2219 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

素敵なあなたに歌われたいよ モノブライトの“ラストライブ”を見た

バンドの「活動休止」にどう向き合うか?

2017年12月20日。気温-5度、晴れ間は少なく時おり雪のぱらつく札幌は、2月並みの寒さと報じられた。そんな中、市街地にあるライブハウスSound lab moleには長い開場待ちの列が出現した。「monobright × MONOBRIGHT × モノブライト 2007-2017」ツアーファイナル。モノブライトはこの公演をもって、11年の活動に区切りをつけ、無期限の活動休止へ入る事が発表されていた。

無期限活動休止ーー。
音楽業界で言えば、悲しいかなそう珍しいことではないのだろう。とはいえ、いちファンとして見れば、ずっとあった心の支えが消えてしまうような、大好きなものが急に奪われてしまうような喪失感はどうしたって拭えない。アーティスト本人たちのことを想っても、苦渋の決断だったのだろうと胸が痛む。そんな中で、桃野が「最後のライブ」と呼ぶこの公演を、ファンはどのように見守り、受け止めれば良いのだろか。考え続けても答えの出ないまま、その時はやってきてしまった。

ところがどうだろう。いざ開演してみると、ステージ上にはある意味“いつものモノブライト”がいた。私は、モノブライトの音楽のつかみきれなさが大好きだった。世界を独特な視点で、でも決して背伸びせず、表も裏も正直に切り取るボーカル・桃野陽介を中心とした曲作りに、ギター・松下省伍とベース・出口博之の個性が重なる混沌。だからこそそこには、ライブを観る度に曲の解釈を変えさせられるような、予定調和を壊していくような、ファンの期待を良い意味で裏切り続けてくれるような、そんなつかみづらさがあって、ライブという現場で繰り返されるスクラップアンドビルドがいつも快感だった。

この日のステージもそうだった。知っていたはずの曲たちが、心の中で次々にリメイクされていく。だが、いつにも増して強烈なリメイクだった。
「あなたに会えてよかった ココロの鼓動が駆けてく またいつか会おう」(ハートビート)、「もう一度君に会えるかな」(DANCING BABE(VerSus Ver.))、「進もうと先を急ぐ 二度と戻らないと誓え」(旅立ちと少年2)、など、今まで意識してこなかった歌詞がたちまち今日の状況を予期して書かれたように聴こえ出す、活動休止ならではのリメイクはもちろんのこと、いつもならライブ終盤の起爆剤として演奏される定番ソング『踊る脳』が序盤で早々に披露されると、楽しんで聴いているだけでは分からなかった、奇妙なほど愉快なベースのリズム跳ねに気づく。『WONDER WORLD』では、金切り声のようにか細くも鼓膜をつんざくような迫真のギターフレーズが執拗なほどに心に刺さり、まさに圧巻。「愛の歌コーナー」として披露された『孤独の太陽』の一節、「あなたの歩く道標が私なら 眩しくて強い心で私を照らすといい」では、歌詞を丁寧に届ける桃野を見ていると、彼にとっての太陽は音楽そのものだったのではないか、などと解釈も膨らむ。
他にも、全24曲。私の知る限りワンマン最多曲数、渾身のセットリストが届けられた。そして、アンコールオーラスの24曲目はこんな歌で締めくくられた。

「世界も涙も強さも忘れて
 素敵なあなたに歌われたいよ」

アニメタイアップのついた自身最大のヒット曲『アナタMAGIC』だ。
モノブライトは今日で終わる。本人たちの言葉を借りるならば、少なくとも第一章は完結する。今日から私たちリスナーには、彼らのことを考えないように、それでもどこか活動再開の号令を心待ちにする、そんな日々がやってくる。けれど、この曲は私たちに大切なことを教えてくれた気がしている。
素敵なあなたに歌われて、誰かの心に住まうことができて、音楽は生きたものになる。それを証明したのが、他でもないこのツアーだったのだ。
披露される曲たち全てが、1曲の例外もなく、これまで以上の輝きを帯びて聴く者を魅了する。それは、楽曲が単なる楽曲を超えて、物語となって心に届いた証拠。もっと言うならば、そうしようと彼らが必死で届けた証拠であり、聴き手もそれに応えよう必死に受け止めた結果なのだと思う。
桃野はMCでこんなことを語った。
「このツアーは、回を重ねていくごとに、騒ぐのが好きだと思っていたファンのみんなが眉間にしわを寄せるような真剣な表情になっていく。もしかしたら、今までもそういう表情しててくれてたのかもしれないけどね。気づかなかったことに気づかせてくれたツアーでした。」
メンバーとファンが、このツアーや活動休止という現実、そして他でもないモノブライトと心から本気で向き合った日々、それがこの“ラストツアー”だったのかもしれない

だからこそ、私はモノブライトを歌いたい。単に声に出すということを超えて、心の物語を更新し続けていきたい。そして、モノブライトを生きたものにしていきたい。彼らが活動休止に入るからこそ、その間楽曲に輝きを与え続けられるのは、他でもないファンなのかもしれないから。そう教えてもらったファイナルを観たからこそいえる。モノブライト、どうかゆっくり活動を休止してください。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい