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2018年最新型のロック・アルバム

ソウル・フラワー・ユニオン『バタフライ・アフェクツ』に寄せて

ソウル・フラワー・ユニオン(以下、SFU)のライヴを都内のライヴハウスで観た。

三ヶ月毎に開催される SFU のライヴツアーには、これまで何度か足を運んできた。

初めてライヴで「満月の夕」を聴いた時は堪えられずに涙を流した。

SFU の前身バンド、ニューエスト・モデルの楽曲をアンコールで聴いて、拳を上げたこともあった。

中川敬と奥野真哉の軽妙なやり取りを見て、何度も笑った。

そして、世の中の不条理を告発する SFU のメッセージに触れて、怒りを覚えることがあった。

SFU のライヴへ行くには、いつもある種の覚悟が必要だった。

自分は SFU のメッセージをきちんと受け止め、実践できているのだろうかと。

しかし、今回のライヴはいつもと異なる印象を受けた。

格好良くて踊れるバンド・サウンドに全身を委ねていたら、三時間近いライヴがあっという間に終わっていた。

最高にロックなライヴを観れたと、軽快な気持ちにさえなった。

SFU のライヴを観てそんなことを思ったのは初めてのことだ。

SFU の新作『バタフライ・アフェクツ』の特設サイトには、ミュージシャン・評論家からの賛辞が寄せられている。

その中で目立つのはロック、ロックンロールという言葉だ。

『バタフライ・アフェクツ』は SFU 史上最もロックなアルバムだという。

新作がロックアルバムになる予感はあった。

今年三月のライヴでも SFU は新作の楽曲を披露したが、アンコールの最後で聴けた新曲には驚いた。

あの中川敬が「この地上を愛で埋めろ」と歌ったからだ。

市井の人びとのささやかな暮らしを阻害するもの、破壊するものに対する怒りや悲しみが、中川敬の活動を貫く態度だと私は思っていた。

SFU には聞き手を温かく包み込む楽曲も多いが、彼の表現衝動はあくまで怒りや悲しみに基づくものだと思い込んでいた。

しかし、中川敬は明快なメロディに乗せて「この地上を愛で埋めろ」と優しく歌っていた。

SFU の代表曲「満月の夕」には「解き放たれ すべてを笑う」という一節がある。

中川敬は今でも目を背けたくなるような光景を見ること、耳を塞ぎたくなるような声を聴くことを止めていないと思う。

そんな彼がシンプルなメッセージを歌うことには躊躇もあっただろうが、迷いや逡巡を解き放ち、すべてを受け止める覚悟ができたからこそ、中川敬は愛という言葉を選ぶことができたのだと思う。

この曲を聴いて、新作はストレートなロック・アルバムになるのではと思った。

今回のライヴで『バタフライ・アフェクツ』の楽曲を聴いて、その思いはより強くなった。

器の大きいソウルフルな表題曲、硬質なビートの上で黙らない作法を主張する「インシスト」、ニューエスト・モデルを彷彿させるパンキッシュな「シングルハンド・キャッチ」。

強いメロディを持った『バタフライ・アフェクツ』の楽曲を軸に、新旧の代表曲を織り混ぜ、SFU は圧巻のバンド・サウンドでライヴハウスを揺らしていた。

ブラフマン、ドラゴン・アッシュ、そして SFU を私は日本の三大ミクスチャー・ロックバンドだと思っているのだが、2018年現在、最もキャリアの長いソウル・フラワー・ユニオンが最も王道のロック・サウンドに接近しているというのは嬉しい驚きだ。

会場では新作を先行販売していたが、ライヴの余韻に浸りたかったのであえて購入しなかった。

そのため、私はまだ新作を聴いていないが確信している。

『バタフライ・アフェクツ』は SFU の、いや2018年の最新型のロック・アルバムであると。

(本文中の敬称は省略させて頂きました)

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