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メタルの新時代の幕開け

Parkway Driveをオーストラリアで観て

2018年5月に発売されたオーストラリアの最重要バンドParkway Driveの最新作『Reverence』。このアルバムは前作『Ire』の路線を受け継ぎ、メタルコアというジャンルを超越した新しい世界を私たちに与えてくれた。そんなアルバムを引っ提げて行われた今回のオーストラリアの7都市を回るツアーは、大会場で行われたにもかかわらず早々にソールドアウトしていった。今回私が行ったメルボルンでの公演は、ソールドアウトこそしていなかったものの、7500人収容のMargaret Court Arena(テニスの試合での収容人数なのでスタンディングエリアを含めればもっと入るかもしれない)をほぼ満員にしていた。メタルというジャンルでここまで大きな会場を埋めることができるというのは、ヘヴィミュージックが浸透していない日本ではなかなか考えられない事態であろう。
彼らの勢いはオーストラリア国内だけにはとどまらない。特にヨーロッパでの人気が非常に高く、Download FestivalやRock am Ring、Wacken Open Airといった大型フェスにも多数出演し、セカンドステージのヘッドライナーを務めたこともある。来年のWackenにも出演が決まっているし、スペインのResurrection Fest 2019(日本からCrystal Lakeも出演が決定してる)ではヘッドライナーとして出演が決定。また、来年の1月から2月にかけて行われる自身のEU,UKツアーではすでにソールドアウトしている公演がでてきている。数多くの輝かしい実績を今現在積み上げている彼らは、正に世界のトップクラスのバンドの仲間入りを果たしたと言っても過言ではない。

今回のオーストラリアツアーは、全公演に同じくオーストラリアのデスコアThy Art Is Murderとメタルコアの代表格Killswitch Engageがゲストとして出演した。トップバッターを務めたThy Art Is Murderは1曲目の「Dear Desolation」が始まった瞬間、会場の雑音をすべてかき消すかのような轟音を会場全体に響かせる。ステージ上のメンバーは非常に落ち着いた様子で演奏をしているのだが、その音は本当に人を殺してしまうかのような圧倒的な強さを持っていた。たった30分間のステージで会場後方の指定席に座っていたにもかかわらず、終わった後の疲労感はこの日一番だったかもしれない。
お次はメタルコアというジャンルを聴いている人ならおそらくほとんどの人が知っているであろうKillswitch Engageの登場だ。メタルコアの先駆者としてそのキャリアを積み重ねてきたその実力は確かなもので、安定感抜群の演奏に伸びのあるジェシー・リーチの歌声には、メタルコアというジャンルには少々似つかわしくないかもしれないが、ついうっとりと聴き惚れてしまうものだ。日本でも人気が高い彼らだが、オーストラリアでの人気も勿論高く、「The End Of Heartache」や「My Last Serenade」では日本よりもはるかに大きなシンガロングが巻き起こった。セットリストはおそらく定番の流れだったのだろうが(実際ラウドパークで観た時とほとんど同じ選曲だった)、Parkway Driveの前に十分な満足度を与えてくれるステージだった。

この2バンドだけでも非常に素晴らしいライブだったし、日本国内では中々観ることのできない高い実力を持つバンドを観れたなと思っていたのだが、この日のParkway Driveは、そんな素晴らしい2バンドを遥かに超えた異次元のライブを披露した。

会場が暗転し大きな歓声が会場を埋め尽くす。ステージ上では、暗闇の中で細かく響き渡る爆発。それが収まってくると「Wishing Wells」のイントロが静かに鳴り響く。「Until I’m done!」の咆哮と共に鳴り響く轟音、白を基調とした眩しすぎる照明、その証明に照らされるメンバーのシルエット、どれをとってもカッコいい。この1曲目の曲入りだけで、それまでの2バンドの記憶が一気にどこかへ飛んでいき、まるでこれからParkway Driveのワンマンショーが始まるかのような心境に陥った。これまで数多くの対バンイベントやフェスティバルを経験してきたが、ヘッドライナーのバンドがライブの冒頭だけでその日の記憶をすべてかっさらっていくというのは初めてのことだったかもしれない。
全体的なセットリストはほぼ『Reverence』と『Ire』の、直近2枚のアルバムからの選曲であった。音楽性が変わった2枚からの選曲ということで、昔のガチガチのメタルコア時代が好きだった人にとっては残念だったかもしれないが、そのステージのクオリティは申し分ない。寧ろ、今回のような大会場ではこの2枚の曲がとても似合うなと感じた。特に「Prey」や「The Void」そして「Bottom Feeder」や「Vice Grip」といった楽曲たちは、音源で聴いていた際にはそのキャッチーさに戸惑いを覚える人も多かったであろうが(私もその1人だ)、実際にライブで観るととても楽しい。会場全体が高く手を挙げ、一斉にジャンプして会場を揺らしていく様は、とてもピースフルな瞬間であった。そのような光景を作り上げることができるのは、それらの楽曲が持つキャッチーで乗りやすいリズムが、初見であろうと何度もライブを観てきた熟練のファンであろうと、その場に集まったすべてのファンを無条件に楽しませることができるからであろう。ただ、これらの楽曲の素晴らしいところはただキャッチーであるだけではない。例えば「Prey」や「Bottom Feeder」での後半に入るブレイクダウンは、過去のメタルコア時代の凶暴性を垣間見ることができる瞬間だし、「The Void」のギターリフは全世界のメタラーを魅了するであろう。反対に、「Vice Grip」ではスタジアムロック的なシンガロング要素を取り入れている。それらはすなわち、彼らが昔から続けてきたメタルコアのスタイルと、現在のスタジアムロック的なキャッチーさがうまく融合し、「メタルコア」という狭いジャンルを遥かに超えた、彼ら独自の「メタルコアの進化系」を作り上げることができたということだ。それがParkway Driveのすごさであり、そしてそれこそが、全世界でトップクラスのバンドにまで駆け上がることができた1番の要因なのだと思う。
 実際に過去の曲を生で聴いているとそのことをよく実感する。この日は上記2枚のアルバム以外からは「Carrion」、「Idols And Anchors」、「Karma」、「Wild Eyes」の4曲が演奏された。「Carrion」と「Wild Eyes」では大きなシンガロングが巻き起こり、「Idols And Anchors」と「Karma」の彼らの持つ強力な疾走曲である2曲では、待ってましたと言わんばかりに大きなサークルピットがフロアを支配した。昔から幾度となくライブで披露されてきた曲たちということでその安定感はとても高く、熟練の貫禄を感じる。特に本編ラストに披露された「Wild Eyes」の、クライマックスに相応しい圧倒的なステージングに対して巻き起こる大きなシンガロングは、映画のクライマックスシーンを見ているかのような高揚感と感動を与えてくれた。これらの曲の中にも今の彼らが持つ魅力の欠片を感じることができ、これらの曲が生まれ育まれていったことで彼らが進化していくための強固な土台が構築され、世界的なロックスターにまで成長していくことができたのである。
 
この日のライブではいくつか特別な演出も用意されていた。まずはストリングス隊による四重奏だ。「Shadow Boxing」と「Writing on the Wall」では、音源ではストリングスが収録されているのだが、それを生のライブで完全再現した。特に「Shadow Boxing」では、四重奏による幻想的な雰囲気からゴリゴリのヘヴィサウンドへと移り変わっていく様子が非常に美しい。ほかにも、アンコールでの「Crushed」では、ステージ上で静かに炎が燃え盛り、曲と共にドラムが回転していく。その様子は、正にこの曲のMVを再現しているかのようだ。逆さになりながらも全く様子の変わることのないドラムプレイには脱帽ものである。そして、ラストの「Bottom Feeder」が終わるとともにに天井から『Reverence』のジャケットが描かれた大きな幕が下り、約1時間30に及ぶ素晴らしいステージが終演を迎えた。

私がParkway Driveのライブを観るのは今回で2回目だ。ただ、前回観た時は2ndアルバムの10周年ツアーだったので、その時は過去のParkway Driveのリバイバルライブという感じだったと思う。しかし、今回は最新のParkway Driveを生で観ることができた。それは、今の世界的メタルシーンの最前線のステージを目撃したということだ。約15年にも及ぶキャリアを積み上げ現在のメタルシーンにおける最重要バンドとなった彼らの実力は、多くのレジェンド級のバンドにも引けを取らない、むしろすでに超えているのではないだろうか。これまでラウドパークやノットフェス、オズフェス等でメタルシーンのレジェンドバンドのライブを観てきたものだが、今回のParkway Driveのライブはそのどれをも凌駕しており、私の人生において一番凄かったライブといっても過言ではない。安定感抜群の演奏で繰り出される強烈な音圧やステージを飾る照明、何度も燃え上がる炎、そしてParkway Driveのライブを観て衝動に駆られるオーディエンスたちの興奮など、この日体感したことのすべてを一生忘れることはないだろう。

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