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「スウィート・ジェーン」は「人生」そのもの

ルー・リード、5年目の命日に思う

先日のYahoo!ニュースに「『10月27日はなんの日?』ルー・リードの命日 伝説のロック詩人、死から5年」という記事が上がっていました。元々はビルボード・ジャパンの記事です。もう5年か〜。年月の経つのは早いものです。
 
 

私は50代半ばで、ロック・リスナー歴もかれこれ数十年。好きなミュージシャンも好きな曲も、それこそ無数にあって、そんな大好きな曲たちを聴き続けて今に至っていますが、その中で一番多く聴いた曲はと言えば、おそらく、ルー・リードの歌った、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「スウィート・ジェーン」です。

この曲はルー・リード自身もお気に入りの一曲だったようで、ライヴでは必ず歌われていたようです。数枚リリースされているヴェルヴェッツやソロのライヴ盤にも、常に収録されていました。ちなみに私が特に好んで聴いていたヴァージョンは、’84年リリースのルー・リードのソロ・アルバム「ライヴ・イン・イタリー」のテイクです。

ひたすら循環するスリー・コード (正確には、アクセントでBmが入るので4つのコード)を奏でるギターと、速くもなく遅くもないリズムに乗って、淡々と歌われる歌。こう書くと身もフタもありませんが、実際聴くと、循環するコードとフレーズがボディ・ブローのようにじわじわと効いてきて、リスナーに大きな開放感を与えます。ロックンロールのマジックが宿った一曲です。

この歌は既に名曲として知れ渡っていて、好きな方は世界中で少なからずいるのではないかと思います。カバー・ヴァージョンもいくつか聴いた事があります。日本人では、ザ・ルースターズが昔ライブで演っていました。
 

以上、ルー・リードやスウィート・ジェーンを全くご存知ない方に向けての前説。ここからが本論です。
 
 
 

20代のある時期、私はこの曲を毎日聴いていました。比喩ではなく、ほんとに毎日です。ルー・リードの命日を知り、その事について考えてみました。

この「スウィート・ジェーン」、音も言葉も実に淡々と進行する曲ですが、一応ヤマ場があります。
最後の方で ”Life is just to die” と歌う箇所です。淡々としたボーカルが、心なしかここだけ、少し力が入って歌っているように聴こえます。
だからがんばろうよとか、悲嘆するとか、ニヒルになるとか、そんなふうではなく、「終わってしまうけど、それがどうしたの?当たり前の事じゃないの(笑)」、そんなふうに楽観的に聴こえます。ロックンロールだからでしょう。
数枚のライブ・アルバムでは、このフレーズ “Life is just to die” の “Life” を、2度繰り返して歌っています。このフレーズは、絶対にオーディエンスに伝えたかったんだと感じます。
 

なんで私はこの曲を毎日聴き続けていたんでしょうか。おそらく、日々「確認」したかったのだと、今になって思います。
人間というのはどんなふうに生きても、時が経てば、生まれてきたのと同じように死んでいく、という事実の確認作業。それを自分に言い聞かせる為に、毎日毎日、お坊さんが毎日お経を唱えるように、私は毎日「スウィート・ジェーン」を聴いていたのだと。今となってはそんな気がします。

人はそれぞれ、気がついたら生まれていて、気がついたら、ポンと、思いもよらない環境に投げ出されていて四苦八苦して、更に気がついたら歳を重ねていて、そのうちおそらく自分でも気がつかないままに死んでしまうのでしょう。変な言い方ですが、死んでから「ああ、自分は死んでしまったんだな」と気がつくのではないのでしょうか。(もちろんそんな事はありませんが 笑)

その頃、私は自分がそのうち死んでしまうという事など、考えた事もありませんでした。日々それなりに山あり谷ありで忙しく、そんな事を考えるヒマもなく、徹夜をしても深酒をしても大丈夫だったし。
だけどもルー・リードは、この曲は、そんな当時の私をせせら笑うかのように、淡々と、これといった起伏もなく、人々の日々のささやかな生活の描写及び、いつしか人は必ず死ぬものだと、静かに諭すように歌っている。
そして、決してドラマティックな曲ではないけど、歌詞を読みながら聴くと何故だか心が動かされる。若かりし頃の自分はいつしか、もしかしてこれは、本当にほんとうのことを歌っているような気がする、重要な気がする、と何故か直感的に感じました。

速くもなく遅くもなく、メロディの起伏も少なく淡々と始まり淡々と終わっていく、スウィート・ジェーン。これは正しく、僕らの人生そのものじゃないか、と。
あとこれは単なる私の妄想ですが、ルー・リード自身も、「スウィート・ジェーン」を歌い続ける事によって、自分自身の生の立ち位置を確認し続けていたのではないのでしょうか。

「だからこそ、もしやりたい事があるならちゃんとやっておきなよ」歌の最後のフレーズは、そう歌っているように、私には聴こえました。その時の思いは、今になって自分の行動や思考回路に影響が出てきていると感じます。
 
 

50代の半ばにもなると、友人に会うと思わず健康の話題になり、ポツリポツリとですが、鬼籍に入られた知人もいらっしゃいます。そんな今だからこそ、「スウィート・ジェーン」は、若い頃よりも一層リアルに、更に深く味わえるのではないか、もしかしたら一生モノの曲なのではないかと、聴き返して思った次第です。
ルー・リード5年目の命日に、あらためて合掌。

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