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過去の自分とアジカンが出会う時

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新曲「ボーイズ&ガールズ」は時間を超える。

アジカンの新曲「ボーイズ&ガールズ」の発売から2週間が経ちました。心に刺さる何かが潜む曲だと思っているのですが、その正体がまだ掴めていません。

初めて、この曲を聴いたのは2017年7月。Vo.後藤さんがソロ出演されたイベントで、制作中の未発表曲として、弾き語りで冒頭部分のみ演奏されました。この時は、タイトルは語らずに2曲を披露。アジカンとソロの新曲でした。どちらも哀愁が漂うスローテンポな曲調。

うっすらとメロディと歌詞を記憶に刻み、後に分かったことですが、前者が「生者のマーチ」、後者が「ボーイズ&ガールズ」だったのです。その後、ソロの新曲は「We’ve Got Nothing」というタイトルになり、以降のフェス等で何度かセットリストに加えられました。あくまで”Gotch”名義の弾き語り曲として。

いずれソロバンド編成でアレンジを行い、7インチレコードで発売するのかなと踏んでいました。それから約1年後に、まさかの急展開が起こりました。
 
季節は移り変わり、2018年8月。待望のアジカン新曲シングルが発売されるというニュースに、ファン一同が湧きました。タイトルは「ボーイズ&ガールズ」です。ふと思いました。

「もしかして、ソロで歌っていたあの曲なのでは?」

なぜ、そのように閃いたかというと歌詞に「Boys & Girls」が入っていた率直な理由から。少年と少女が登場し、葛藤しながら日々生きている姿が浮かぶ内容でした。

また、これまでにアジカンの曲で「夜を越えて」と「Wonder Future」が、ソロ出演のライブで先行して歌われており、今回もその可能性があると思いました。

1年半ぶりのシングル発売が嬉しい反面、同時に不安が募りました。今後、楽曲発表の形態は配信が中心となり、最後のシングルになるかもしれないとのこと。

そして、先に挙げたようにスローテンポな曲調で、第一印象が「アジカンらしくない」だったからです。正直、困惑しました。

「それでは“アジカンらしさ”とは何でしょうか?」

一言で表すとすれば「疾走感」ではないかと思います。代表曲「リライト」がアジカンのパブリックイメージです。最後のシングルであるなら、個人的にはアップテンポな曲が良かったという気持ちがありました。心の奥底から叫びたくなるような、魂を持っていかれるような歌。

曇りがかった気持ちを他所に、結果として、その勘は当たりました。「We’ve Got Nothing」イコール「ボーイズ&ガールズ」でした。

前作のシングル「荒野を歩け」は「こういうのを待ってました!」と言わずにはいられない、弾むメロディがとてもポップで大好きな曲でした。新しいアルバムに収録されるにあたり、同様の曲が多く入るものだと考えていました。

果たして「ボーイズ&ガールズ」を受け入れられるのか心配になり、変なファン心理が働きました。聴きたい曲と新曲との間にあるギャップ。なぜこの曲がシングルとなるのか理解が追いつきませんでした。

実はこのような経験は初めてではありません。シングル「転がる岩、君が朝が降る」と「新世紀のラブソング」を初めて聴いた時の衝撃が忘れられません。

当時は「本当にアジカンの曲なのだろうか?」と大きなクエッションマークが頭から離れませんでした。これまでに無かったメロディライン、歌詞があまりにも直球で、戸惑ってしまいました。曲の好き嫌いが判断できないほどでした。

しかし、それぞれが収録されたアルバムを通して聴くと、とても重要なピースだったことに気づきました。アルバムのなかで柱といっても良い程の大きなエネルギーを放っています。

「転がる岩、君が朝が降る」はワンマンツアー公演のアンコールで演奏される頻度が多い名曲に成長しました。「新世紀のラブソング」においては、2017年のアジカン結成20周年公演のラストを飾り、バンドの総括的ライブを締める役割を果たしました。

私はこの2曲に対して違和感を持ち続けていましたが、何年もかけて彼らのスタンダードナンバーへと変化しました。もしかしたら「ボーイズ&ガールズ」は年を重ねて聴いているうちに、バンドにとって切り離せない1曲になるのではないかと思いました。

その予感が確信に変わったのは、アジカンが出演するフェスでライブを体感した時でした。喜多さんのギター、山田さんのベース、潔さんのドラムが、後藤さんの歌声に寄り添うように鳴っていました。1つ1つの響きを大切にしているのが伝わりました。

「ソロではなく、アジカンの曲として形にする意味とは何だろうか?」

その答えはステージで演奏する4人の表情が語っていました。

高い緊張感と合間にある緩み。そのなかで、観客以上に自らのライブを楽しんでいる姿。ゆっくりと進む、穏やかな時間。

彼らが今、鳴らしたい曲を鳴らす。

それが新たなアジカンらしさを作っていくのではないでしょうか。

ライブでは歌詞の強度が増して聴こえ、ある箇所で感極まって涙が溢れてしまいました。
 

『何かが正しい 僕らに相応しいこと 見つけて それをギュッと握りしめて』
 

この言葉が刺さったことに、自分自身でも本当に驚きました。

脳裏には10代の記憶。

小学校高学年から高校を卒業するまで、学校のクラスメイトと馴染めず、浮いた存在でした。

他人とコミュニケーションを上手く取ることができず、誰とも話さないまま1日が終わる毎日でした。人前で笑うことさえ、封印していました。

クラスメイトと自分の間にある壁が越えられないほど高くなっていきました。

人生において多感な時期は、好きなテレビ・ラジオ番組、漫画、小説などに支えられて乗り切りました。アジカンはまだデビューしていませんでしたが、もちろん音楽も好きで聴いていました。

周りの人が興味を持たないことでも、自分の好きなもの、信じられるものを見つけて、心を守りました。「ボーイズ&ガールズ」の歌詞通りに。

『ギュッと握りしめて』

みんなと同じように生きられないなら、自分なりの正しさを模索していくしかありません。

高校時代までの私は、表現に触れることによって、存在できたと言っても良いくらいです。そのなかで、ずっと変わりたいと思い続けていました。

高校を卒業して、自分のことを誰も知らない街に進学しました。

しかし、長年に渡って閉じた心を開くのは、並大抵のことではありません。気の合う友達は次第にできましたが、些細なことで幾度も落ち込みました。開きかけていたのに、また閉じてしまうこともありました。まるで大きな扉のようです。

開けても次から次へと扉が現れ、辿り着きたい場所は見つかりません。

「そもそも自分はどこに向かって行けば良いのでしょうか? 」

東京で正社員として7年ほど働きましたが、限界が来てしまい退職。コミュニケーションの問題が解決できず、周りに迷惑を掛けてばかりでした。その後、フリーターを経て、今は派遣で無理のない範囲で働ける仕事に落ち着いています。

30代になった現在、「ボーイズ&ガールズ」は10代の自分を掘り起こし、救い上げてくれた感覚があります。あの時は決して間違ってなかったと、肯定してもらったように思います。

最後の歌詞『It’s just begun We’ve got nothing』に重ねて、美しく重厚なギターの音色とともに『All right』を連呼し、曲は締めくくられました。

「大丈夫」

「ボーイズ&ガールズ」がこれほど心に刺さったのは、聴き終わった後「大丈夫」のその先が見え始めたからかもしれません。

ライブが終わった時、曲の余韻に浸りながら拍手を送りました。

曲に潜む「何か」の正体が分かり、扉の先に進めた時、アジカンが表現する一番伝えたいことを受け取れる気がします。

近い未来。

結成30周年公演で、「ボーイズ&ガールズ」が鳴っている光景を想像してみます。

日本武道館。

50代になったアジカンメンバー。

そこに自分が居るのかは分かりません。

しかし、この曲が心に刺さった、いつかの少年と少女が目を輝かせている姿は見えてきます。

今の私と同じようにステージを眺めているのだと思います。

彼ら彼女らが、早く「ボーイズ&ガールズ」と出会えますようにと、2018年から祈っています。

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