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笑顔で会いましょう

星野源 Hello Song

心底楽しそうに笑っている人々が収められた、モノクロの写真たちが流れる。
”いつかあなたに 出会う未来 Hello Hello
笑顔で会いましょう”
ワクワクするようなメロディに、抜けるような爽やかな声で、その人は歌う。
「ライバルは、1964年。」
フレーズと音楽と映像が相まって、思わず見惚れていた。
このCMを初めて見た頃、私はまだ星野源さんを詳しく知らなかった。
俳優の印象が強く、音楽をしっかりと聴いたことがなかったのだ。
それから程なくして、彼の音楽をたくさん聴くようになり、この曲が「Hello Song」というタイトルだということ、そして残念ながらまだCDとして世に出されていないことを知った。
あぁ、フルで聴いてみたいなぁ…
そう思っていたのは、私だけではないはずだ。
CMサイズですらこんなにも惹き付けられる曲だ。
どんなイントロで始まって、どんな言葉が紡がれるのだろう。
想像しただけで、ワクワクした。
しかし、暫く経っても「Hello Song」が発売される情報はなく、新曲のカップリングとしても収められることはなかった。
もしかしたらこの曲はCMの曲として完成されたものだから、あえてその先を作ることはなくて、CDとしては出さないのかな。
だとすれば、フルの新曲として聴けることはないのかもしれない。
そう思うと少し残念ではあったが、そんな風に私は自分の気持ちに折り合いをつけることにした。

時は更に流れ、2018年秋、遂にニューアルバム「POP VIRUS」の発売と5大ドームツアー決定の知らせが入った。
久しぶりのアルバムとツアーに心が躍らない訳がなかった。
2016年、パンデミック状態で瞬く間に日本中に広がり新しいPOPとなった「恋」。
親が居なくたって、同性同士だって、血が繋がってなくとも、どんな形であっても、相手を大切に想う気持ちや絆があれば、それは家族なんだと言ってくれた「Family Song」。
1人歩きする陽の自分と裏側で膨れ上がる陰の自分に悩みながらも殻を破り、陰も陽も連れて、これが新しい私だと表現してくれた「アイデア」。
それらと一緒に奏でられる曲たちはどんなものだろうか。
初めてのドームで見る景色はどんなものだろうか。
想像しただけで胸は高鳴った。
けれど。
心の奥にそっとしまっていた淡い想いがまた溢れてきてしまった。
「Hello Song」には、会えないのだろうか…
やっぱりこの曲が奏でるその先を、期待してしまっている自分がいた。

そんな折、彼のラジオで「POP VIRUS」に収録される曲を先行でかけるということを聞き、そわそわしながら初オンエアの日を迎えた。
先行でかけてくれるのはとても嬉しい。
しかし、発売前にファンへ聴かせたい曲とは一体どんなものなのだろう…?
この時はまだアルバム収録曲の全容が明かされておらず、想像もつかなかった。
まさか…Hello Song…?
いやいや、変な期待はしないようにしよう…

深夜1時。いつも通りラジオが始まる。
しかし私の胸の高鳴りが収まらない。
真っ暗な部屋の中で、radikoのアプリを立ちあげたスマートフォンだけが光る。
いつも通りなのだけれど、なんだか今日は源さんと二人だけで秘密を共有している様な気分になる。
落ち着こうと、深呼吸をして耳を澄ました。
そうして深夜2時を過ぎ、遂に源さんが口を開いた。


…星野源で、「Hello Song」


その曲名が聞き取れた瞬間、
思わず「わぁぁ…」と声が出てしまった。
堰を切ったように涙が溢れだす。
アナログの時代に、何本も何本も電車を見送って、
もう来ないのかもと諦めかけた矢先に愛しい人が駆け降りて来てくれたような。
愛しくて堪らない感情でいっぱいになる。
こちらの気持ちが追いつかないまま、軽快なリズムで曲は始まった。
もう、イントロからして最高だ。
ピアノもウッドベースもエレキギターもバイオリンもドラムも、全ての楽器が一体となって耳を襲う。
その瞬間に私の負けだ。
初めてあのCMを見た時を思い出す。
驚きと、懐かしさと、新しさが入り交じる。
そこに優しく、温かな声が続く。
”何処の誰か知らないが 出会う前の君に捧ぐ
この世未来切り開く 何でもない君に”

彼はいつも誰も置いていかない。
”何でもなかった”彼は今、音楽のど真ん中でこの曲を奏でる。
”何でもない”私たちを連れて、それぞれのスタートラインへと導いてくれる。
「ここからは自分の足で踏み出すんだよ」と、優しく背を押す。
この曲は愛だ。
間奏もまた素晴らしい。
エレキが遊び、ピアノが弾ける。
今すぐ駆け出したくなるようなリズムだ。
音に乗ってどこまでも行ける気がする。
そして曲の最後は2年前と変わらない、抜けるような爽やかな声で、こう締め括られた。

”いつかあの日を いつかあの日を
超える未来 Hello Hello
笑顔で会いましょう”

高揚感に包まれたまま、曲のオンエアが終わった。
カフが上がり、「いぇーい。いぇーい!」という声が聴こえる。ラジオの向こうで、ぱちぱちと手を叩く彼は上機嫌だ。
サプライズ成功と、言わんばかりの笑顔が想像つく。
悔しいけれど、想像の遥か上を行く、新曲としてのHello Song公開は私にとって最高のサプライズプレゼントとなった。
CMが公開された頃、彼がこの曲についてコメントしていた言葉を思い出す。

「動く植木等さんと自分の歌が同じ場所にいる。10歳の頃から想い続けた植木さんへの気持ちを、こんな風に歌にする機会がくるとは思っていませんでした。本当に感慨深く、未来は予想外に、やはり面白いです。全ての人に笑顔の未来が訪れるように祈っています。」

ありがとう。貴方のおかげで私はまた一歩踏み出せそうだ。
現実と向き合いながら、少しずつ、歩く。
予想外の面白い未来を想像しながら。

Hello、未来の私。
いつか必ず、笑顔で会いましょう。

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