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あの時から半年,振替公演で垣間見たスキマスイッチとファンとの絆

「言葉にならないね」という言葉に込められた想い

 2018年6月18日に起こった大阪府北部地震は大阪の機能を停止させるには十分な規模であった.その日のイベントは中止や延期となったものがほとんどであるが,ロームシアター京都で行われる予定であったスキマスイッチ“TOUR 2018 ALGOrhythm”もその一つである.大橋卓弥さん(以下,大橋),常田真太郎さん(以下,常田)はスタッフと話し合い悩み抜き相談を重ねた末,公演の延期を決断したとのことであったが,実際に大阪にいた私としては,それは正しい決断であったと考えている.楽しみにしていたライブの延期はとても残念で仕方なかったが,あの日関西はとても娯楽を楽しめる状況ではなかった.そしてあの時からおよそ半年の月日を経て振り替え公演が開催された.

 開演時間が近づくにつれて,スクリーンには難解な数列が表示されては消えていく.それと同時に電子音と思われるSEが鳴っては消えていく.そして3分前からは3:00:00からのカウントダウンが映し出される.それも繰り返し表示されては消えていくのだが,徐々にその間隔が狭くなっていき,ついには途切れることなく音も鳴り響きOPENINGとなるのだ.コンマ00秒まで表示されていたカウントダウンは観客を高ぶらせるには十分な演出であった.
 1曲目を飾るのは“LINE”.そして続くのは“リチェルカ”.アルバム「新空間アルゴリズム」ではリチェルカ,LINEの曲順であったが,実はどちらを1曲目にするか悩んだという.つまり,アルバムでこの曲順になっていたかもしれなかったのだ.それをライブで行うあたり,2人がCDだけでなく,ライブすらも作品として捉えていることが分かる.リチェルカのイントロでは原曲と異なり一拍,間が作られていた.この瞬間観客もグッと貯めを作っただろう.そして続いて流れる音楽とともに,会場にいるすべての人たちが貯めを吐き出しそれに伴い一体感が増していく.その直後すかさずステージの映像に映し出された2人の映像は華やかであり「これから始まるんだ」と思わせてくれるものであった.
 “さよならエスケープ”,“糸ノ意図”と続きMCの後に流れたのは,時の人(というより時の歌)となった“Revival”.しかしこの曲を聴いている時,私はドラマのことは決して思い浮かばず,曲の世界に引き込まれていた.それは,スキマスイッチが周囲に捕らわれずに曲そのものを純粋に届けようとしているから,かもしれない.
 “ミスランドリー”でかわいらしい映像と音楽を楽しませてくれた後には,少し懐かしい“センチメンタルホームタウン”.
 次曲は大橋による繊細なアコギソロでスタート.それはどんな曲にも繋がりそうな音であったため,その先が予測できない.つまり何の曲が始まるのか,と観客を期待させるには十分な時間であったと思う.正解は“Baby good sleep”.まるで子守歌のような優しい声とシックな音が会場を包み込んだが,特にラストの大橋のアカペラは心打たれるものがあった.それに続くのは“ラストシーン”.この曲は子どもへの想いを表している曲であると考えている私は,Baby good sleepから続く一つの物語のように感じていた.圧巻の演奏は息を止めて聴き込んでしまうほどであり,聴き終わった後にはため込んだ息を吐き出すかのような拍手が鳴り響いた.
 前半の最後を締めくくったのは“ミスターカイト”.ラストシーンによる余韻をものともせず,この曲の持っている力を改めて見せつけられた.

 2度目のMCで繰り広げられた長い長いトークは,スキマスイッチお馴染みのものであったが,「そろそろ曲にいこう」と言う常田に対して,強引に話題を切り替えてまでMCを続けようとする大橋.どうやら(曲を)始めてしまったら,あとは終わるだけになるのが,寂しい様子.少しでも長くこの場にいたいという想いが伝わってきた.

 MCを挟んで後半戦,1曲目は“ゴールデンタイムラバー”.静かなイントロで始まるが,これから何が始まるのか分かってしまうだけに,MCの脱力感をグッと引き戻すのには最適な曲だ.普段とは一味違うアレンジがなされた“君の話”に続くのは“スモーキンレイニーブルー”.クールな2曲であるが,会話するように繰り広げられるメンバーによるソロパートが作り上げた熱量は凄まじく,会場のテンションを引き上げていく.
 そして“パーリー!パーリー!”は,まさしくライブで輝く曲だ.スクリーンにはポップな映像が流れところどころで歌詞が映し出されていた.それだけでも楽しいのだが,「今夜の主役は楽しんだ“君”のもんさ」と歌詞を変えて歌う演出は,楽しさを何倍にも膨れ上がらせ自然に笑みがこぼれる.ライブのラストスパートには欠かせない存在になった“ユリーカ”はイントロだけでも観客に高揚感を生み出す.その会場の雰囲気を引き継ぐのは“全力少年”.大橋によるコール&レスポンス,常田によるピアノのイントロは分かっていても会場を沸かせる力を持っており,サビの大合唱へとつながっていく.
 大橋が「この場所に戻ってこれてよかったです」と伝えた後に演奏されたのは“リアライズ”.この曲,先月横浜アリーナで行われた15周年記念ライブ“Reversible”ではメインテーマであり,スキマスイッチの過去と現在,そして未来を想い演奏されていたが,今回はまた異なる意味に捉えられた.以前,常田は「リアライズは過去と未来を繋ぐ曲」だと言っていたが,その意味は受け手やその場の状況によっても大きく変わるだろう.
 “あの時(6月18日)から全てがこの場所まで繋がっていた”
 壮大で力強い歌声とサウンド,そしてそのメッセージ性が溢れたその演奏は,圧巻であった.

 バンドメンバーがステージから去った後,「本当にみんなに会えて良かったです」と大橋が口にしたが,その後口を閉ざしてしまった.数秒の沈黙の後,発した言葉は

 「言葉にならないね」

 一音一音丁寧に紡ぐように常田が“未来花“のイントロを弾き始める.壮大なリアライズとは異なるが,こちらも心に響きいつまでも残り続けるものであった.

 実はこのセットリストは,6月18日にやるはずだった曲順をそのまま変えていないそうだ.そしてそれは奇しくも公演前日に発売日を迎えたALGOrhythmのライブアルバムと全く同じ内容であった.もちろんCDは会場で発売されていた.その日のライブをアルバムで持って帰れるというもの,振り替え公演ならではであった.

 アンコール1曲目“この闇を照らす光のむこうに”が演奏された後,大橋が発言した「もうすぐクリスマスですね」という言葉が,その日一番会場沸かせたのは間違いないだろう.「クリスマスプレゼントです」と演奏されたのは先日発表された“クリスマスがやってくる”.難解なメロディーラインを楽しく歌い上げる様は,流石としか言いようがなかった.「最後,騒ぐか」とアンコールのラストとして演奏された“Ah Yeah!!”では,イントロが鳴り響いた瞬間「待ってました」と言わんばかりに,タオルを取り出す観客.サビでのタオル投げに加え,アウトロでの舞台落ちに,会場は一体となっていた.バンドメンバーはステージから去っていく間も大橋は「ありがとうございましたー!」と観客への声掛けを忘れない.横で常田も普段通りに手を合わせお辞儀をしている.「また来ますー!」.それは大橋がライブの終わりを告げる言葉であり,会場にいた観客の誰もがそう思っただろう.しかしその日は違った.直後に大橋が続けた「もう少し騒ぐかー!?」という言葉は,会場を再び最高潮にするには十分であった.戻ってきたバンドメンバーとともに演奏されたのは“ガラナ”.「みんなのテンションは~,急~上~昇~,フルテンだ」と貯めに貯めた歌いだしは,その言葉どおり,会場中のテンションを急上昇させた.

 サプライズで幕を閉じたALGOrhythm京都振り替え公演.そう今回は振り替え公演なのだ.8月12日に沖縄でファイナルを迎えてから約4か月もの期間があいていた.MCの中で「練習では『どんな風にやっていたかな』と記憶をたどりながらだったけど,実際にスタートしてみんなの雰囲気をみて,『あぁ,こんな感じだったな』とすぐに思い出すことができました」と話していた.実は個人的には1曲目のLINEの時に周りを見ながら「観客の雰囲気がいつもと違う,みんな手探り状態のようにみえるな」と感じていた.つまり演奏する側も観客も手探りでスタートしたということだ.しかしお互いがお互いの様子を見ながら,感覚をつかみ作り上げたライブの一体感はすさまじいものであった.

 また横浜アリーナを満員にした2人には,ロームシアター京都の約2000席というキャパはあまりにも狭い.しかしその分観客との距離が近く,大橋も常田もまるで会話をするように観客一人一人丁寧に視線を交わしながら演奏をしていた.
アリーナを埋め尽くした後のホールでも今までと変わらない姿を見せてくれたスキマスイッチ.そして震災による振り替え公演,多くを語りはしなかったが「この場所に戻って来れて良かった.みんなに会えて本当に良かった」という言葉に込められた想いは確かに伝わってきた.
 スキマスイッチは今後もファンに寄り添い,そしてファンを楽しませ続けてくれるだろう.少なくとも,私はそう感じたライブであった.

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