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2017年5月8日

鳥海 (36歳)

荒吐2017 Theピーズ ライブレポート

#ピーズ武道館加担

 4月30日、ARABAKI ROCK FEST 二日目の磐越ステージ。時刻は14時15分。Theピーズの登場だ。正確な開始の時刻は14時30分なのだが、大木温之、安孫子義一、佐藤シンイチロウのメンバー3人が各々サウンドチェックを始める。とは言っても、この時間も楽しんでしまおう、というのがピーズ(特にはる)であり、それを知っている客もすでに結構な人数が集まっている。
 ほぼ毎年、荒吐に出演しているピーズだが、今年は30周年スペシャルということで、文字通りスペシャルな企画が用意された。ピーズにゆかりのあるゲストが多数登場するといったものだ。20周年の時に、渋谷AXでとても似た企画のライブをやっていて(DVDになっている)、その時の祝祭感も忘れられないが、今回は荒吐でやるということ、そして何と言っても、6月9日に武道館公演を控えていることで、祝祭にプラスした何かが満ちていたのは言うまでもない。
 気付くとはるはとっくにベースを置いていて、自由に喋り出している。「ピーズもついに30歳になってしまいました。」「あ!今の音、外にも出てたの?まずいゲップを聞かれてしまった!」「今日のメンツで武道館経験してないの、俺とアビさんとトモ(TOMOVSKY)だけなんだって。武道館童貞。童貞3兄弟!」などと言っていたと思ったら、メンバー3人慌ててステージ裏に走りだし、記念写真を撮りに行ったりと、ご機嫌であった。そのあとは双子の弟でもあるTOMOVSKYとはるでステージを徘徊。トモフは武道館の宣伝はっぴ(この日のゲスト全員着用)を両手でバッと開くと、さらに武道館宣伝Tシャツを着ていて、客がおー!となったところで、マイクを通さずに「Theピーズをよろしくお願いします!!」と叫んだ。なんだか涙ぐんでしまうようなシーンであったが、はるは徘徊を続けていた。
 ほんの少しの間だけステージから誰もいなくなり、本番を知らせるジングルが鳴ると、大型スクリーンに、大木兄弟のファンを公言する作家の伊坂幸太郎からのメッセージ(ピーズのサイトに掲載中)が映し出され、メンバーが正式に登場。一曲目は「ドロ舟」だ。実にピーズらしい。一蓮托生泥航海、と歌い、武道館までドロ舟で行こうというのか?二曲目では新曲の「ブラボー」を披露し、進行形のバンドであることもしっかり証明してみせる。にしてもだ、今日もピーズの音楽はかっこいい。はるのキャラや詞の世界を抜きにして、音楽的要素だけをとってみても、とてつもないバンドであることを実感させれる。
 そしていよいよ最初のゲストが登場する。THE COLLECTORSからギターの古市コータローだ。上半身裸にはっぴを羽織りギターを持つ姿にアビさんが「なんで様になっちゃうの!?」と驚く。3月に武道館公演を成功させたばかりのコレクターズ。はるは「最近、筆おろしして・・」なんて言っていたけれど、古市のギターの音を聞くや、「コータローさんのギターの返しを少しください」とスタッフに注文して「これ、今日絶対いい!!」とまるで自分がキッズに戻ったようにはしゃいでいた。そんな古市のギターで鳴らされたイントロで大歓声が起こり、名曲「グライダー」へ。10年前も10年先もおんなじ青な空をいくよ。今日の企画にぴったりの歌詞だ。そう、そしてこの日は快晴で、青空が広く、山も良く見え、最高のロケーションだった。もう雨バンドのイメージはこの数年で無くなったと言ってもいいかもしれない。古市は当たり前のようにかっこいいギタープレイをして颯爽と去っていった。
 続いて、こちらも2015年に初の武道館公演を成功させたフラワーカンパニーズから鈴木圭介が「とどめをハデにくれ」を歌う。ピーズの武道館が決まってから、フラカンのライブでもプレイしている曲で、なんといっても鈴木のキャラと曲の相性が抜群に合う。登場時に、古市との対比からその背の小ささをいじられていたが、そのボーカルはとても大きく、またとても開かれたものだった。
 このいい流れに乗っかって出てきたのは、the HIATUSをはじめ様々なバンドで大忙しのウエノコウジ。はると同じピックを使っているらしく、困った時はウエノ君と言うはるのベースをそのまま渡されプレイ。となると、はるがハンドマイクで歌うのか?と思われたが、もう一人ゲストを呼び込む。「スペシャルゲスト!THEトータス松本~」とはる。「THEトータスってなんやねん!」「そこは処理してよ?」「処理したやん!もう突っ込んだやん!」と、若手時代から親交があるだけあって、絶妙(?)な掛け合いをしていた。曲はウルフルズでカバーもしている「実験4号」。はるはふわふわ揺れながらコーラス。しかし、ピーズの曲をここまでソウルフルに歌い上げてしまうとは。それでいて、気負うといった感じもなく、横にならんだトータスとはるが実に気持ちよさそうだ。過去にピーズが活動停止した時期、ウルフルズもベースのジョンBが一度脱退した時で、トータスははるをベースで誘ったことがある。はるがウルフルズで演奏することはなかったけれども、こうして今、二人が笑顔で歌っているというのも感慨深いものがある。曲が終り、ウエノからベースを手渡されたはるが、「あいつ凄い音でかくない?」と言うと、すかさずアビさんが「すっごいやりやすかった」と返し笑いに包まれる。「さすが、ミッシェル・ガン・エレファント!」とはるが唸ってから呼び込んだのは、怒髪天の増子直純。荒吐会場内で、居酒屋の大将としての設定の仕事の合間のため、ずみちゃんのキャラのままピーズの武道館の日付が書かれた幟を持って登場。思えば2014年に怒髪天が武道館を成功させてから、武道館バトンなるものが生まれた。意図したものではないと思うが、そのバトンを逆からコレクターズ、フラカン、怒髪天と返すような出番順になっていた。怒髪天はこれらのバンドを常に全力で応援してきていて、今回は勝手にTシャツを作り、それを赤字補填用としている。これはバンド結成から35年かけて、武道館に辿り着いた怒髪天だから許されることだと思う。そんな増子が歌うのは「日が暮れても彼女と歩いてた」。少し意外な選曲に思われたが、しっとりと歌い上げる増子の歌唱が抜群に効いた。この名曲を完全に自分のものにしていた。
 お次は「奥田民生先生~」とはるが呼び込むとギターをぶら下げてOTが登場。「民生君は同い年なんだけど、いまだに敬語で喋っちゃうんだよね。タメ口聞けない。」とはる。OTに「そんなことないでしょ?」と言われると「そうか?」とタメ口で返していた。そんなOTも「俺もトモ君は君付けなんだけど、なぜかはるさんって呼んじゃう。」かつてO.P.KINGで一緒にツアーまで回っていたのに、その関係性が面白い。曲は「底なし」。演奏後はるが「みんな、楽器で主張するねー」と言っていたが、奥田民生のソロバンドでやってもまったく違和感がないくらい演奏も歌もハマっていた。この日の全ゲストに共通していたのは、ただお祝いに駆けつけただけではなく、しっかり自分流に消化して、演奏や歌唱をしていたところだろう。
 ここで紅一点、ピーズ結成当時はまだ生まれていないSHISHAMOの宮崎朝子が、唯一の赤はっぴでステージへ。とにかく大木兄弟の大ファンで、過去の荒吐でも大木兄弟との記念のショットをツイッターにあげていたし、SHISHAMOのライブの出囃子がピーズだったりするらしい。そんな宮崎が歌うのは「クズんなってGO」。数え切れないほどピーズの曲がある中で、みんなベストな選曲をしていると思う。宮崎は歌詞通り歌っているのだが、ドラムのシンちゃんが曲終りで「うすぺったいじいさんが~のとこで、ドキッとするよね」と自虐的に言っていたが、これには後ほどオチがつく。
 ここで再びフラワーカンパニーズからギターの竹安堅一を呼び込んで、始まったのは「デブ・ジャージ」。いつの頃からかこの曲はアビさんがボーカルをとることになっており、アビさん、ギターは持っているもののほとんど弾かずに歌う。その分、竹安のギターが際立ち、と思いきや、締めの一番いいとこだけアビさんが弾いて、はるがそれに突っ込んでいた。思えば、ピーズとフラカンも過去にヨサホイツアーと題して、一緒に旅をしていたりと、そんな仲の良さが窺えるシーンでもあった。そして時に荒々しく、なんといっても楽しそうにギターを弾く竹安が印象的だった。
 まだまだゲストが続く。「さわお君とPeeちゃん!」と呼ばれたのは、ピロウズの山中さわおと真鍋吉明。シンちゃんはピロウズのメンバーでもあるから山中が「ここにピーズとピロウズが全員揃った」というとすかさずはるが「シンイチロウズだ!」と。続けて山中が「さっきSHISHAMOの朝子ちゃんがうすぺったいじいさんがと歌った瞬間、スクリーンにシンイチロウのアップが映されてて」と話し爆笑に。そんな中一番笑っていたのがシンちゃんだったかもしれない。この豪華なメンバーで披露されたのは「このままでいよう」。歌詞的に聴くものによってはあまりいい意味でない「このまま」かもしれないが、それでも山中の粘り気があるボーカルで、仲間はみんないい奴だよ、と歌われるとそれだけでジーンときてしまう。そして大木兄弟に共通するテーマとして、最終的に実は前を向いている、向かざるを得ないといった類の初期の名曲だと思う。
 そして「Peeちゃんはもう少しアビさんとギターでいちゃついてて」とはるが言って、真鍋を残し、ボーカルは真心ブラザーズのYO-KINGに。先日亡くなったチャック・ベリーの追悼の意味があったかどうか、かつてO.P.KINGで一緒に作った曲の、人生チャック・ベリーだから~、の部分を歌って迎えるはる。そして曲は、これもまた真心の持ち曲にあってもおかしくないぐらいぴったりの「やっとハッピー」。はるが、そしてピーズが活動再開するのに大きく関わっているYO-KINGが伸びやかに歌う。そして気づけばアビさんと真鍋はいちゃつくどころかギターバトルの様相を呈していた。祝辞を述べたYO-KINGが軽やかに去っていくと、遂に最後のゲスト。千葉が生んだ天才双子の弟、とはもちろんはるは言わず「童貞3兄弟の弟・・」なんて言っていると舞台袖から「ちゃんと紹介しろー!!」とTOMOVSKYが再び(?)登場。「どうすんのトモ?お前一人だけ童貞になっちゃうぜ?」と兄に言われると、「今日が、今日が俺の武道館だあああ!!」と凄い切り抜けかたと、凄い客の沸かしかたをして「シニタイヤツハシネ」に。はるは照れ隠しからか「この曲10分あるからトイレ行っていい」なんて言っていたけど、盛り上がりは最高潮に。トモフはカンペこそ手に持っていたけど、終始動き回り、途中ではミック・ジャガーが降りてきたと言い、その動きの真似をしたり、アウトロで歌唱部分が無くなると、やることが無くなったと言って、なぜかピッチャーの真似を。一塁に牽制球を投げてから、いざ投球すると、その見上げた角度から、なぜかホームラン級の打球を打ち返されていた。最後の最後は筒のおしりについたひもを引っ張ると、紙テープが飛び出すやつを、曲の終りと同時に炸裂させて、自身もステージ下に落ちるという謎を残して・・なんて言っているそばから、すぐさままたピーズの3人だけで「生きのばし」を演奏。お客さん大盛り上がりの中、トモフはステージに這い上がり逃げるように去っていった。あの日あの空拝めるのはあの日のボクらだけ 精々生きのびてくれ、というこの曲の最後の詩がこんなに似合う場所は他にないかもしれない。
 最後に演奏されたのは「焼きめし」。シンちゃんの力強いドラムが鳴らされると、まだ残っているゲストが全員出てきて、それぞれ幟を振ったり手拍子したり歌ったりと、お祭り状態に。ピーズの為に、ピーズだからこそ、こんなに素晴らしいミュージシャン達がお祝い、そして応援してくれている。はるは最後「武道館、いってきまーす!」と笑顔で言って去っていった。ここにいた人にはこの東北の地、荒吐の会場から武道館までの道がまっすぐに見えたに違いない。そして、その道は決して一本ではなく、日本全国にいるピーズの音楽にやられてしまっている人達が、それぞれの道を辿って6月9日に武道館に集う。そしてピーズは多分、いや必ず、最高のロックンロールを聴かせてくれる。

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