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チキンな私とCHICKENな彼ら

BUMP OF CHICKENというお守りを抱いて

「人は必要な時に必要な人に出会う」

そんな言葉をいつの日か耳にしたことがある。
 

これは今から4年前、2014年頃の話だ。
高校を卒業して、進学した大学を入学から一ヶ月も経たず退学することを決めた私は、地元に帰ってきてからただただ呆然と日々を過ごしていた。

「あの大学に進学して、夢を叶えたい」
そう思って入学した大学だった。上京してワクワクしていたのも束の間、周りの環境に馴染めず、入学したことを後悔してる自分がいた。たった数ヶ月前までは高校生で、夢を叶えるんだとキラキラしてた自分が嘘のようだった。
何より、裕福とは言えない我が家。それなのに応援してくれた。負担をかけさせてしまった。そしてそれを水の泡にしてしまったのは他の誰でもない、ワガママな自分自身だった。それがとても心苦しかった。申し訳なかった。

退学したいことを告げた時、親も兄姉も誰も私を責めなかった。
「退学したことをいつか後悔しない?」
そう問われただけで他には何も言わず、ただ温かく迎えてくれたのだ。

そこからは本当に虚無感だけだった。
働かなきゃと本屋に勤めるも、人に馴染めず、出勤前になると涙が出てしまう。そんなことが続いたある日、とうとう本屋を辞めた。
その後に働いたコールセンターでも同じことが続いていた。
夜になると涙が出て眠れず、朝になると泣きながら出勤することが続いて、そのたび「どうしてこんなに弱い人間なんだろう」「周りの人ができてることをなぜできないのだろう」と自分が情けなくなった。
そこからは色々なバイトを転々とするばかり。長く続いても半年だった。

そしてとうとう、私は働くことを辞めた。いわゆる”ニート”である。
まさか自分がニートになるなんて思ってもいなかった。
それから2年近く、働かずに家の手伝いをして過ごした。
周りの同級生が進学した大学や専門学校、就職した先でそれぞれ頑張っている中、私は何をしているんだろう、お母さんお父さん親不孝でごめんなさいと思う日々。毎日が真っ暗だった。
今思えば弱虫な自分のただの甘え、現実逃避だったと思う。

そんな思いを抱えたまま過ごしていたある日のことだ。
ふと聞き覚えのある声がテレビから聴こえた。
目をやると、歌っていたのはBUMP OF CHICKENというアーティストだった。
「永久保存版」と題したその番組に目を奪われていた。
その時は「BUMPってテレビに出たりするんだ」とただ呆然と画面を見ていた。メンバーの名前すらちゃんと知らなかった。ただ、初音ミクとコラボしたとか紅白に出場したとか、そういうことはネットニュースなどで耳に入っていた。
そんな中、番組中歌われている曲の中に私の心に刺さったフレーズがちりばめられていた。
そのフレーズが使用されていた曲は『花の名』だった。
 

〈 生きる力を借りたから 生きている内に返さなきゃ 〉
〈 涙や笑顔を 忘れた時だけ 思い出して下さい 〉
〈 あなただけに 会いたい人がいる 〉

この歌詞に涙がぼろぼろとこぼれた。子どものように声を出して泣いた。止まらなかった。
大学を辞めて地元に帰ってきて、ただ呆然と過ごしている自分を励まし、変わらず遊びに誘ってくれる友達。何も言わず見守ってくれる家族。
こんな自分でも会いたいと思ってくれる人がいてくれるんだ。見守ってくれているんだ。そうだ、生きる力を借りたのだから、返さなくては……。そう思った。

「涙や笑顔を忘れた時だけでいい、この曲を思い出してくれ」
画面の向こうで力強くも優しい演奏をしながら歌っている彼らにそう言われてる気がした。
これはとても自分勝手な解釈かもしれないけれど、優しい彼らは私の解釈を受け止めてくれるだろう。
 

それからはスマホでBUMPのことを調べるばかり。
YouTubeの公式チャンネルで曲を聴いて、レンタルで申し訳ないと思いつつも、まずはアルバムをレンタルしてiPodに入れるとすぐに聴いた。1曲1曲、宝箱を開けるような気持ちで聴いた。
BUMPは元々一番上の姉が好きでよく部屋に流れていたから、小学校低学年の頃によく耳にしていた。だからか、聞いたことのない曲のはずなのに、メロディーと歌詞を知っている曲があったことに驚いた。きっと小さい頃に姉の横で聴いていた曲が記憶の片隅に眠っていたのだろう。もちろん、どの曲もすぐに好きになった。
その中でも特に『HAPPY』という曲を好きになった。

〈 終わらせる勇気があるなら 続きを選ぶ恐怖にも勝てる 〉
〈 借り物の力で構わない そこに確かな鼓動があるなら 〉
〈 続きを進む恐怖の途中 続きがくれる勇気にも出会う 〉

言い訳ばかりで現状に甘え働こうともしない自分、人に馴染めない自分、そんな自分が嫌だった。心の底から大嫌いだった。きっと周りも迷惑だと思ってる。だからいっそのこと消えてしまった方がいい。消えたい。ずっとそう思ってた。
そんな気持ちを持ったまま毎日を過ごしてた自分の心に、矢が放たれたようだった。
色々な曲を聴いて気づいたことがある。彼らの曲は、むやみやたらに背中を押すのではなく、ただそっと寄り添ってくれるということ。
その中でも『HAPPY』では「頑張れ」とか「頑張ろう」じゃなくて「一緒に歌おう」と言ってくれる。
背中を押すわけじゃなく、そっと手を握って一緒に歌おうと言ってくれる。こういう応援の仕方もあるのだとびっくりした。でもそれがとても新鮮で心地よかった。

彼らを好きになっていくたびに「どうしてもっと早くに好きにならなかったんだろう」と後悔した。
情けない自分を優しく包み込むような歌声、歌詞、メロディー。
小さい頃から歌が好きで色々な歌を聴いてきたけれど、こんなにも心から救われたと思うアーティストに出会ったのは生まれて初めてだった。彼らの曲全てが私の光になっていった。
少しずつだけれど、CDやDVDを購入するたびにひとつずつ机の上に並べていくのが楽しみだった。
 

そして今年の春、私はようやく動く決心をした。
今まで言い訳をして動こうともしなかった自分を変えたかった。変わらなくては、と思った。
そうして求人誌でやっと見つけた求人。それは学童指導員という仕事だった。今まで自分のしてきた職種や描いていた夢とは全く違う仕事だった。「また続かなかったらどうしよう」「そもそも私にできるんだろうか」と悩み、電話をかけるのもドキドキだった。
そんな時思い出したのが、BUMPの『GO』に出てくる歌詞だ。

〈 とても素晴らしい日になるよ 怖がりながらも選んだ未来 〉

この歌詞に勇気をもらい、ドキドキしながら電話をかけた。
面接当日、朝からそわそわしてた私は、面接場所に向かうまでの間もずっとお守りのようにBUMPを聴いていた。
結果は採用だった。
その場で採用されて戸惑ったけれど、こんな自分でも変われるかもしれないと思うと心から嬉しかった。
初めての職種。初めての環境。初出勤日が近くにつれ、不安も大きくなっていく。
それでもやらなくては、と思った。ああだこうだ悩んでる暇なんてなかった。変わりたかったからだ。そう思いながら何とか毎日を過ごした。
それでもうまく対応できない自分に「やっぱり向いてないのかな」と悶々としたりもしたけれど、そのたびにBUMPの曲を聴いて奮い立たせた。ここで逃げちゃダメだ。変わると決めたのだから、と。毎日『バトルクライ』を流して通勤した。

〈 ここが僕のいるべき戦場 覚悟の価値を決める場所 〉

本当にその通りだった。
弱虫な自分に負けたくなかった。家族にもこれ以上迷惑をかけたくなかった。

〈 戦場に赴く戦士に誓いの唄を 優しさでもいたわりでもない戦いぬく勇気を 〉

彼らの曲が唯一のお守りだった。もちろん、それは今でも変わらない。
 

そして今、その職場で働き始めて半年以上が経つ。4年前長くても半年しか続けられなかった私が、周りのおかげでこうして続けられている。資格を取るために研修を受けたり、勉強をわかりやすく教えたいという思いから、小学生向けの参考書を買って復習をする日々。職員や生徒との目まぐるしくも楽しい日々。
子どもを相手にする職業は、毎日が新しい発見ばかりで、むしろ自分の方が教えられていることの方が多いのではないかと思う。
子どもはスポンジみたいだ。それもものすごく吸水性の良いスポンジ。毎日色々な何かをぐんぐん吸収して生きている。そういう貴重な時期に関わらせてもらってるありがたさ。
そんな忙しくも充実した今を、4年前の私が見たらどう思うんだろうとふと考えることがある。

変わりたくても変われない自分、弱虫で臆病な自分、大嫌いだった自分をBUMP OF CHICKENというアーティストが変えてくれたのだ。
間違いなく、彼らとの出会いが私の人生に光をさしてくれた。
それでもきっと彼らは「あなたが頑張ったからだよ」と言ってくれるんだろう。

ラジオに寄せられた「BUMPに助けられた」という声に
「(曲だったり、漫画や映画とかに)”勇気や元気を貰った”とか”背中を押してもらった”っていうのは見つけた人の能力なんですよね。作品の中にそういうものを見つけられる人もいれば、何も感じず通り過ぎる人もいるわけですよ。そこに反応したのはあなたのアンテナの成せる技でね、あなたが見つけ出した勇気なんだぜ」
と返すような人たちだから。
 

上記でも書いたように「もっと早く好きになってれば」「もっと早く出会えていれば」と、そう思うことが今でもある。
でもきっと、あの時の私じゃなきゃBUMPを見つけることはできなかったかもしれない。
ただ呆然とテレビを見て聞き流していたはずだ。
そう思うと、BUMPに出会ったのは私にとって人生で必要な出会いだったのだと思う。
16年前、姉の横で何となく聴いていたアーティスト。そのアーティストに16年後また再会するなんて、幼かった私は思わなかっただろう。
 

「人は必要な時に必要な人に出会う」

それはきっと人に限らず、音楽にも言えると思う。
必要な時に必要な音楽に出会うのだと。
私が彼らに生きる力を借りたように、これからも彼らの音楽はどこかで必要としてる人の耳に届くはずだ。そしてその人の光になっていくだろう。

彼らに届くかは分からないけれど、ここに書かせてほしい。
私が見つけるまで歌い続けてくれてありがとう。
BUMP OF CHICKENというアーティストに出会えたこと、それは私の人生にとって何よりのプレゼントだということも。

先日発表されたLOTTE創業70周年を記念して書き下ろされた『新世界』
その曲に出てくる
〈 君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ 〉
というフレーズを、彼らにそっくりそのまま贈りたい。

これからどうなるか分からない未開拓の道を、臆病でも震えた足取りでもいいからまだまだ進んでいこうと思う。
でこぼこ丸い地球の上で、あの日出会ったBUMP OF CHICKENというお守りを胸に抱いて。

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