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sumikaが伝えたい「あなた」への想い

『ファンファーレ/春夏秋冬』Release Tour東京公演初日に寄せて

「あなた」sumikaが私達に語り掛ける時、必ずこの言葉を使う。一人一人と向き合い伝えようとする彼らの溢れる想いがそこには詰まっていて、とても優しく大切な言葉だった。

今回の『ファンファーレ/春夏秋冬』Release Tourでも私達に言葉を投げ掛ける時、必ず「あなた」と呼び掛けた。しかしその言葉はいつもより強く感情が込められている気がした。

東京公演初日、私はグッズを身に纏いその場にいた。幸運な事に私の友人が誘ってくれて行けなかったはずの公演にいる事に喜びを噛み締めながら、今か今かと待ちわびたライブはほぼ定刻通りに始まった。

突如照明が全て消え一気に拍手の波が押し寄せた。しかしSEは流れず、颯爽とメンバーが現れた。
暗闇の中、最初を飾った曲は『ファンファーレ』。劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』の為に一年かけて作ったsumikaの大切な曲が片岡健太の力強い歌声と鋭いギターから始まった。センターに当たっていた光がステージ全体を照らすものへと変わると疾走感溢れる音が光と共にZeep Tokyo中に走り、始まりから泣きそうになってしまった。

『ソーダ』『1.2.3..4.5.6』と煌めき明快な楽曲が続き、ハンドマイクになった片岡健太がステージを縦横無尽に歩き回り腕を共に振った『KOKYU』や黒田隼之介のギターが冴え渡る『ふっかつのじゅもん』に荒井智之の力強いドラムとシンバルが鼓舞してきた『チェスターコパーポット』と序盤から攻めに攻めた流れは楽しさに身を委ねるしかなかった。

小川貴之の色鮮やかな鍵盤が響き渡る『フィクション』、またもやハンドマイクに切り替え四年振りというサポートベース井嶋啓介の跳ねる重低音から始まった『MY NAME IS』、「あわよくば、僕を、好きになっちゃえば、いいのに」と囁き淡い音色が包み込む『いいのに』。楽しそうに、嬉しそうに演奏する彼らの姿は見てるこちらにも伝染するんだと笑いながらそんな事を思っていた。

フロアと会話しながらもメンバー紹介をしていく礼儀正しくもお茶目で仲の良さが伝わってくるMCに微笑みながら聞き、一通り話がまとまり次の曲と言った時ポジションセンターの彼がこんな事を言い出した。

「次の曲なんですけど、二曲で意見が分かれて。メンバーも二対二、スタッフもほぼ半分に分かれてしまったんです。僕達殴り合いとかするタイプじゃないし民主主義なので、今から皆さんに決めてもらいたいと思ってます!」

予想外の提案にフロアが揺れ動く。提示された曲は『グライダースライダー』と『sara』。聴きたい方に拍手をして音量の大きい方を採用する、といったものにフロアは更に騒然とした。一分あったかどうか定かではない中で決めたが、この曲を聴きたい!という想いは大きな拍手に表れていた。
メンバーとスタッフ陣で話し合い、全員が定位置に戻ると会場は緊張感を含んだ静寂に包まれた。どちらもボーカル始まり、一同が片岡健太に注目し、スッと息を吸った口から紡がれたのは『sara』だった。約二年振りとその後教えてくれたこの曲に歓声が上がり、感傷的に歌う表情には胸が苦しくなった。

前半戦から飛ばしてきた彼らは次の曲で雰囲気が一変した。暗闇に二つの光が灯り、鍵盤の繊細な旋律と一層深みを増した歌声のみというアレンジが凛とした空気を纏わせた『溶けた体温、蕩けた魔法』。
その余韻のままセンターに当たる光だけになり、奏でられたのは『春夏秋冬』。劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のエンディングの為に何度も何度も書き直し考えられた曲だった。切ないのに、だんだんと温かみを含む空気に包まれていくその光景はとても綺麗で涙が零れそうになった。

魅了された拍手が会場全体に満たされると、突如ダークな照明がステージを照らし楽器隊によるセッションが始まった。荒井智之によるどっしりとしたドラムと井嶋啓介の唸るようなベース、そこに小川貴之の妖しい鍵盤が誘ってきているような感覚に陥った。次の展開を期待させるメロディから聴こえてきたのは、その歌詞の通り会場の色をパッと明るく変えた『MAGIC』、そして王道『Lovers』。楽しそうに演奏するメンバーにフロアも笑顔でいっぱいになった。

「もうすでに最高なんですけど、もっと最高にするために皆さんの力を借りてもいいですか!」という煽りからフロアは掲げたタオルで埋め尽くされ、色彩豊かに舞い踊った『マイリッチサマーブルース』。そのボルテージのまま『ペルソナ・プロムナード』へと雪崩れ込み黒田隼之介の攻撃的なギターが轟けば、盛り上がりは最高潮に達した。
興奮覚めない内にステージが暗転し、まるで会場の興奮が落ち着くのを確認するように口をつぐみ、フッと切ない歌声と柔らかい音色が広がった『リグレット』。まさかの曲にフロアは動揺と歓喜の声で満たされ、その音色に聞き惚れるしかなかった。

「伝えたいという五文字に乗せて、『「伝言歌」』という曲を」お決まりの台詞から本編ラストを締め括ったのは片岡健太が十八歳の頃から歌い続けているという『「伝言歌」』。伝えたい、その言葉を、想いを精一杯声に乗せて歌うとメンバーは眩しそうに笑い会場全体が1つになったのを感じた。

本編が終わりステージが暗くなってもフロアは彼らを待つ拍手で鳴り止まなかった。すると再びステージは明るく照らされ、アンコールが始まった。1曲目『アイデンティティ』を奏で始めた時、彼らの表情はとても嬉しそうで幸せそうだった。

「改めてアンコールありがとうございます」と深々と頭を下げ、片岡健太は「あなた」と私達一人一人に投げ掛けるようにこんな事を話した。

「ここから出ていっても、扉を開けて待っています。泥だらけになっても、傷だらけになっても、僕らはあなたを大切にします。だから、安心して戦ってきて下さい。どんなに傷ついても、僕達はここにオレンジの光を灯してあなたの帰りを待っています。だから、いってらっしゃい」

そっと手を挙げると暖色の照明が会場全体を包み、温かく優しい音色が響いた。東京公演初日、ラストを飾ったのは『オレンジ』だった。

  「ただいま」「おかえり」が 響き合い広がる
  「当たり前」いや違うね 「有難う」なんだよね
  「ただいま」「おかえり」が 響き合い溶けていく
  「ただいま」と言える その場所が スタートになる
  背中を押す

今年sumikaはアニメのタイアップや武道館を含むホールツアーを行うなど大きく飛躍した年だった。しかし彼らは変わらず個々と向き合うように優しく身近に寄り添ってくれていた。演奏中にフロアを一望して真っ直ぐ一人一人の瞳を見つめたりなど様々な仕草にそれが見えるが、『オレンジ』という楽曲にその想いが全て込められていた。

私達は毎日様々な事に一生懸命に向き合い「整理しちゃったら尚更に自分の駄目さに気付いてしまう」事も「格好良くスマートに生きられたら」と思ったりして傷付いてきた。しかしsumikaを聴けば、帰ってくれば「お帰り」と優しく迎え入れてくれて「いってらっしゃい」と背中を押してくれるような音楽が広がっていた。

sumikaも同じ事を抱えながら、「あなた」が必ずいるから戦えると教えてくれているようだった。どんなに大きくなろうとも共に頑張り待っていてくれる「あなた」がいる限り、一生「あなた」だけを見つめ歌い続けていく、そんな確固たる想いを感じ私は演奏中上手く彼らを見る事が出来なかった。

どう変化しようとも「あなた」と真剣に向き合い歌を届けてくれるsumika。この信念は一生変わらないだろうし、変わらないのならば私達は彼らの信念に釣り合う想いを渡していかないといけないと感じた。
全力で嬉しさを伝えステージから満面の笑みで出ていく彼らに「いってらっしゃい」と「いってきます」、感謝を込めた盛大な拍手を送った。また帰ってきた時にあの優しい笑顔で「ただいま」と「お帰り」が聞ける事、言える事を願いながら。sumikaが「あなた」と信じて真っ直ぐ見つめてくれる、胸を張ってその想いを返せるような人になろうと思いながら。

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