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KREVAの存在感

“ある”人間が紡ぐ音楽

皆さんはKREVAという男について、どんな印象を抱いているだろうか。僕は彼に対して、太陽のような人物だと思っていた。
 

彼はいつもポジティブで、いつでも明るかった。ライブでは自ら扇動して会場の一体感を求め、ステージの中心でスポットライトを浴びていた。2017年からはKICK THE CAN CREWの活動も本格化し、フェスではメインステージで圧巻のパフォーマンスを魅せた。
 

そんな彼は今、公私共に充実していると思っていた。それこそ全盛期を彷彿とさせるようなポテンシャルで、ポジティブな感情に満ち溢れているのだと、勝手にそう思っていたのだ。
 

ところが8月22日にリリースされたミニアルバム『存在感』は、予想に反してダークな雰囲気を纏う作品となった。全体を通してBPMは低めに設定され、重々しい低音に覆われている。 彼の代名詞とも言える矢継ぎ早に捲し立てるリリックは、日々感じる不安や困難、葛藤といったネガティブな感情を、限られた文字数でもって直接的に伝えるスタイルに変化していた。
 

特に今作のリード曲である『存在感』は衝撃的だ。中でも一聴しただけで頭をグルグルと駆け巡るのが、以下のフレーズである。
 

〈存在感はある 存在感はある 存在感はある 存在感は…〉
 

世の中に仕事は数あれど、ミュージシャンほど存在感が重要な職業は他にない。知名度と名声が収益に直結するミュージシャンという職業は、飽きられたら終わりだ。だからこそシングルやアルバムリリース、ツアーの開催、果てはSNSの更新など、リスナーに忘れ去られまいと工夫を凝らし行動する。
 

努力の末に出た結果も一過性ではダメだ。結果は出し続けなければならない。現在最前線で光を浴びる有名ミュージシャンはみな、過去に血の滲むような努力を繰り返して、やっと栄光に辿り着いた一握りの存在であることは、疑いようもない。
 

じゃあ、KREVAはどうだろう。
 

思えばKREVAは、常にヒップホップシーンの中心で活躍していた。紅白歌合戦にも出場し、人気を博していたKICK THE CAN CREWが休止すればすぐさまソロ活動を開始。僅か2年後にはヒップホップソロアーティストで初のオリコンチャート1位を獲得。大規模なライブも次々と成功させ、おそらく周囲の印象は長い間『成功者』だっただろう。
 

そんな彼に影が差したのは、2017年のKICK THE CAN CREW再結成の後。彼はKICK THE CAN CREWのライブにおいて、「『かつての代表曲』と『新曲』で、オーディエンスの反応に如実な差があった」ことについて、悩むことが多くなったという。
 

絶大な存在感がある人物として君臨し続け、結果を出し続けてきたKREVA。現在の環境はかつて輝いていた自分自身と、少し違って見えたのかもしれない。
 

今回のミニアルバムのタイトル、並びにリード曲を『存在感』と名付け、メッセージ性の強い歌詞を詰め込んだのにはそういった理由があると推測する。
 

だが、僕はこのミニアルバムをリリースしてくれたことに対して、心から感謝したい。
 

KREVAには、何通りもの行動を起こすチャンスがあった。例えばリリースを遅らせたり、もしくは活動を休止して一時的に休養したり。そうしてネガティブな気持ちにケリを付け、快復した後にリリースすることもできたはずだ。
 

にも関わらず、KREVAはそうしなかった。今まで見せてこなかった部分も全てひっくるめた、裸の自分をさらけ出すことを選んだのだ。
 

何枚もの作品を世に送り出してきたKREVAだが、僕個人としては、ある種の人間臭さを感じるこのミニアルバムが一番好きだ。
 

彼は『存在感』のサビ部分にて、「代表作が無いような気がした」と歌っている。僕がKREVAに伝えたいことはひとつ。「少なくともあなたのファンのひとりにとっては、『存在感』こそが代表作です」と。

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