521 件掲載中 月間賞発表 毎月10日

2017年5月11日

黒田往宏 (30歳)
42
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ウルフルズが歩む本気の「人生」

ウルフルズは本気だ。だから好きだ。

 ウルフルズは人間臭い。かっこ悪い。だから好きだ。
 ウルフルズは弱い。ダサい。でも本気だ。だから好きだ。
 
 2009年8月、僕は最後のウルフルズのライブをしっかりと見届けようと、万博の広場へ向かっていた。
 蝉が喧しく、本当に暑い夏だった。
 
 初めて買ったCDはウルフルズだった。実家近くの小さな本屋さんで、シングルCDの並ぶレジ前のかごの中に「それが答えだ!」を見つけた。母に買ってもらった短冊形のCDは、それから僕の宝物になった。
 
 なぜウルフルズを好きになったのかは忘れてしまった。それでも、トータス松本と誕生日が同じで、ジョン・B・チョッパーとは苗字が同じで、なんとなく親しみを覚えていた。
 かっこいいようで、かっこ悪い。それでもがむしゃら。そんなウルフルズが大好きになっていた。
 
 最後の野外ライブ「ヤッサ!」のMCで、トータス松本はこう言った。

 「続けていけないんですよ」

 ショックだった。あんなに笑顔が素敵だったウルフルズがいなくなる。
 悲壮感とも焦燥感とも言えない、なんとも言えない空気が会場を包み、蝉の声だけが大きく響いていた。
 
 観客の声が飛んだ。

 「なんでー!?」

 大阪弁のその声の主は本気でそう思ったのだろう。寂しかったのだろう。
 もしかしたらいつものように、ウルフルズなら笑ってくれると思ったのかもしれない。

 しかし、トータスは叫んだ。

 「なんでじゃないんじゃ!ボケ!」

 トータス松本はものすごく怒っていた。
 会場が静まり返った。その瞬間をしっかりと覚えている。

 「ああ、本気なんだな」

 僕はそう感じた。ウルフルズは本気なんだ。と。

 今思えば、ああいう瞬間でさえ、ウルフルズは自分たちの心を隠さない。いや、隠せない。
 嘘でもいいから、「また戻ってくるよ。今日は楽しくやろう」なんて言えるバンドだったらどうだっただろうか。きっと僕はウルフルズを嫌いになっていたと思う。

 「ウルフルズが帰ってくる時まで、なんとかがむしゃらに生きよう」

 大げさだが、本気でそう思ったのである。本気で。

 ウルフルズは帰ってきた。
 そして25年目を迎えて発売するアルバムのタイトルが「人生」だ。

 彼らの人生は、僕の人生の一つでもある。
 かっこ悪いけど、弱いけど、大好きな人生、そんな人生を笑えれば。
 本気でそう思っている。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい