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HUBとしてのBase Ball Bear、そして再確認と決意

LIVE IN LIVE〜I HUB YOU〜 『日比谷ノンフィクションⅦ』

「LIVE IN LIVE 〜I HUB YOU〜」『日比谷ノンフィクションⅦ』
 Base Ball Bearはこのライブで彼らは何を示したのか。

 本稿では自分が体験したツアー「LIVE IN LIVE 〜I HUB YOU〜」の東京公演『日比谷ノンフィクションⅦ』について共有するとともに、自分が感じたBase Ball Bearからのメッセージについて記したい。

 最初に、ここ数年の彼らの動向をさらっておこう。
ロックバンドBase Ball Bearは結成15周年、メジャデビュー10周年の「クロスイアー」にあたる2016年にギターの湯浅将平が脱退し、それ以降、基本的にはサポートギターを迎える形でライブを開催してきた。
 それを様々な、しかもBase Ball Bearとゆかりの深いギタリストたちが支えてきた。その様子を存分に味わえるのがファン間で名高い「日比谷ノンフィクションⅤ〜LIVE BY THE C2〜」である。サポートギターにフルカワユタカ(ex.DOPING PANDA)、田渕ひさ子(toddle、ex.NUMBER GIRL)、ハヤシ(POLYSICS)、石毛輝(love film、the telephones)の計4人を迎えている。
 その後彼らは技巧派ギタリスト弓木英梨乃(キリンジ)をサポートに迎え、新アルバム『光源』を発表し、2つのツアーを経てきた。

 こうしてさまざまなアーティストの支えを経て、「窮地」から抜け出した彼らは、2018年、サポートなしで、「完全なスリーピースとなったBase Ball Bear」というコンセプトの下にツアー「LIVE IN LIVE」を開催した。
 その集大成として、対バンツアー「LIVE IN LIVE 〜I HUB YOU〜」シリーズが現在行われている。
(10月13日になんばHatchでキュウソネコカミ、10月21日に日比谷野音でRHYMESTER、ペトロールズとともにライブを行い、11月11日には名古屋DIAMOND HALLにてthe pillowsと開催することが決定している。)

 また、小出祐介(Vo./Gt.)が盟友・福岡晃子(チャットモンチー済)とともに繰り出すソロプロジェクト「マテリアルクラブ」が始動し、ますます「何か」が動きだす予感を感じていた。

 これまでの「窮地脱出」という文脈から抜け出し、「新たな道」を歩み始めた彼らが示してくれるものに期待を寄せ、自分は野音へと向かった。

(※以下ライブレポート。あくまで本稿の主眼であるBase Ball Bearに主眼を置くことはご了承願いたい。また、セットリストの詳細についてはネタバレ防止等の観点から省略する。ただし、一部本稿の趣旨上演奏した曲を挙げることもあるため、注意されたい。)

 ライブ当日は綺麗な秋空。未だかつて日比谷ノンフィクションは一度も雨に遮られていないという。

 辺りが暗くなり、ペトロールズの演奏がはじまり、観客のテンションは高揚していった。
 彼らの演奏は耽美な雰囲気の中に熱い雄弁さを持ち合わせていた。アーティストの持つ技量、そこから生み出される即興的な演奏。こうしたものが観客を奥底から突き動かしていた。

 そんなペトロールズとは対照的に、全力で「俗」(本人達談)をぶっかましてくるRHYMESTER。
 ヒップホップ特有のコール・アンド・レスポンスで観衆との一体感を高め、あえて「俗」な表現で社会に刺さるアイロニックなリリックをぶちかましていく。
 一つ前のペトロールズとは大きく手法が違う。ターンテーブルとマイクだけでこうも客との一体感を実現しメッセージを発信するRHYMESTERから、本ツアーの特徴である「多様性」を味わうことができた。

 そして最後にBase Ball Bear。今夜の彼らはどんな演奏をするのだろう。そんな思いを観客一人ひとりが思ったにちがいない。

 ホームグラウンドであることから観客との一体感は言うまでもなく、見る者全員が幸福な笑顔を浮かべていた。
 またメンバー一人ひとりもそれぞれの個性を輝かせていた。ベースとともに新たなチャップマンスティックを抱え、美しい旋律を鳴らす関根嬢。活力みなぎる笑顔でドラムを叩く堀之内。そしてクールながらも最高にロックなギターソロをかまし、永遠のテーマである「青春」を歌う小出祐介。
 

 ライブの大方の様子を語ってきたわけだが、では一体このライブを通して、今のBase Ball Bearが意図していたものは一体何だったのだろうか。自分が思うに、大きく二つの側面があると感じられた。

①新しいサイクルを生み出す「HUB(ハブ)」としての抱負
 これは明快なメッセージだったように思う。本ライブは3バンドともスリーピースバンドという共通点を有している一方で、音楽性やそのスタイルはダイバーシティ溢れるものであった。こうして観客側に新たな「出会い」をもたらした。
 またそうした「出会い」を経た自分のような一人一人の観客が、それぞれが感じたものを発信していくことによって、新しいサイクルが生まれるのではなかろうか。
 「人」、「音楽」、「場所」。様々なものの「HUB(ハブ)」として活動していくという抱負とともに、新たな価値を生み出す循環機能を作り出そうとしているように思えた。

②ロックバンドとしてのBase Ball Bearの再確認と決意
 上述の通り、つい先日、小出祐介主宰のプロジェクト「マテリアルクラブ」が始動し、『00文法』『Nicogoly』の2曲が11月発売予定のアルバムに先立って配信された。
 こうした文脈において、このライブは今後のBase Ball Bearのあり方を示唆するものであったように思う。
 セットリストには珍しい曲も含まれていたものの、個人的には「これぞロックバンドBase Ball Bear」という感触であった。
 理想の青春を歌う曲、初恋の相手がアダルトビデオに出て思い出が脆く崩れていく曲。世界の見方を再定義する曲。そして孤独と戦う曲。これら全てが混じりもやもやしていて何かを探し求めている状態こそが「青春」で、その永遠のテーマに収斂していくことこそがBase Ball Bearではある。そのように感じた。
 DTMでもラップでもアイドルでも「なんでもやっちゃう音楽グループ」ではなく、ソリッドなポップで、何よりも生音・人力にこだわる「ロックバンド」を志向しているのだ。こうした実存的なメッセージが隠されていたのではなかろうか。
 

 新たな役割を果たしていくと同時に、従前のテーマ・あり方を再確認しさらに確固たるものとなったBase Ball Bearを、諸手を挙げて歓迎するとともに、大きな期待を寄せていきたい。

 最後に『日比谷ノンフィクションⅣ』(2015年6月13日)でのMCを引用させていただき、この音楽文の終わりとさせていただきたい。

《だから次やる曲なんかも打ち込みいれたら、もっと多分カッコよくなると思います。おそらく。
みなさんの言う、聴きやすいとか、スマホで聴きやすいとか、mp3とかでも聴きやすいとかなると思うんですけど、僕らはそれをやりません。
なぜなら僕らはロックバンドだからです。次の曲聴いてください。》

『Tabibito In The Dark』

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