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例えば、「おめでとう」って言葉

チャットモンチーの誕生を祝う

ライブビューイング帰りの電車。余韻に浸る。こんなバンドが存在しているんだ、と思う。
 

チャットモンチーとの出会いは、確か去年。好きだったバンドが出演したフェスをテレビで見たときだった。
ちょうどその時期ロックバンドにハマり始めていて、バンド好きな友達にオススメされた曲をとりあえず片っ端からYouTubeで聴いていた頃だった。みんなが知らないマイナーなバンドを知りたくて探してみた時期。ついでに他のバンドも全部見よう、と好きそうなバンドをチェックしながら録画を見ていた。

そこに現れたのがほかでもなくチャットだった。
「チャットモンチー」という名前は知っていたけれど、その頃の私は恥ずかしながら昔のグループだと思っていた。ロックバンドだということも知らなかった。
法被を着てにこやかに登場した2人が楽器の準備を始める。「2人組なんだ」とその時率直に思った。
曲が始まるとなんとなく聴いたことがあるような気がした。サビまで来てようやく分かった、シャングリラ。聴いたことある。
どっちが先だったかは思い出せないけれど、「風吹けば恋」も歌っていた。何かのCMの曲か、その時はこっちの方が聞き覚えがあったかもしれない。
 

それから少し経った頃、Twitterで「チャットモンチー完結」というニュースが流れてきた。なんとも言えない気持ちだった。そういえばあれ以来詳しく聴いていなかったなと思い、とりあえずリツイートだけしてYouTubeで聴いてみた。まずは前述した2曲、あとは再生数の多いものから、といった感じに。

聴いたことはなかったけれどコメントで絶賛されている曲があった。「染まるよ」。
ちょうど私は4年片想いしていた年上の人にダメ元で告白した頃で、
『いつだって あなただけだった 嫌わないでよ 忘れないでよ』
この歌詞がまさに染みた。転んだ後に擦り傷のある足でお風呂に入った時のような、指先に棘が刺さった時のような気持ちになった。
 

この頃ようやく、チャットモンチーがスリーピースだったことを知った。
 

そうして、私の中でブームが来た。YouTubeの曲以外も知りたくて、既に出ているアルバムを全て集めた。中古がほとんどだったけれど、ひたすら聴いた。朝から晩までと言ってもいいくらい暇さえあればウォークマンから曲を流した。
武道館の応募は間に合わなかったが、ライブビューイングがあると知ってすぐに応募した。

ラストワンマンが近づくにつれて徐々に自分の中で寂しさと楽しみな気持ちが入り混じる。10年以上もチャットを応援しているファンは数え切れないほどいるけれど、ファンになって数ヶ月の私もチャットを好きな気持ちはどんどん大きくなる。
注文が遅れていたラストアルバムは、ライブビューイングの前日に届いた。

当日、バイト終わりに着替えとごはんを持って電車に乗って、初めて行く駅に降りた。乗っている間はずっと「誕生」の曲をイヤホンで聴いていた。(前述した「年上の人」がいる街を通り過ぎた時は少し胸が痛かった。)

上映直前の映画館にはたくさんの人達がいる。番号を確認して席につく。武道館の様子が画面に映る。2人が出てくる。曲が流れる。「いよいよだ」と心の準備をした。

本編中は純粋に2人のステージを楽しんだ。なにせ私にとっては初めてのチャットのライブ。画面越しにでも会場と同じ時間が流れている。ここの歌詞やっぱりすごいなとか、二人で演奏しちゃうんだもんなあとか、そんなことを思っていた。そして何より、武道館と、自分のいる映画館、全国の映画館、加えて生配信を見ている人たちがいるんだと思うと、どれだけすごいバンドであるかを肌で感じた。

“チャットモンチーアンサンブル”で演奏された「東京ハチミツオーケストラ」の、壮大な、でもどこか寂しげな音楽に、小学生の時、上級生の合唱をきいて感動して鳥肌が立った時のことを思い出した。「歌ってこんな力があるんだ」。そう思う気持ちは数年経った今でも変わらない。

笑顔で楽しそうに演奏する二人を見ると、完結することを忘れ、「Last Love Letter」のPVのようにおばあちゃんになってもチャットがあるんじゃないかと思ってしまったほどだ。
アンコールで二人が登場した時あたりから「そうだ、これで最後なんだ」と思い出した。
 

「シャングリラ」「風吹けば恋」
私がチャットに出会った曲。
決して暗い曲ではないけれど、何故か涙が溢れていた。シャングリラを聴いて泣く日が来るとは思っていなかった。そして初めて誰かの歌で泣いた。好きな曲はあっても、共感して涙するとかそういった経験はそれまでなかったと思う。この日も正直泣くほどではないだろうと思っていた。

そして二人が舞台に腰掛けて話し始める。「今優しい言葉かけられたらえっちゃんがやばい」と笑っていたあっこちゃんがふと涙を流し、それを見て私の目から涙がボロボロこぼれた。強く見える人の涙は、不思議な力があるようにも思えた。心臓をガシッと掴まれた。

えっちゃんが言葉を詰まらせながら歌った「サラバ青春」は全てを表していた気がした。まさに最後にふさわしい曲。
正直に言うと、泣いてしまうなら何故、とその時感じてしまった。こんなに楽しそうで、こんなに寂しそうだから。二人が決めたことだと分かっていても。
それが「解散」ではなくて「完結」である意味をその時理解した。決して仲間割れとかではなく、あくまで変身を遂げてきた2人の最終形態、全速力のままゴールテープを切っただけのことなのだと私は勝手に思っている。
 

「びろうど」が流れてきた時、心が一気に浄化されたような気がして、二人が煙に消えていって場内が明るくなっても涙は止まらなかった。既に湿ったハンカチを握りしめた。
乗るはずだった電車を逃して、はじめて終電に乗って帰った。
 

私は、くみこんのいないチャットモンチーしか知らない。きっと昔からのファンの方からすると1mmにも満たないほど浅すぎる知識だろうと思う。
でもチャットの曲は歌詞を見て誰が書いたものかすぐにわかる。覚えているわけではなくて、全部違うのだ。
世界観。個性。気持ち。経験。曲調もあるかもしれないけれどその曲が持つ雰囲気とか。私は楽器のことはよく分からないからどこのフレーズがすごいとかテクニックがどうとかはさっぱりだけれど。
そしてそれは、誰が何と言おうと正真正銘チャットモンチーの曲なのだ。
決して簡単ではないと分かるけれど簡単にやっているように見せてしまう、いろんな顔を見せるのがチャットモンチーであって、そんなチャットモンチーを私は好きになった。

こんなに大きくてかっこいいバンドがいるのか。

きっと「解散」に対して祝福を送る人なんていないけれど、チャットの「完結」に対してたくさんの人が「おめでとう」を言っていることはとても素敵なことだと思う。まさに卒業する時のそれと同じような。

明日も明後日も来年も10年後も、CDのケースを開けたらそこにチャットモンチーがいる。
“CDが売れない時代”に私はCDを買う。
 

心から、完結おめでとう。そして誕生おめでとう。
遅ればせながら、ラストワンマンのDVDが届いた記念に。

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