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藤くんのポケット

BUMP OF CHICKENをスルーして来た人たちへ ガラス玉ひとつ分の飴玉をあげる

まず初めに断っておくが、熱烈なバンプファンの方は読まないでいただきたい。
私自身、バンプの楽曲はアルバムの曲も含めて、欠かさず聞いてはいるが、ファンクラブに入っているわけでもないし、ライブに行ったこともない。
せいぜい公式チャンネルで配信されている動画でMVを確認したり、ライブ映像を見る程度に過ぎない。
そんなバンプファンと言えるか定かではない人間がこれからバンプについて、藤原基央の歌詞について語ろうとしているなんて100年早いかもしれないが、100年後に語ることはできないので、リアルタイムでバンプが活動してくれている今のうちに戯言を書いてみようと思う。

「今もいつか過去になって 取り戻せなくなるから
それが未来の 今のうちに ちゃんと取り戻しておきたいから」
(宇宙飛行士への手紙)

私の友人たちもそれなりにバンプの曲を聞いてくれている。
数年前、友人Aは職場のバンプファンから頼んでもいないのに、アルバム数枚をものすごくいいから聞いてみてと渡されたと言っていた。
どうだった?と聞いてみると反応はいまいち。
職場が変わって返すタイミングを逃したらしく、CDはいまだに友人の部屋の片隅に無造作に積まれている。もったいない。

友人Bの職場にもバンプファンがいるらしい。
出会いを求めていた私に紹介しようか?と言われたこともあったけれど、お断りした。もったいない。
友人Bも楽曲は悪くはないけれど、ヘビロテして聞くほど好きにはなれないらしい。残念だ。

友人Cは私の車に乗った時、いつもバンプの曲がBGMで流れているから、ほんとにバンプ好きだねと呆れたように笑った。
特に心には響かないらしい。友人Cはリア充だから、仕方ない。

リア充な人たちには分かりっこないかもしれないけれど、私は無性にファンではない人たちにバンプの曲をプレゼンしたい衝動に駆られている。
だからすでにバンプファンの方々は私の戯言をスルーしていただきたいのだ。
えーバンプなんて、なんか暗いよねとか別に興味ないとか思っている人たちにこそ、読んでいただきたい。
リア充で毎日楽しくて仕方ない若者、今時の歌なんて興味ないという年配の方、本当は老若男女すべての人たちにバンプの曲を届けたい。
真剣に聞いてほしいとおしつけがましいことは言わないから、せめてバンプを知ってほしい。

「肩ぶつけて 頭下げて 睨まれた人 嘘つきが抱きしめた 大切な人」
(Merry Christmas)

正直過ぎて損をしている立場の弱い人、ちょっとした悪人にも実は優しさや愛があるように、誰にでも弱いところ強いところがある。
バンプオブチキンとは「弱者の反撃」という意味をもつバンド名であり、繰り返しになるが、弱者にも強さ(勇気)はあるし、強者にも弱さはある。
すべての人に聞いてほしい理由はそこにある。
一見、どちらかと言えば臆病者のインドア派が聞く曲に思えるが、実は万人ウケし得るのがバンプの楽曲だと私は思っている。

私は「天体観測」で存在を知った。
単純に当時ヒットチャートを賑わしていたから、ああ良い曲だなと思った。
歌詞よりもバンプの中ではわりとキャッチ―な方であると思われる疾走感のあるサウンドが頭の中に残った。
もちろん歌詞もよくよく聞いているとすぐに映像化できるドラマ仕立てになっていて、これは名曲だと当時好んで聞いていたのを覚えている。

それから間もなくアルバムを聞いてみたくなった。
とりあえず『FLAME VEIN』を聞いてみた。
「ガラスのブルース」で泣いた。
毎日だらだらぐだぐだと適当に時間を過ごしていた私は、歌詞に出てくる猫のように真剣に生きてみたいと思った。

「生まれてきた事に意味があるのさ 1秒も無駄にしちゃいけない」
(ガラスのブルース)

時間を大切に生活していかなければならないと気付かされた。

その頃、大学の授業でレポートを提出する機会があり、「リトルブレイバー」の歌詞の一部をレポート用紙の裏に書き記して提出してみた。

「そのポケットのスミを探すのさ きっと勇気のカケラが出てくるだろう 自信を持っていいハズさ 僕ら時には勇者にでもなれるんだ」(リトルブレイバー)

それはたしかフェミニズムに関する授業だったと思う。
レポート返却の時、女の先生が「ステキな歌詞ですね」と書いてくれていた。

『Jupiter』に収録されている「ダンデライオン」は格別だ。
3分弱の短い楽曲だが、物語を読み聞かせてもらっているような錯覚に陥る。
百獣の王ライオンはその強さ故に孤独だった。みんなから一目置かれている。
そう、強者にも寂しいと感じる優しい心があるのだ。
儚く弱く見えるけれど、みんなから愛され、唯一ライオンに優しく接してくれるタンポポに憧れる。
そんな弱者と強者のまったく違うようで、実はどこか似ている双方の心の通わせ方が絶妙で、感動した。

こんな短い時間の中にささやかだけれど壮大な物語を書ける藤くんを改めて尊敬した瞬間だった。
(ここから藤原基央に敬意を込めて藤くんと呼ばせていただくことにする。)

私はこの頃から、バンプの曲を音楽として聞いているというよりは、まるで文学を読んでいる感覚で歌詞を聞くようになった。
ミスチルの桜井さんは「太宰治レベルの芸術」と絶賛しているらしいし、最近では米津玄師も影響を受けたアーティストとしてバンプを挙げている。

藤くんの歌詞は子どもにも分かりやすい童話であったり、真面目なおじさんが読む高尚な哲学書だったりする。
聞く人によって捉え方が変わる部分もあるからおもしろい。
スムーズに分かる部分もあるけれど、真意は何を言いたいのだろうと考えてしまう歌詞も少なくない。
正解なんてなくて、リスナーそれぞれが藤くんの歌詞を自分の好きなように解釈すればそれでいいのだと思う。だからやみつきになる。
歌詞を聞いていると、食べているうちに味が変わる飴玉を舐めているような感覚になる。後味がいつも同じとは限らない。私は不思議な味のする歌詞の虜だ。ほとんど依存していると言っても過言ではない。

藤くんの歌詞には「ポケット」という言葉がよく登場する。
代表的なものを列挙してみる。

「ポケット一杯の弱音を 集めて君に放った」(リリィ)

「僕の右ポケットに しまってた思い出は やっぱりしまって歩くよ」
(スノースマイル)

「ポケットに勇気が ガラス玉ひとつ分」(リボン)

「ポケットには鍵と 丸めたレシートと 面倒な本音を つっこんで隠していた」
(記念撮影)

「持て余した手を 自分ごとポケットに隠した」(話がしたいよ)

代表的な歌の中からピックアップしてもこれだけ存在する。

藤くんにとって「ポケット」とは一体何なのか。
きっと「哀しみの置き場」(天体観測)であり、
「許せずにいる事 解らない事 認めたくない事 話せない事」(Merry Christmas)など、何でもしまえるドラえもんの四次元ポケットみたいな万能ポケットなのだと思う。
言ってしまえば相手を傷付けてしまうかもしれないから、話せないことをしまっておく優しさを置く場所なのかもしれない。
あるいは弱者がいずれ精一杯の反撃をするための言葉を隠した武器倉庫なのかもしれない。
藤くんは自分のポケットからまるで飴玉でも差し出すかように、私たちに少しだけ、自分の心を見せてくれる。
すべては見せられないけれど、言葉では表しきれない広い宇宙のような藤くんの内面世界のごく一部を私たちに披露してくれる。
宇宙のように広がるそのポケットの中に入って、宇宙飛行士のように漂ってみたい気もするけれど、ガラス玉ひとつ分で満足しなきゃとも思う。

そういえばドラえもんも弱者と言えるかもしれない。
未来では出来損ないのロボットで、過去に来てのび太というさらなる弱者を強くするために活躍してやっとヒーローになれているから。
話が脱線したかもしれないが、ドラえもんの映画にバンプが歌を提供したのは偶然ではなく、必然だと思う。

「信じたままで 会えないままで どんどん僕は大人になる それでも君と 笑っているよ ずっと友達でしょう」(友達の唄)

ドラえもんは未来に帰る時が来るから、永久的にのび太と一緒に居られるわけではない。

「僕らの間にはさよならが 出会った時から育っていた」(アリア)

のび太が大人になった時、ドラえもんはいない。
あのアニメはなんて切ないアニメなんだろうとドラえもんが帰った未来を想像するだけで、涙が滲む時もある。
ジャイアンやスネ夫というのび太をいじめるいじめっ子強者もいる。
ジャイアンは母ちゃんに敵わないし、スネ夫はジャイアンに敵わないから弱者とも言える。
のび太はドラえもんの力を借りて、ジャイアンに立ち向かう時もある。
稀にドラえもんの力を借りなくてもがんばる時もある。
そう、弱者が強者(勇者)に見える時もあるのだ。
こうなるともはやわけがわからなくなるが、つまり弱者も強者も紙一重だから、バンプの曲をすべての人に聞いてほしいと私は願う。
一見、弱者向けに見える歌詞が多いが、是非じっくり聞いてみてほしい。
読んでみてほしい。藤くんのポケットを覗いてみてほしい。
一曲くらいはお気に入りの曲が見つかると思う。
(※ドラえもんのエピソードを書いたのはバンプに興味ない人でも、ドラえもんくらいは知っているだろうと踏んで、あえて書いたことにご理解いただきたい。)

約3年半ぶりにシングルCDが発売されたが、前日にフラゲなんて、何年ぶりだろうと我ながら驚いた。それくらい今はバンプ欠乏症かもしれない。
音源は聞けているけれど、やはり新アルバムが待ち遠しい。
バンプをスルーして来た方々に改めて伝えたい。
過去の曲もすべて聞いてみてほしいとは言わないから、試しに藤原基央文学に触れてみてほしい。
藤くんがくれる飴玉を舐めてみてほしい。案外口に合うかもしれないから。

最後に。
「ロストマン」が好きだと言っていた高校時代の同級生が海外に行ってしまった。
仲が良かった方だけど、卒業してからは数えられる程度しか会えていなかった。
海外となるとさらに会いづらくなってしまった。
来る機会があれば、絶対声掛けてねといつでも真剣な彼女は冗談でもなく、本気で言ってくれたけれど、私はパスポートさえ取得したことがない(笑)

「状況はどうだい 居ない君に尋ねる 僕らの距離を 声は泳ぎきれるかい」
(ロストマン)

再会を祈りながら、私はとりあえず「話がしたいよ」を聞く日々を過ごしている。
「昨夜、流れ星を見たよ。」とかそんな他愛のない話を「誰か」ではなく、「あなた」に伝えたいのかもしれない。
ずっとバンプをスルーしてきた「誰か」へ向けて話して来たつもりだったけれど、結局、私は「あなた」と話がしたかったのかもしれない。

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