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「メイリンバイブス」を感じて

ZOMBIE-CHANGは野外ステージがよく似合う

10月13日、名古屋の久屋大通公園で開催されたSOCIAL TOWER MARKET 2018というイベントで、僕はZOMBIE-CHANGを初めて目にした。

ニューヨーク帰りかと思うくらい奇抜で洗練されたルックスはとても人目を引いていて、特に男性は熱いまなざしを向けていたように思う。人形のように目鼻立ちの整った綺麗な顔に、ファッションモデルのようなスタイルの良さ(実際にモデルだったらしいが)、そして金髪のカーリーヘアが人目を引かないわけがない。「ああ、芸能人だなあ」と遠い目をして僕はステージが始まるのを待っていた。

だけど、MCを始めた彼女の声で、オーバーかもしれないけれど僕はズッコケそうになった。彼女の声はなんというか、良くいえば飾り気がなく、率直にいうと締まりのない子供みたいな声だった。子供が公の場で何を言い出すのか分からない不安というものがある。例えば、映画館で突然騒いでしまわないかとか、電車の中で大声で泣きじゃくってしまわないかとかで、そんな印象を彼女に抱いてしまったわけだ。ハラハラしながら僕は見ていたけど、同じように周りの皆も彼女を目で追っていて、何か人を惹きつける魅力があることはたしかだなとは思った。
 

実は僕はこのイベントにスタッフとして参加していたため、彼女とそのバンドメンバーを間近にしている。幸運にもチラッと控室で円陣を組んで掛け声を上げる様子も伺えた。控室から飛び出してきた彼女は、バンドメンバーの肩へ後ろから両手を載せ、「さあ、行こう行こう!」といった様子でぴょんぴょんとジャンプしていた。思わぬハイテンションに僕は多少面を食らったけど、とても眩しい光景に映って今でもちょっと鮮明に覚えている。

実際のステージでもずっとハッピーな調子で会場を沸かしてくれた。体を上下に揺らしながらキーボードを叩いて、頭を左右に振って金髪を揺らし、そして笑顔を弾けさせながら歌っていた。ローファイな電子音にファンシーな彼女の歌声という組み合わせは、あまり他に類を見ないが、だからといってサイケ過ぎないのが絶妙にいいなと思った。
 

久屋大通公園という公園の一角の、野外に設けられたステージだった。野外ステージはZOMBIE-CHANGにぴったりだと思った。彼女の表現したい世界はイヤホンよりもライブのほうがより映え、もっというと、青空の下のほうがより輝きを増す気がする。陽射しを反射させて光る機材や、風通しの良い開放的な舞台、会場を包む和気あいあいとした雰囲気など、そんななんやかやの中にいる彼女はとても絵になっていた。ビールでも飲んでほどよく気持ちを高揚させながら見物したいものだった。だけど僕はスタッフだったから、もちろんそんなことはできない(笑)

始まってしばらくしてから気づいたことがある。彼女は独特のバイブスを会場に巻き起こしていた。可愛らしさの中にちょっとカオスさを含んだ独特のバイブス、とでもいうのだろうか。「メイリンバイブス」といえばいいかもしれない(笑)

まず、頭をクラクラとさせる電子音のリフレインが、時間とともにクセになるのだ。
煩わしい蝉の鳴き声がいつしか夏の風情だと思い始めるように、個性の強い音がいつの間にか耳に馴染んでしまった。この手のビョーンビョーンともみょーんみょーんともつかないシンセサイザーの音は嫌いな人もいるかもしれないけれど、彼女の持つハツラツとした空気感と相性がよく、そこに立っているだけで僕は体から力が漲るようだった。

それと、一風変わったフレーズと、そこに乗っかる彼女の歌声が、頭からなかなか離れずにこれまたクセになるのだ。

≪レモネードが作り終わったら≫
≪レモネードが作り終わったら≫
≪レモネードが作り終わったら≫

と、『レモネード』という楽曲ではこのフレーズが何度も繰り返される。パフォーマンスでこのフレーズに差し掛かると、会場がじわりじわりと熱を帯びていった。なかなか終わらないリフレインに焦らされて、ほだされて、観客は彼女のペースにいつの間にか飲まれてしまう。日常のさりげない一コマを切り取ったこのフレーズは、彼女らしさがたっぷりと詰まっていて可愛らしい。レモネード、という言葉の持つ明るい語感が彼女に良く似合っていた。そして期待で胸が踊るような声で歌うのだから、見ていてこれほど気持ちのいいものはない。雨上がりに雲間から射す光の印象のように、彼女の歌う姿はしばらく頭から離れなかった。
 

年甲斐もなく僕には彼女が眩しく見えて(彼女は僕より年上だ)、ステージ後には、突然訳もなく階段を駆け上りたくなるくらいのエネルギッシュなパワーを分けてもらっていた。壮大なメッセージを込められたものだって僕は大好きだが、ZOMBIE-CHANGのようなただただハッピーな楽曲もやはり音楽には欠かせない。

いや、ハッピーな曲なのだろうか?なるほど、たしかに世界観がやや凝ってはいるものの、晴れ渡るような清々しさが根底に流れていて、聴き終えた後にはきっと心は軽くなっていると思う。僕は身軽な気持ちになれた。アーティストに対してこれまで抱いてきた火傷するような熱い思いじゃなく、とても自然な好意と敬意を彼女に抱いた。

たぶん、友人に彼女の楽曲を紹介する時、僕は公園のベンチにでも座ってコーラを片手に気ままに語るのだろう。いつかフェスでまた見かけるかもしれないし、もしかしたらライブに駆けつけるのかもしれない、でもそのどちらでもない気もする。ただ、またいつか彼女がステージに立つ姿を僕は目にするはずだ。なんとなく、分かる。
そして、今度は客席から彼女に向かって少しでもエネルギーを送れたら、と思う。

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