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「HIPHOP」を「Awich」と読ませた90分

-強さ、優しさ、弱さ・・・すべての要素を兼ね備えた正真正銘のカリスマ-

Awich(エーウィッチ)という女性を知っているだろうか。

11月23日19:30を少し過ぎた頃の渋谷WWW X。暗転したフロアには超満員のヘッズが集まった。フィメールラッパーのワンマンライヴの客層としては女性が多かった印象がある。10月10日にリリースされたEP「Beat」の1曲目「So What」の印象的な前奏のストリングスが響く。ステージに現れたなんとも麗しい女性は、腰まである黒くて長い艶やかな髪をなびかせて叫んだ。

「女だから何?You can suck my diiiiiiiiiiiiiiick!!!!!!!!」
この一声でAwich の初ワンマンツアー・Double EP Release Tour 2018東京公演が始まった。
沖縄県出身、32歳の女性ラッパー/シンガーである。本名の漢字を直訳した「Asia」「Wish」「Child」の頭文字をとってAwich。中学1年で2PACを聴きHIPHOPに目覚めた彼女は14歳から音楽活動を本格化して2006年にデビューした。
その彼女が、ついに2018年11月から12月にかけて初のワンマンツアーを開催。私はセミファイナルにあたる11月23日の東京公演に、「女“神の御加護”」を受けに行った。

私が彼女の音楽に出会ったのは2017年8月8日、アルバム「8」のリリースタイミング。ジャケットの美しさに思わず手に取ったパッケージ。ちょうどそのときCDショップで流れていた「Remember」に衝撃を受けて以降、大ファンになった。
現代の日本のヒップホップシーンには多くのフィメールラッパーが存在する。最近では、ちゃんみながサマソニに初出演、またその日にDAOKOがヘッドライナー・BECKのステージを沸かせた。椿は早稲田の教壇に立つ。pinokoは初音ミクとコラボする。Rei©hiはASIAN2の名曲「遠く」をリメイク。フィメールラップは現代音楽を語るには欠かせない要素なのだ。
Awichも同様だ。彼女は現在1児の母。10歳の娘でアルバム「8」にも参加したYomi Jahも登場してステージを沸かせる。母は娘を「とても強い人」と紹介した。親子で歌った「Jah Love」、後半には今は亡きAwichの夫が私にははっきりと見えた。その何曲か後にAwichは暗幕の開いた先を注目させた。そこに写ったのはまだ幼い愛娘・Yomi JahことToyomi。父の遺灰を海に流した後、母に続いて、自然に還った父へメッセージを送る姿だった。同じく「8」より「Ashes」-デビューと同時期にアメリカへ留学した彼女がそこで出会った亡き夫を想って、美しく、優しく、柔らかく、そして悲しげに歌うその目には涙があった。
この歌唱の後、その涙を拭いながらAwichはフロアに向かって言った。
「つらいことを乗り越えた人にしか得られない美徳があるって信じてる。でももし、愛しているものに文句を言われたら何というか知ってる?」
・・・「お前誰~~~~~????」
ラストスパート、ANARCHYも登場して「WHORU?」を歌唱。ボルテージは最高潮。前曲で魅せた悲しさや涙は武器になった。前奏からたたみかける。
「やりたいことやる勇気もないくせにごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ!こっちは命かけてやってんだよ!」
開場は熱気と「お前誰~?」のシャウトに包まれた。
最後は最新EP「Heart」から「Love Me Up」。教育番組の“うたのおねえさん”のような衣装に身を包んで歌うMVが話題となったこの曲は、彼女の「ラヴソング」。つらさを乗り越え、今を全力で生きる彼女だから紡ぐことのできた言葉は、世界のどこにもない深さと愛と濃さと優しさがあった。会場からは「ありがとう!」と「好き!」とすすり泣きが聞こえた。勿論拍手喝采。
こうしてライヴは幕を閉じた。

私はこのライブの90分、ひとりの女性を見ている中に、「人間」のあらゆる側面を見た。「強さ」「優しさ」「かわいさ」、そして「弱さ」と「脆さ」、「悔しさ」・・・もっとたくさんの感情や“人間味”があふれていた。そして彼女はライヴ中何度も何度も「好き。」と言った。確実に強くしてくれる上に愛してくれるのがAwichのHIPHOPだ。
Awich-彼女の存在は勿論、デビューから11年後の2017年のブレイクは、間違いなくヒップホップシーンに約束されていた衝撃だったはずだ。それを経て今、ついに「Awich」というムーヴメントが起こっているといえよう。
彼女は「8」リリース時の音楽サイト「Mikiki」のインタビューでこう語っている。
「私、何でもできるんです。やりたいと思ったら何でもやる。何をやってもAwichというインパクトは強く残したい。<薬>みたいになりたいです。」-彼女の放つ音楽、ひとつひとつの音、そしてそこに乗る言葉によって、間違いなく今後の音楽シーンは変わり、彼女によってHIPHOPという文化は栄える。HIPHOPと書いて“Awich”と読む時代が、もうそこまで来ていると感じた。

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