1521 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

職業「その他」が作り出す音楽

鷲崎健というシンガーソングライアー

「声優やアニメクリエーター、アニソンアーティストなどの方々をお呼びしてお話を伺ったりするラジオ、通称アニラジと呼ばれる業界で日々喋ったり笑ったりする仕事をしております」(成すも成さぬもないのだが これまでもこれからも – 鷲崎健)

僕はラジオが好きだ。特に、トークメインで構成されていて聞き終わったあとに”あー楽しかったな、何も覚えてないけど。”と感じられるものが。役に立つ情報や心に響く言葉なんてなくてもいい。パーソナリティの方に悩みを聞いてもらわなくてもいい。ただ、その限られた時間の中でパーソナリティの方が楽しそうに話しているのをなんとなく聞くのが好きなのだ。この全く意味のないような特別な時間を最も与えてくれる人の一人が鷲崎健という方だ。僕のラジオの話から始まったように、rockin’onには全く出てこないような方である。

冒頭の一文は彼の著書の一番最初に出てきた彼の自己紹介だ。通常ラジオパーソナリティという肩書がつく方たちは彼も著書の中で述べているように、大体ミュージシャンや芸人など本職となるものがありその知名度によってラジオ番組を担当することがほとんどである中、この鷲崎健という方はラジオパーソナリティから今の仕事を続けている稀有な方である。

そして、彼の紡ぎ出す音楽がこれまた稀有なものなのだ。本人は職業ミュージシャンでないと幾度となく述べているが、彼の音楽について少し述べたい。

彼は今まで個人名義でアルバム4枚、シングル1枚をリリースし、ワンマンライブ2公演を行っている。特筆するべき1つとして、アルバム制作及びワンマンライブ開催に向けてクラウドファンディングで資金を募ったところ、希望額720万円をプロジェクト開始当日に達成し、最終的に3000万円を集めたこともある。改めて述べさせてもらうと、彼は「職業ミュージシャン」ではないにも関わらず、だ。

彼の2ndアルバムであるSinger Song Liar、表題曲の中でこんな一節がある。

空っぽの心にしばし嘘をつく
そしてキャンパスに魔法を書き込む
想像だけの歌を作って 涙がポロリ頬を伝って
あたかもあったかもと 自分を騙して
みんな騙されて

1stアルバム発売時に「職業シンガーソングライター」と言われたことへのアンチテーゼとして作られたと言われているが、何とも職業「その他」である彼らしい言葉だ。

そんな彼の遊び心は至るところで発揮されており、「誰だってそう俺だってそうそう たまに落ち込んだりしちゃうの」という主人公は「泣き寝入りではあんが ちょっぴりムリヤリでもオヤスミ 明日また頭下げて 明日また朝から 鯖が美味ぇ・・・ 鯖が美味ぇから大丈夫亅と明日に期待を繋げる、”BLUES”であったり、「女の子の髪の匂いを 一日中かいでたい亅という衝撃の一文から始まる、タイトルもそのまま”女の子の髪の匂いを一日中かいでたい”なんて曲もある。

また、逆空耳とでも言うような”What a Pastaful World 〜なんてスパゲティ世界〜”では

君とギュッと手をツナクリーム 歩いていきましょう
ケンカしても仲ナポリタン トマトいつまでも
ミートソっと2人で 寄り添い暮らしてこう
寂しい夜には おさラビアタ

と軽快なリズムに乗せて歌い上げるのである。ちなみにこの曲は公式MVがオンラインで上がっているので気になった方は是非検索していただきたい。

ここまで挙げた歌詞だけを見るとコミックソング寄りなのか、と思われるだろうがそうではないのだ。こういった歌詞を素晴らしい声に乗せて響かせるのが鷲崎健。また、言葉では説明しづらいのだが鷲崎節とも言える彼の独特な譜割りは、良質なヒップホップソングのようにメロディーに乗せて口に出すと非常に気持ちがいいのだ。

そんな彼の数ある名曲の中でも一際思い入れの強い曲がある。誰かの幸せを願う歌、ワルツという曲だ。

「世界に祈りを そこに始まりを 愛に光を そして温もりを」という言葉から始まり、昔の友人達へ向かって自分の特に何も変わりもなく特別なことも起こらないことを告げる。特に信じるものがあるわけでもないけど、それでも彼はこう祈る。

例えばふらっと入ったコンビニの 笑って頑張ってるアルバイト
今日一日あなたの立つレジに 変な客来ませんように
例えばすれ違っていただけの 三輪車に乗った女の子
願わくば今日の食卓に 大好物のもん並びますように (1番サビ)

例えば友達と彼女 アンハッピーなエンドマークだとしても
数年後偶然会った時に 近況を笑って言えるように
例えば今日出会ってった全ての 僕の視界にいた人よ
願わくば全員の胸に ふさわしい歌響きますように (2番サビ)

ここで曲は転調しクライマックスへと向かうのだが、そこはSinger Song Liar、少し恥ずかしそうに作った顔が浮かんでくるようなこんな大サビに繋がるのだ。

例えば今日電車ん中で見た 疲れ果て眠ってるおっさん
最寄の駅に着く間 いい夢が見れますように
例えば路地裏ふらふらと ゴミ箱あさってる野良犬
少しでも多く肉の付いた いい骨が見つかりますように
 

僕はラジオが好きである。同じくらい音楽も好きである。僕は歌も歌えなければ楽器も弾けない。音楽論もわからない。でも、そんな僕の敬愛する鷲崎健という方の魅力を少しでも伝えられたらと思い綴ってみた。最後に紹介したワルツという曲はとても思いが乗っかっている曲だが、結局の所は鷲崎健の作り出す音楽を触れる機会があったらこう感じてほしいのだ。

“あー楽しかったな、何も覚えてないけど。”

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい