRUSH BALLの客層は、
20代半ばから30代40代が多い印象を受けた。

すなわち皆知っているのだ。
神聖かまってちゃんがこの曲を世の中に投下したときの、
あの衝撃を。
 

の子さんは曲の途中から最早歌っていない。
なにか叫んでいる。
歌詞もめちゃくちゃだ。
いつもの目んたまをひんむいた顔で

「大人になんかなるな」

そんなことを叫んでいるのが聞こえる。

なんだかわたしは泣きそうになった。
 
 

「曲の意味がわからずとも
鳴らす今鳴らすときそう」

『ロックンロールは!!なりやまない!!!』

汗まみれになりながら、
押し潰されながら
大人たちは、泉大津のだだっ広い会場中に響き渡るくらい、
そう叫んだ。

わたしはその瞬間にたまらなく、
「ロックンロールは鳴り止まない」という言葉が
あまりにも、心強いなと感じた。
神聖かまってちゃんは、
ずっとずっとロックンロールを鳴り響かせているのだ。
 
 

最後は『あるてぃめっとレイザー!』
サビはただ、「あるてぃめっとレイザー!」
と繰り返し叫び続けるだけの曲だ。

あるてぃめっとレイザーってなんなんだ。
そんなことはもう関係ないし、
もう完全にかまってちゃんは、会場を支配していた。

「あるてぃめっとレイザー」と謎の言葉を叫び続ける大人たちと、歌ってるのか叫んでるのかわからない、
の子さんの声に引き寄せられるかのように、
続出するダイバー。

こんなにも涼しい1日の夕方というのに、みんな汗まみれだった。

みんな、笑顔だった。

みんな、子どもに戻っていた。
 

神聖かまってちゃんの力はすごい、そう思った。
 

ライブが終わり、の子さんはベースのちばぎんに肩車されながら、
強制退場させられた。
その光景を見て、またわたしは笑ってしまった。
 

1ヶ月経った今、わたしは神聖かまってちゃんを聴いている。

あの時生まれたあの感情はなんだったのだろう。
神聖かまってちゃんとは一体なんなのだろう。

上司に理不尽なことを言われたとき、
友達と話しててうまくしゃべれないとき、
わたしの中の神聖かまってちゃんが叫ぶ。

「大人になんかなるな」

社会の中で上手くできなくたって、
友達の前で上手に笑えなくったって、
いいじゃないか。

そんなときは、神聖かまってちゃんのライブに行ってみよう。

わたしたちの窮屈な世界が、
取るに足らないことだと笑い飛ばせるくらい、
神聖かまってちゃんは、
今もライブハウスで叫んでいる。
 

ロックンロールは、鳴り止まない。
 
 

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい