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What a Wonderful World!!という奇跡

ロックバンド・MONGOL800がみせた素晴らしき世界

11月になって大阪ではジャケットが手放せなくなった頃、わたしは友人とまだ夏の気配の残る沖縄に向かった。目的はMONGOL800主催のフェス、What a Wonderful World!!18である。

平成最後の夏フェスと銘打ったこのフェスは2009年から2年に1度行われ、今年で5度目だそうなのだが、私たちは今回が初参加。初めての沖縄でのライブにかなり浮き足立っていた。
そして、きっといい日になるに違いない、というわたしの予想は、すぐに確信に変わった。

初日の朝の豪雨と、その後の100%の雨予報を覆す奇跡の晴天。ドラマのような展開に観客は湧き、1日目から会場はゆるやかな一体感と幸福感に包まれていた。
近所で開催されるこのイベントを家族で楽しみにきた人も、今日この日のために有給を取って飛行機で飛んできた人も、沖縄県民もそうじゃない人も、みんながみんな思い思いのスタイルでこのフェスを楽しんでいる。ステージの横には真っ青な海が広がっていて、ビーチでは子供たちがはしゃいでいる。まるで音楽の楽園。穏やかで幸せな時間が流れるこのフェスに、わたしはあっという間に魅了されてしまった。

目当てだったバンドも、興味本位で観にいったアーティストも、各ステージに心を震わされ気づけば1日目は終了。ホテルに戻って雨でびしょびしょになった服を片付け、友人とその日1日の余韻に浸る。1日目があまりにも楽しかった分、2日目にも期待が膨らんだ。

2日目も幸せな空気感は続き、様々なアーティスト達がMONGOL80020周年への祝福と感謝の言葉とともに最高の音楽を奏でる。沖縄に集まったミュージックラバー達に、それは真っ直ぐ届く。
瞬く間に時は過ぎ、最後は主催者であるMONGOL800を残すのみとなった。

わたしは、MONGOL800をかなり誤解していたみたいだ。2日目のトリを飾る彼らを見ながら、そんなことを考えた。

小学6年生のときの学年合唱の曲は「あなたに」だった。
高校生の時には、友達とアコギで「小さな恋のうた」を弾き語った。
モンパチとの想い出は確かそれくらいだろうか。
小さい頃からなんとなく知っていた音楽、だったけれど、いやだからこそ、私にとってモンパチのイメージはその2曲以上でも以下でもなくて、「有名な曲を作った沖縄のいちアーティスト」にすぎなかった。

それがどうだ。

目の前のステージで演奏するその3人組は、飾らない正真正銘のロックバンドだった。

1曲目の「小さな恋のうた」から彼らは凄かった。巻き起こるシンガロングと歓声に答えるような力強い演奏で、モンパチがこのフェスにかける想いがひしひしと伝わってきた。

この2日間で痛感したことだが、誰もがわかる有名曲を持っているバンドは強い。それは例えば初日のORANGE RANGEの「以心電信」であったり、2日目のPUFFYの「アジアの純真」であったりするのだが、曲ひとつで空気が一変するその瞬間は鳥肌ものだった。
ちいさな子供がノリノリで口ずさんでいたり、隣のステージで次のアーティストを待機していたおじさんがいつのまにか曲にあわせて踊っていたり。2日間で何度も目にした光景である。
前にとあるバンドのボーカルが、自分の出番のときに違うバンドのTシャツを着た客が盛り上がっているのを見るとすごく嬉しくなる、といった話をしていたが、アーティスト側にとっても客側にとっても、フェスの醍醐味のひとつはそこじゃないだろうか。
彼らはそれを体現するかのように、ほんとうに楽しそうに、嬉しそうに、愛おしそうに1曲目を終えた。

そこからも怒涛のセットリストで会場は湧き、フィナーレに向かって時は進んでいく。
爽快なパンクロックからバラード、ときにはエイサー隊を迎え入れた沖縄全開の曲まで歌い上げる彼らには脱帽した。それは私が思い描いていた「有名な曲を作った沖縄のいちアーティスト」を超えて、20年のキャリアを積んで成熟したホンモノのロックバンドだった。気づかないうちにいろんな色眼鏡でモンパチを見てしまっていた自分にとってその感覚は新鮮だったし、モンパチってこんなに格好いいバンドなんだ…!といい意味で期待を裏切られた気持ちだった。

アンコールの最後の最後に彼らが選んだ曲は「DON’T WORRY BE HAPPY」。ステージには出演者が勢揃いして、このフェスの成功とモンパチ20周年を祝福していた。
観客ももちろん大盛り上がりで、皆んなきらきらした眼差しでステージを見上げている。
モンパチのフェスといえどももちろん集まるのはモンパチのファンだけではなくて、そこにはある特定のアーティスト目当てに来た人だって、モンパチをほとんど知らない人だっていたはずだ。私だって、彼らをそんなに知っていた訳ではなかった。でもその瞬間は、会場にいる全員がMONGOL800のファンだった。ロックバンド・MONGOL800が全員の魂を揺さぶる瞬間をわたしは見た。
みんなでこの曲を合唱して、最高の2日間は幕を閉じた。

「11月の沖縄が1番いい。そんな沖縄を皆んなに見てもらいたい。」
ボーカルのキヨサクさんはそんな想いから、フェスをこの時期に設定したそうだ。実際に沖縄は昼間は半袖で十分、ときおりいい風が吹いて、本当に過ごしやすい気候だった。
でも、モンパチが本当に見せたかったのは、きっとそれだけではない。
音楽でみんながひとつになれる瞬間、そのときの感動や幸福。そして、そんな音楽の溢れるこの素晴らしき世界。
モンパチが作り上げたこの空間は、What a Wonderful World!!という奇跡は、私たちに音楽の素晴らしさを再確認させてくれた。

2年後の2020年には、オリンピックだけじゃなくてこんなに素敵なフェスが待っている。その頃にはわたしも社会人、きっと新しい環境に悪戦苦闘しながら日々を過ごしているに違いない。
会社に入ったら今みたいに思い立って沖縄に行くなんてことは簡単には出来なくなるかもしれないけれど。この煌めくような2日間を思い出すだけで、そんな日々がまた沖縄に訪れることを想像するだけで、ちょっと頑張れそうな気がする。

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