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ラフなのに品がある

キーボードから紐解くSuchmosの豊かな土壌

以前投稿させて頂いたSuchmosの記事について、彼らのファンの多くに見てもらえ、直接DMで感想までも頂けて、僕としては非常に忘れられない幸せな経験となった。

11月末の横浜アリーナに向けて、Suchmosへの期待がますます高まり、僕自身も今月は気持ちがずっと浮わついている。だからまたSuchmosについて投稿させて頂こうと思った。彼らのことが頭から離れず、文字にして発散しないことには横浜アリーナまで待てないのだ。

Suchmosファンのみならず、Suchmosについて多少かじった方なら理解頂けると思うのだが、彼らの魅力にはジャンルにとらわれない音楽的引き出しの豊富さが挙げられると思う。ジャズなのかロックなのか、ソウルも感じられるしファンクでもある。期待を超えてくる多彩な表現がファンを飽きさせない。

その中でも僕がずっと驚かされ続けてきたのが、キーボードの出す音の幅広さだ。キーボード担当のTAIHEIはあれほどの広範囲な音を一体どういう感性を頼りに取捨選択して繰り出しているのか。常人の僕にはさっぱり見当がつかない。

キーボード、つまり鍵盤は、食事で例えると調味料のような役割だと僕は思う。塩をひとつまみ加えるだけで味は大胆に変わるし、量の塩梅でもガラリと変わる。多すぎると途端にしょっぱくてマズくなり、少なすぎるとまた味気ない。端から見たらもしかすると存在感の小さなものかもしれないが、実際には完成形においてかなりの部分を担っているキーマン。それがキーボードだと思う。YONCEはインタビューの中で語っていた。キーボードは楽曲の表情をつくるものだ、と。僕も同感である。

Suchmosの楽曲群は、アコースティック・ピアノにエレクトリック・ピアノ、オルガン、シンセサイザーと、キーボードで出せる音を総動員して作られたものが多い。

新譜では、ミニアルバム『THE ASHTRAY』の楽曲『FRUITS』でシンセサイザーとアコースティック・ピアノ、そしてエレクトリック・ピアノが一つの曲の中で使われている。イントロで早速シンセとアコピによって曲のメロウな雰囲気を決定付け、第2コーラスからエレピが官能的なトーンでボーカルをもり立てる。

オルガンが使われた楽曲だと、Suchmosのアンセム『MINT』、それと『OVERSTAND』だ。『MINT』に使われたのは、おそらくだが、ハモンドオルガンだと思う。オルガンの荘厳さにどこかポップな色味があるからだ。カジュアルなのにどこか尊さを覚える『MINT』。その要因は、オルガンが作り出す厳かな空気感を、上手く楽曲に取り込んだところにあると思う。『OVERSTAND』はオルガン始まりの楽曲で、神聖な空気すら漂う。イントロのどこまでも高く抜けるようなファー、とした穏やかな音は、朝焼けの海辺を漂う空気のように美しい音色だ。新しい1日、新しい世界を聴く者に連想させる。また、キーボード始まりと言えば代表曲『STAY TUNE』もそうで、アナログシンセの不穏なイントロはこの楽曲の代名詞とも言える。

つまり、キーボード独特の電子音もふんだんに盛り込んでいるが、それと同時にアコースティック・ピアノ、オルガンとクラシカルな音色だってなんら違和感なくそっと滑り込ませているのが彼らの楽曲群だと、僕はそう考えている。あくまで彼らはラフでカジュアルなスタンスを保ちつつ、その実品性を保ち、魅せるべき時にだけ魅せる節度をわきまえたバンドであろうとしている。格好つけ過ぎないところが格好いい。

なんだかこれ以上キーボードについて語り始めたら止まりそうにないから今回はここまでにさせて頂く。Suchmosの楽曲はジャンルレスで幅が広い。だから音楽的な知的好奇心をいつも刺激してくれる。音楽はバンドがすべてだとは思わないけれど、バンドの魅力は、目についたほつれを見つけて一度こっそり紐解いてみると、ずるずるずるずると一人一人メンバーの役割が見えてくることだ。全体の印象で捉えていた音楽が、個に焦点を当て直すことで、同じものが違って見える。だから何度も何度も聞き返す。聴くたびに新しい発見がある。終わりのない楽しさがある。これからも、Suchmosを期待してやまない。ひとまず、いざ、横浜アリーナだ。

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