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この衝動を、誰かに

CROSS LORDというバンドに再会した

若手バンドを探すこと、それが私の趣味だ。

仕事の合間や寝る前にYouYubeやEggsその他手あたり次第に漁る。
もはや職業のように毎日毎日、目の醒めるような出会いを求めるのが何故か癖になっていた。
社会人になりライブに行く時間の余裕が取り辛くなって、逃げ込むかのように始まった習慣だった。
(いや、ほんとにタダで手軽にいろんな楽曲に出会えるサービスを作ってくれた人、ありがとう。学生時代のジリ貧だけどCDを買い漁っていた自分に教えてやりたい。)

そんな中Eggsでひたすら視聴する中で、うつらうつらとする意識を引き戻されるような声にぶつかった。

――――ほかの誰よりも高くをずっと見つめる

え、何、これ。
めちゃくちゃ、いい声。

かなり衝撃だったのだ。
掠れ気味の少しザラついた声、だけれど綺麗なメロディに合っていて。
叫びに似たような言葉たちは力強く、ふっとある情景が浮かんだ。

野外の夏フェスで汗を流しながら、アコギを一心不乱に弾く姿

これは、絶対に流行る、なんてたったの一曲で勝手に確信した。
…ボーカルの顔も知らないけれど。

彼らの紹介ページにあったのは、バンド名といかにもインディーズっぽいと言ったら失礼だが、インディーズ感溢れるアーティスト写真のアイコン、
それから滋賀を拠点に活動しているバンド、という情報だけ。
公開されている楽曲も何度も何度も聞いた「Alone」一曲、たったそれだけ。
Twitterもやっていたようだが、リンクを飛ぶと「このページは存在しません。」という無感情なメッセージが表示されるだけだった。悔しい。
なんとなくアー写から若いんだろうな、ということは推測できた。
もしかしたら高校生かもしれない。
たった一枚の写真でしかないが、そこに映る彼らはあまりにも幼く、音も粗削りで。
ああ、高校生が学園祭で組んだバンドで、なんとなくノリでEggsに載せたのかな、なんて勝手に想像して、そのページを閉じた。

いいな、と思うものに出会ったときあるあるじゃないですか、
このバンド解散しちゃったんだな、
活動辞めちゃったんだな、
学生バンドだったりすると就職したのかな、とか。
そんなありふれたドラマを想像すると切なさでいっぱいになる。
もっと早く出会いたかった、ライブ行ってみたかった、だいたいそんな感じ。

そんな気持ちはよくあること、そっと忘れることにした。
 
 

それから1年近く経った日、私はひとり会社で残業していた。
誰もいない半分照明の消えたオフィスで、上司の使っているつけっぱなしのラジオのボリュームを勝手に上げて上機嫌に仕事をしていた。
こういう時一人で仕事してるっていうのは気楽でいいと思う、鼻歌唄っても誰にもとがめられないし。

そこで再び出会ったのだ。
あの声に、

え、今の絶対そうだよね????
電流が走ったように直感していた。
思わずラジオに駆け寄った。
ほんの一瞬、たぶんサビだけラジオから聞こえてきたのだ。

けれど、スピーカーに耳を寄せた時には、もう違う曲に変わっていた。
あまりに必死で自分でも笑ってしまうのだが、すぐにFM802のHPにアクセスして、今かかった楽曲が何だったのか調べた。
残念ながらそれらしき曲は見つからず、でもその日の番組はMINAMI WHEELの特番だったことを知る。
MINAMI WHEELといえば、関西ではかなり大きなサーキットイベント。
最近はめっきり行っていなかったが学生時代に何度か足を運んだことがある。
もしかしてあのバンドもMINAMI WHEELに出演するのかもしれない。
あのバンド、なんて言いながらバンド名もあやふやにしか思い出せないのだけれど。

少し浮かれ気味に仕事を切り上げて、MINAMI WHEELの出演者ページをめくっていく。
400組以上が出演するイベント、本当にここに出演するかどうかもわからない。
途方もない数だと思いながら〈ア〉から順に次々クリックしては戻るを繰り返す。
文明の利器を前になんとも原始的な作業。
それでもこの妙な確信を確かめずに居られなかった。
…嘘とカメレオンも出演するんだー、髭男も観たいなーと寄り道はしたけれど。

そして、意外と早くそのバンドは見つかった。
〈カ〉行に移って、知らないバンドを片っ端から開いて視聴して、聞けなかったらYouTubeで検索して。
【CROSS LORD】というバンドだった。
(ROADじゃなくLORDなのはこだわりなのかな)

一瞬スルーしかけた。
HPのリンクにあったMVの曲があまりにもポップで明るくてキラキラしていたから。
でも、間違いなくラジオから聞こえてきたその声だった。
たぶん絶対間違いない、あの声だ。
手掛かりが少なすぎて確信を持てる要素は何もなかったけれど。

正直、こんなにキラキラしたバンドだったっけ?というのが朧げな記憶を辿っての印象。
もっと切実で訴えかけるような感じじゃなかった…?
まぁ一曲しか知らないのだけれど…。

とは言え、間違いなくあの声だし…
ということでTwitterやらYouTubeやら調べていくうちにやっぱりあのバンドだった、ということがわかった。
あのバンド=CROSS LORD だったのだ。
自分の直感は間違っていなかったのだと、一人会社で謎の喜びでスキップをする私。
時刻は夜10時過ぎ、帰ればいいのに、という心の声は無視した。

YouTubeにある曲もたった一曲、CDを発売しているらしくそのダイジェストで少し聞けるだけ。
すごく、すごく物足りない。もっとほしい、もっと聴きたいのに。
Youtubeにある「Merry-Go-Round」という曲は最初はポップ過ぎて驚いたが、
キャッチーでとっつきやすい楽曲だと思う。
よく知らないけれど、かわいい、そう素直に思えた。
(Twitterを覗くとギターがイケメンで更に驚いた。)

2曲だけでもかなりの楽曲のふり幅だ。
きっともっと他の色の曲もあるんじゃないだろうか。
あれだけの激情を歌っていたバンドだから。
初期衝動という言葉がぴったりなバンドだと思ったから。
 

社会人になってライブには久しく行けていないけれど、近いうちに次のライブがあるなら彼らを観てみたい。
ミナホには行ったけれど、タッチの差で見れなかった。
曲数が少なかったのか着いた頃にはすっかり次のバンドがセッティングを始めていた。
本当に悔しい。こういう大きなイベントだとトップバッターって辛い。
自業自得だけれど私みたいに道に迷ってライブハウスにたどり着けない奴も居るのだ…

ワンマンライブが決まっているらしい。
いきなりワンマンというのもハードルが高い気がするが、ミニアルバム以外の楽曲もやってくれると信じて、行こうと心に決めた。

買えるかどうか心配だったCDはミナホで買えた。
全部聞いて、何度も聞いて、もっと評価されていいんじゃないのかという思いがよぎった。
そもそもCDの流通経路が少なすぎるだけかもしれないけれど。
インディーズバンドあるあるだと思うけれど、ライブハウス以外で手に入れる手段が少なすぎやしませんか。
せめて、配信か欲を言うならばYouTubeに楽曲をあげてほしい。

脱線したけれど、ミニアルバムの曲も純粋によかった。
思いの丈をぶつけるような独りよがりな感じはなく、でもたくさんやりたいことがあるのはわかった。
激しいメロコアっぽい楽曲もあれば、
寄り添うようなあたたかさもあり、
ドライブのお供にしたいような爽やかな曲もあり。
もしかして、かなりの才能なのでは、なんて。
詳しくは是非音源を聴いてほしい。
 

それにしても…勿体ない。
バンド名も変わっていることだし、方向性が変わったのかもしれないけれど、
それでももっと世に出していいんじゃありませんか。
もっともっと知られてもいいんじゃないですか。
CDも去年の今頃から出ていないし、YouTubeもボーカルがたまに洋楽のカバーをあげてるくらい。
カバーはアレンジもすっきりしてて彼の声を聴き入るにはすごくいいのだけれど。
(特にGirls Like Youは泣いてしまいそうなほど染み入るものがある。)

でも、やっぱり一度好きになったら新曲が聞きたいというのがファンという生き物。
活動してるのがギリギリわかるくらい、なんてそんなの、あんまりだ。
きっとまだまだ売れてないんだと思う。
でも売れる要素は十分あるバンドだと、ライブも観たことのない奴が感じてしまったくらいには。

だから、どうか、どうかと思う。
この才能を誰か見つけてあげてほしい。

もっともっと売れて、CDがどこのCDショップでも買えるようになって、
ライブももっとたくさんやって、フェスで歌っている情景を実現してほしいのだ。
誰もが知るバンドになれるんじゃないだろうか。
なれると私はたった一曲の出会いで直感してしまったのだ。

嘘だ、正直に言おう。
私が聴きたいのだ。
このバンドの、彼らの曲を。
だからもっと多くの人に知ってほしいのだ。

きっとまだまだ走り始めたばかりだろう。
だからこそ、青いままの彼らを応援したい。
熟して腐って逝く前に、もっとたくさんの人に出会ってほしい。
私が2度出逢った目の醒めるような衝動を。
この声は、彼らの曲は、きっともっとたくさんの誰かにも刺さるはずだから。
 
 
 
 
 
 
 
 

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