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クロマニヨンズを聞きながら「生きる」

~28年前から咲き続ける情熱の薔薇~

 私が大学を卒業して就職したのは1990年。当時はバンドブームで、日本のロックが最もよく売れた頃であり、中でも人気があったのはブルーハーツだった。90年7月に発売されたシングル「情熱の薔薇」もオリコン初登場で1位を獲得した。

 一方、就職したころの私は不安だった。そこには、自分の能力への不安とともに、職場や社会がやたら古いものに見えて、ロックとかが好きな自分がそんなところでやっていけるのかも不安だった。

 当時のロックではメッセージソングが流行っていたけど、あまり何も考えずに、「とにかく頑張ろう」みたいなものが幅を利かせる一方で、「古い社会とは戦おう、すぐに異議申し立てをしよう」といったものも多かったと思う。そんな簡単にはいかないのに、と違和感を感じていた。

 そんな中で、甲本ヒロト作詞・作曲のブルーハーツ「情熱の薔薇」は「情熱の真っ赤な薔薇を 胸に咲かせよう/花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥の方」と歌っていた。

 そんなにすぐに異議申し立てはできない。しばらくは心のずっと奥の方にしまっておいて良いのだ。だけど、こころの中にしまったものが枯れないように水をあげ続けることだ。この曲はそんなことを教えてくれた。

「情熱の薔薇」の出だしの歌詞は、「永遠なのか本当か 時の流れは続くのか/いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか」である。
 この部分もとても好きだった。一方、当時は、会社や社会では個人よりも集団が大事とされていたし、それがそんなに簡単に変わるとは思えなかった。例えば、当時はセクハラとかパワハラという言葉は無かった。言葉が無かったということは、それらは社会人ならば受忍すべきものということだ。今はこれらのハラスメントは、現実はともかく建前上は受忍すべきものではなくなった。やはり変化はしているのだ。

 ロックを聞きながら、私は何とか仕事を続けてきた。けれど、最近になっても、昔と変わらない世の中にがっかりすることも多い。

 一方で、甲本ヒロトと真島昌利はブルーハーツ、High-Lowsを経て、2006年にはクロマニヨンズの結成を発表、ずっと素晴らしい曲を作り続けている。

 2008年に発表されたクロマニヨンズの「スピードとナイフ」では、サビで「変わらないものなんか 何ひとつないけど/変わるスピードが 違ったんだなあ」と歌われる。このサビでは、「変わるスピードが」のところで音程が上がる。そして「違ったんだなあ」の部分はまた、音程が下がる。私には、スピードの遅さにため息をついているように思える。

 日本のロックの最前線に居続けた甲本ヒロトは、世の中を変えることの大変さを、強く感じていたのだと思う。そんな実感がひしひしと伝わってくるメロディーとボーカルとサウンドなのだ。何回聴いても、素晴らしい。

 毎年新しい作品を発表しているクロマニヨンズは、「スピードとナイフ」から10年後の今年2018年には、シングル「生きる」とアルバム「レインボーサンダー」を発表した。アルバムの中で最近一番良く口ずさんでいるのは、「三年寝た」であり、「みんながんばった/ありがとうございます/もう三年/寝ます」という歌詞が大好きだ。この曲と、シリアスな「生きる」が同じアルバムにあるところが彼ららしい。

 シングルになった、甲本ヒロト作詞・作曲の「生きる」では、中南米あたりの探検家は「出会うものすべてを 待っていた」。そしてサビでは「見えるものだけ それさえあれば/たどり着けない答えは/ないぜ」と歌われる。そこでは「時間なんか 無かった」のだと。

 私は50年以上も生きてきて、大したことはできなかったが、自分にとって都合の悪いことも受け止めるようには気をつけていたと思う。だから、これからも、出会うもの全てを受け止めるようにしていけば、たどり着けない答えはないと信じたい。中南米の探検家のように、時間がかかっても気にしなければよいのだ。変化の「スピード」が遅いのはしょうがない。「スピード」の遅さには、あの甲本ヒロトでさえ、きっとため息をついていたのだから。

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